時代の移り変わりによる認識の変化というものは色々あって、例えば1970年代までは男性の長髪は「あり得ないもの」というのが社会的認識であった。更に、ギターを弾いているような人間はアウトサイダーであると思われていた時代が確かにあったのだ。今となっては、男性の長髪も、ギターを弾く事も、その人のライフスタイルの一つに過ぎない。世間から白い目で見られるような事はないだろう(長髪は程度にもよるが)。
女性の茶髪というものだって、ほんの20年前くらいまではアウトサイダーである事を示す証明書であった。「そういう人」が「私はそうですよ」と示すための。
今は「ファッション」という事で「市民権」を得てしまったのだが、これも時代の流れで人々の認識が変わったからだろう。
時代が変わっても女性アイドルというジャンルの持つ、メジャーな存在でありながらどこかマイナーな立ち位置というものは変わらない。いくら国民的な人気を得ようが、そこには個人の嗜好の肩書きには成りきれない異質感がある。
Buono!が目指していた位置は「アイドルとロックとギター」というキーワードで作られた場所であり、タレントの地位的にはアウトサイドにいる者達が、更に外へと向かいながら跳ねていく様を具現化した存在であった。だからこそ従来のハロプロのファン以外にもアピール出来るものを産み出せてきたのだろう。
時は移り変わり、Buono!が誕生した頃よりハロプロの存在地点は更に世間の端に追いやられているが、そういう状況下に於いて開き直ってマニアックな方向に行くのではなく、わかりやすさを持って世間のある方向に寄っていく姿は決して間違いではない。
昔からアイドルソングの定番テーマである「初恋」を三人中、高校生は一人だけという今や大人ユニットが挑み歌う。そこに漂っているのは悲壮感ではなく高揚感だ。時代が移り変わり、いつの日か自分達に微笑んでくれる事を願い、まっすぐな歌声をキャッチーなメロディに乗せて歌う三人。
これが売れない世の中なんてと嘆くアウトサイダー達へのレクイエムへと昇華された、ガールズロックからの正常変化がそこにある。
Buono! 『初恋サイダー』 (MV)