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二体の花神は色とりどりの花びらを振り巻き続けていました。花びらは無数の樹々に降りかかり、枝に花が咲き乱れました。
そういう景色を山の神は笑顔で見下ろしていました。
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ある日、山の神は異変を感知しました。森の地面から水色の気体が盛んに溢れていたのです。おお、竜蛇神、水の神。どうかお出ましください。そう祈ると、湧き上がる気体が次第に形を成してきました。そして、竜蛇の姿が現れ、口から火炎を吐き出しました。
「おお、それはお怒りの相、私たちが何か不行き届きを致しましたでしょうか ?」
「ウウウウウウウウーー。ガーー」
「おお、おお、これは、これは、失礼致しました。ご挨拶をしておりませんでした」
「この森が生まれたのは、ひとり荒神の力だけではない。地層の奥に私が蓄えた水気がふんだんにあったからじゃ。はっ、はっ、はっ、浮かれよって、花など咲かせようというのか ?」
「おお、これはしたり。木にはまだ花を咲かせる力がありません。だから、花神たちに元の力を振り撒かせています」
「無駄なこと。私がその力を与えてやろう」
「水霊を与えていただけるのですか。それはありがたいことです」
「私が地の底で一度吠えると、水霊たちか樹の中を昇っていく。すると、たちまち勢いづく」
「水神様、ありがたいことです。ぜひお願い致します」
「ウウウウウウウウーー。山の神、お前の言うことなら何でも聞く。ウウーー。だから・・・」
「えっ、何でございましょう ?」
「だからじゃ、だから・・・」
竜蛇はそう言うと、狂ったように辺りを踊りまわりました。
「水神様、そう動かれると、樹たちが倒れます」
「ウウウウウーー。ガーー」
「水神様、ぜひ分かって頂きたいことがございます。、この森の樹々はすべて花木です。しかし、花の元を持っておりません。ですから水霊とともに花の元の力も与えたいと思います」
「はっ、はっ、はっ、それは分かっている。先ほどは言いすぎてしまった。許せ。ウウウウウー、だからじゃ・・・」
「だから・・・?」
「だからじゃ」
「ははっ、分かりました。私に対する求婚という・・・」
竜蛇はその言葉を聞くと一層激しく踊り始めました。
「どうかお静かに・・・。ええ、ええ、そうでございましたか。・・・この森を育てるために・・・謹んでお受けいたします。二人で力を合わせて仕事を続けていきましょう」
「ガーーーー。ウオーーーー」
「ええ、ええ、・・・力を合わせて・・・」
「六地蔵、ありがとう」
「えっ、あの六地蔵ですか」
「ガーーー。そうだ。六地蔵の精魂が私には込められている」
「そうですか。分かりました。・・・では、私を乗せてください。大空の神々にご報告を・・・」
竜蛇は、山の神を乗せてたちまち空に舞い上がりました。
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