著作者 Victoria Nevland
その後、私は呼び続けました。鳥よ、鳥よ。鳥よ、あの日の鳥よ。教えておくれ。あの娘をどうして鳥にしてしまったのか。鳥よ、鳥よ、どうか、どうか、教えておくれ。
私の声に応えて飛んできたのは、呼び続けてから数日後でした。翼の音が次第に近づいてきて、名も知らぬ大きな鳥が姿を現しました。鳥は電線に止まりました。
「貴方はあの日の鳥・・・」
「そうです。貴方はどうして私を・・・」
「貴方は、お父さんに違いないと思ったからです」
「そうです。病で死んだ父です」
「鳥に転生されたのですね」
「生きているとき、私は地獄を味わいました。ですから、自由になりたいと思ったからです」
「そのことを奥さんや娘さんはご存じないかも・・・」
「そうでしょう。きっとそうだと思います」
「娘さん、さやかさんでしたね、さやかさんは長らく患っておられた・・・」
「そうです。外へ出ることもできなかった・・・」
「難病・・・」
「そうです。」
私は、その後その娘はどうなっているか気になりました。
「で、あの日ですけれど、二羽の鳥が墓の辺りから飛び立つのを見ましたが・・・」
「よくお気付きになりました。・・・その鳥は娘と私です」
「えっ、ではさやかさんは鳥に・・・」
「はい、その通りです。」
「分からなくなりました。貴方が鳥に変えたのはどうしてですか」
「・・・私と同じように死んでしまうと思ったからです」
「えっ。・・・私にはよく分かりかねますが・・・」
「貴方は電信柱に転生された。それで、も一度転生したいとは思いませんか」
「思いません。この姿で満足しています」
「ほほう、満足と仰いましたね」
「ええ、満足しています。」
「動けなくでも・・・。飛べなくても・・・」
「もちろんです」
鳥は、急に飛び立ち、私の上を旋回し始めました。
「ははは、貴方はそれでいいのかも知れませんが、さやかはまだ若い、妻も将来を心配しています。ですから・・・」
「えっ、・・・ですから、どうしたのですか」
「死なせて、鳥に転生させました」
「殺した !!」
「ええ、そうです。・・・殺して生かしたのです」
「えっ、元の人間にですか。」
「ええ、生まれ変わった、いや、そう私がしたのです。不治の病から解放させるためのただ一つの手段でした。・・・私は、さやかが外に出る日を待ち続けていました」
「そうすると、今は、お母さんのところに・・・」
「その通りです。・・・でも、ですね、電信柱さん、娘は完全な昔の娘ではありません。似てはいます。心は別人の魂かもしれません」
「・・・妻は、しかし、気づかないでしょう。」
そう言うと、鳥はまた旋回して、森に帰っていきました。
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