暑かった今年の夏が過ぎ、いつの間にか肌寒い季節になってきた。ああ、紅葉でも見に行く旅がしたいと思う。しかし、なかなか機会が作れない。思い返せば、今年の旅はコンサートを観る目的を絡めた旅ばかりだ。
今までを振り返ると秋は東北に行く事が多かった。例えば二年前…。
友人と仙台での娘。コンを観た翌日、栃木県での松浦亜弥コンサートを観る友人と別れ、私は午後福島にやってきた。曇り時々雨な空のせいか、外は9月上旬と思えないほど寒く散歩をする意欲が失せてくるが、私は私鉄電車に揺られ飯坂温泉という場所に到着。
飯坂温泉駅のすぐ近くには、流れる川沿いに温泉ホテルが建ち並んでいるのだが、そのうちの何軒かは廃業しており、日曜だというのに通りを歩く人もまばらだった。
川原沿いに建てられている温泉に入ると客は少なく、川のせせらぎが聞こえてくるほどだった。静けさに身をうずめ少し人恋しい気分になった頃に温泉を出ると、私の携帯に「石村舞波Berryz工房卒業」を伝えるメールが届いていた。
ある年の10月は、紅葉を期待して山形県を訪れた。
その日、午後訪れた宮城県鳴子温泉は紅葉始まりかけで、渓谷にかかる鉄橋では景色を楽しむための徐行運転のサービスもあったが、山形県は紅葉はまだであった。宿泊した米沢の町は駅から少し遠く、民家ばかりが連なる米沢駅からの暗い夜道を20分ほど歩いた。
街中に入っても、街灯は明るいものの通行人は少なく、夜風もやや冷たい。米沢牛を食べたかった私は、看板の明るい店に入ってみた。
店内はプロ野球日本シリーズを中継するテレビに店員も客も見入っていたが、何故かテレビの前のテーブルが空いていて、その席に座る事になる。
普段なら絶対しないであろう「一人しゃぶしゃぶ」を楽しむ私のテーブルに運ばれてきた牛肉の皿には紙が差してあった。それは米沢牛血統書の縮小コピーとも言うべきもので、育てた牧場などと共に「ふみ子」と牛の名前が書いてあった。
名前がわかると不思議なもので、育てた人の愛情が伝わるような気分がして心温まるが、切ない気分にもなってしまう。こういう演出を楽しむ事が苦手なのかもしれないと思いつつも、米沢牛の旨さも堪能してしまう自己矛盾に苦笑しながら、牛より野球な店内の雰囲気と野球中継を眺めていた。
11月ともなると東北は冬に近い気候だ。
ある年の11月、三陸に行ってみようと思い、今にも雨が降って来そうな石巻駅のホームにやってきた。乗り換えた石巻線は、走り始めるとやがて右窓に大きな入江を車窓に映した。
万石浦というその入江はカキの養殖が盛んで、曇り空の鈍い色に染まる水面には養殖用の木が幾本も刺さっている。
石巻線の終点女川(おながわ)は漁港町で、潮の香りが漂う静かな町。港の前の魚市場を覗いたあと、市場二階にある食堂に入る。
様々な魚介類メニューの中から、「鯨定食」というのを選んでみた。クジラの立田揚げ、クジラの刺身などが盛られ、クジラ独特の脂っ気を楽しみつつ、さすが市場の味ともいうべき美味に満足した。しかし、広々とした港にも、綺麗な市場にも観光客の姿はまばらだ。
その日の夜は気仙沼に泊まる事になっていたが、旅館までの道を歩いているうちに雨が本降りになってきた。駅前と町が離れている気仙沼は、旅館までの道中には傘を買えるような店はなく、途中にある気仙沼港をゆっくり眺める余裕もないまま旅館への道を急いだ。
ずぶ濡れの私を見て旅館の人は驚き、すっかり意気消沈した私も雨の降りしきる気仙沼の町を散歩する気力もなくなり、近くの洋食屋で夕食を食べた。気仙沼はフカヒレが名物であり楽しみにしていたが、天候の変化も旅にはつきもの。また訪れたい町には、また訪れればいい。気仙沼再訪はこの日以来の私の宿題だ。
秋は涼しく動きやすい。春ほど、地域による温度差もないから旅がしやすい季節かもしれない。遠い町、近場の町、行きたい場所を色々思い浮かべ秋を感じてみたい。
今回のBGM 秋の気配 / オフコース
ブログのデザイン、11月は「goo10周年 秋」にしてみました。
今までを振り返ると秋は東北に行く事が多かった。例えば二年前…。
友人と仙台での娘。コンを観た翌日、栃木県での松浦亜弥コンサートを観る友人と別れ、私は午後福島にやってきた。曇り時々雨な空のせいか、外は9月上旬と思えないほど寒く散歩をする意欲が失せてくるが、私は私鉄電車に揺られ飯坂温泉という場所に到着。
飯坂温泉駅のすぐ近くには、流れる川沿いに温泉ホテルが建ち並んでいるのだが、そのうちの何軒かは廃業しており、日曜だというのに通りを歩く人もまばらだった。
川原沿いに建てられている温泉に入ると客は少なく、川のせせらぎが聞こえてくるほどだった。静けさに身をうずめ少し人恋しい気分になった頃に温泉を出ると、私の携帯に「石村舞波Berryz工房卒業」を伝えるメールが届いていた。
ある年の10月は、紅葉を期待して山形県を訪れた。
その日、午後訪れた宮城県鳴子温泉は紅葉始まりかけで、渓谷にかかる鉄橋では景色を楽しむための徐行運転のサービスもあったが、山形県は紅葉はまだであった。宿泊した米沢の町は駅から少し遠く、民家ばかりが連なる米沢駅からの暗い夜道を20分ほど歩いた。
街中に入っても、街灯は明るいものの通行人は少なく、夜風もやや冷たい。米沢牛を食べたかった私は、看板の明るい店に入ってみた。
店内はプロ野球日本シリーズを中継するテレビに店員も客も見入っていたが、何故かテレビの前のテーブルが空いていて、その席に座る事になる。
普段なら絶対しないであろう「一人しゃぶしゃぶ」を楽しむ私のテーブルに運ばれてきた牛肉の皿には紙が差してあった。それは米沢牛血統書の縮小コピーとも言うべきもので、育てた牧場などと共に「ふみ子」と牛の名前が書いてあった。
名前がわかると不思議なもので、育てた人の愛情が伝わるような気分がして心温まるが、切ない気分にもなってしまう。こういう演出を楽しむ事が苦手なのかもしれないと思いつつも、米沢牛の旨さも堪能してしまう自己矛盾に苦笑しながら、牛より野球な店内の雰囲気と野球中継を眺めていた。
11月ともなると東北は冬に近い気候だ。
ある年の11月、三陸に行ってみようと思い、今にも雨が降って来そうな石巻駅のホームにやってきた。乗り換えた石巻線は、走り始めるとやがて右窓に大きな入江を車窓に映した。
万石浦というその入江はカキの養殖が盛んで、曇り空の鈍い色に染まる水面には養殖用の木が幾本も刺さっている。
石巻線の終点女川(おながわ)は漁港町で、潮の香りが漂う静かな町。港の前の魚市場を覗いたあと、市場二階にある食堂に入る。
様々な魚介類メニューの中から、「鯨定食」というのを選んでみた。クジラの立田揚げ、クジラの刺身などが盛られ、クジラ独特の脂っ気を楽しみつつ、さすが市場の味ともいうべき美味に満足した。しかし、広々とした港にも、綺麗な市場にも観光客の姿はまばらだ。
その日の夜は気仙沼に泊まる事になっていたが、旅館までの道を歩いているうちに雨が本降りになってきた。駅前と町が離れている気仙沼は、旅館までの道中には傘を買えるような店はなく、途中にある気仙沼港をゆっくり眺める余裕もないまま旅館への道を急いだ。
ずぶ濡れの私を見て旅館の人は驚き、すっかり意気消沈した私も雨の降りしきる気仙沼の町を散歩する気力もなくなり、近くの洋食屋で夕食を食べた。気仙沼はフカヒレが名物であり楽しみにしていたが、天候の変化も旅にはつきもの。また訪れたい町には、また訪れればいい。気仙沼再訪はこの日以来の私の宿題だ。
秋は涼しく動きやすい。春ほど、地域による温度差もないから旅がしやすい季節かもしれない。遠い町、近場の町、行きたい場所を色々思い浮かべ秋を感じてみたい。
今回のBGM 秋の気配 / オフコース
ブログのデザイン、11月は「goo10周年 秋」にしてみました。