小林紀興の「マスコミに物申す」

第三の権力と言われるマスコミは政治家や官僚と違い、読者や視聴者の批判は一切無視、村社会の中でぬくぬくと… それを許せるか

朝日新聞記者も読売新聞記者と同様アホだった ! !

2012-12-12 22:24:48 | Weblog
 12日の朝日新聞朝刊を読んで「インド人もびっくり」(これは差別用語だと思います。ごめんなさい)だった。記事は1面トップを飾っただけでなく、3面では「専門家の見方」を、さらに35面でも「親の関心影響」の記事を掲載した。それほど大騒ぎするほどの大問題なのか、と思ったが、朝日新聞の記者たちがアホだから大きく取り上げただけの、3行記事に相当する程度のくだらない記事だった。
 とにかく1面トップ記事の見出しが大げさだった。大見出しが「小4算数・理科過去最高点」、サブ見出しが「脱ゆとりの成果」とあるから、私もつい「脱ゆとり教育の効果が出て、子供たちの学力が大幅に向上したのか」とぬか喜びしたくらいである。この大げさな記事のリードで朝日新聞は「2011年の国際数学・理科教育動向調査{TIMSS}で、日本の小学4年の得点が過去最高だったことがわかった。文部科学省は『脱ゆとり』への転換が要因と見ている(後略)」と書いた。本当かいな。
 このリードを一切の予断を入れず素直に読めば、日本の小4の成績がTIMSSのそれまでの最高点を上回る、言うなら世界新記録に相当するほどのものだったと読める。朝日新聞によれば、文科省は「08年度に学習指導要領を改訂し、学習内容や授業時数を増やしたこと、07年度からの全国学力調査の取り組みが成果を上げてきた」としているという。本当にそうか ?
 朝日新聞は文科省が誇った「成果」に続く記事で「一方で、勉強への意欲・関心の低下も目立った。『算数・数学の勉強が好き』は小4で66%だが、中2では39%。理科では、小4で83%なのに、中2では53%。中2の割合は数学・理科ともに国際平均より20ポイント以上低かった」としている。
 あれ……なんか、おかしいな。どういうことかいな ?
 過去最高点を記録した日本の子供たちの勉強への意欲・関心が低下している ? これはどう解釈したらいいのか。私は老いぼれ頭脳をフル回転して、このおかしな現象を検証してみることにした。その結果、私は「朝日新聞の記者がアホだった」という結論に達したというわけだ。
 そういう結論に達したカギは、この一文にあった。
「国・地域別の順位は、小4算数が5位、中2理科が4位で前回より1位ずつ落ちた。小4理科は4位、中2数学は5位で、前回と同じだった。これまでの最高は、95年の小4理科の2位、最低は03年の中2理科の6位だった」
 ちょっと待てよ。過去最高点を出したはずの小4の国・地域別順位が算数で5位と前回(4年前)の4位から下がっている ? 理科のほうは前回と同じ4位。これで、なぜ「国際学力調査」で小4の算数・理科が過去最高点になったのか ?
 理由はすぐにわかった。国際教育到達度評価学会「アムステルダム)が1995年以降4年ごとに実施している小4と中2の学力テストで、たまたま11年に行われたテストで、小4の子供たち(11年のテストには約8800人が受験)の平均点が過去最高だったというだけのことだった。ちなみに過去の平均点と国・地域別の順位(カッコ内はテストに参加した国・地域の数)はこうだった。

 1995年(20) 算数 567点 3位  理科 553点 2位 
 1999年       実施せず       
 2003年(25)    565点 3位     543点 3位
 2007年(36)    568点 4位     548点 4位
 2011年(50)    585点 5位     559点 4位

 これが朝日新聞や文科省が「脱ゆとりの成果」と大喜びした本当の中身であった。この推移を見て、やっぱり日本の子供たちの学力は「脱ゆとり」効果で上がっているではないか、とお考えの方がいたら、お気の毒だが、朝日新聞の記者や文科省の役人と同様なアホである。
 そういうアホな方のために(私のブログの読者にはそんなアホはいないと思うが)、きわめてわかりやすい例で説明しよう。
 日本で最大の難関校とされている東京大学の入学試験に挑戦した高校生・浪人の平均点は常に同一だろうか。そんなことはありえないよね。たまたま今年の受験生の平均点が過去最高だったら、東大サイドは「今年の受験生の学力は過去最高だ」と喜ぶだろうか。そんなこともありえないよね。東大に限らず、定員をオーバーする受験者が殺到する大学では、合格ラインを決めていず、高得点をとった順から定員数に達するまでを合格者にする。つまりテストで取った点は絶対評価の対象ではなく、相対評価の基準に過ぎないのだ。
 しかし合格者の定員を決めていない試験も沢山ある。最大の難関とされている司法試験の場合は、あらかじめ合格ラインが決められているため、年によって合格者の数が増減する。だから司法試験の問題をつくる側は、受験者数と合格者数の比率をできるだけ一定にする(つまり合格率を一定に保つ)ために試験問題の難易度にものすごく神経を使う。
 同じ国家試験でも司法試験や医師試験のようにランクがない国家資格を取るための試験以外にも、ランクがあって試験の難易度が異なる国家試験もある。たとえば建築士の場合の1級、2級に分かれているし、税務関係では公認会計士と税理士の試験にはかなりの難易度差がある。たまたま試験問題が難しかった場合は合格者が少なくなり、受験者にとっては不運な年と諦めるしかない。だが、その翌年はその反動で試験問題が易しくなる傾向は、問題をつくるのがコンピュータではなく人間である以上避けられないことだ。
 要するに小4のこともたちが過去最高点をとったのは「脱ゆとり」効果によって学力が向上したという結論を出すのはあまりにも短絡した思考法だということである。ひょっとしたらたまたま問題が易しすぎたせいかもしれないではないか。
 論理的に物事を考えるということは、このケースの場合、平均点という絶対評価を基準に考えるのではなく、相対評価で見るという視点に立つことがまず一番大切なことである。
 ではどうしたら相対評価で日本の子供たちの学力を見ることが出来るか。国際学力テスト4回の参加国・地域が一定であれば単純に順位で上がったか下がったかで相対評価を見ることが出来る。しかし実際には調査のたびに参加国・地域が増えているため相対評価をすることは多少難しい。数学者なら高度な相対評価の計算をするだろうが、私の数学力はせいぜいのところ小学高校学年くらいだと思う。その程度の算数の方法でとりあえず相対評価をしてみよう。とりあえず算数についてのみしてみる。理科は同じ方法で皆さんがやってほしい。

1995年の相対評価指数  3÷20=0.15
2003年         3÷25=0.12
2007年         4÷36=0.11
2011年         5÷50=0.1

 この相対評価指数は小さくなればなるほど学力が向上していると推測できる可能性は確かにある。ただしその前提として参加国・地域数が増えても全体の学力レベルが同じだという前提に立たないと、この相対評価指数で学力が向上したか否かを判断することはできない。私が数学者の力を借りないと正確な相対評価指数の計算はできないと書いたのはそういう理由である。
 しかしとりあえずこの単純な相対評価指数を見ても日本の子供たちの学力は文科省が胸を張るような08年の「脱ゆとり教育」に転換する前から日本の子供たちの学力は年々向上しており、「脱ゆとり教育」に転換しても相対評価指数はたった0.01しか伸びていない。この伸び率は「脱ゆとり」以前と比べてまったく変わっていない。2011年の国際学力調査で「小4算数・理科過去最高点」は逆立ちしても「脱ゆとりの成果」などと胸を張れることではなく、むしろ失敗に終わったことの証明になったというのが私の論理的結論である。明日(13日)の社説で国際学力調査の結果をぬか喜びして恥を天下にさらすようなことはしてほしくない。