続・切腹ごっこ

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「武士道とエロス」

2005-12-21 | ★レビュー(本)
昨日、間違って草稿中の記事を一時的に公開したら、その記事のせいで訪問者数がいつもの4倍になった。
有名なタレントの名前を書くと検索に引っかかり易いんだなーそれはさておき‥

武士道とエロス」 氏家幹人著 講談社現代新書 1995年2月第一刷

どこでこの本のタイトルを見つけたのか忘れてしまったが、メモってあったのでとにかく借りて読んでみた。
 期待した切腹に関係したことはほとんど書かれてなくて、「男色」「衆道」などと呼ばれる、近世近代の男性同性愛、少年愛について書かれた本だった。

著者曰く、戦国時代から江戸時代半ば、18世紀初頭までは男色は至極当たり前のことだったという。
そのことをたくさんの資料を踏まえて重ね重ね述べている。
妻帯が許されない僧侶と稚児との関係、主君と寵愛する小姓の関係だけでなく、好意を寄せる若い者(おもに武士)同士が普通に性的関係をもっていた。
それは恥ずかしいものとされたり、特に隠されたりすることもなく異性愛とは違うもう一つの恋愛のカタチとして成立し、一般的に認められていた。
肉体的、精神的に結ばれた者たちは「義兄弟」という夫婦とも親子とも本当の兄弟とも違う信頼関係になる。
その信頼関係と連帯感は、戦国時代大きな結束力のもととなったが、それはときとして、一美少年の奪い合いから、刃傷沙汰、双方の切腹という事態まで引き起こした。

男色文化は江戸時代半ばをさかいに衰退していくが、明治時代後期、軍隊内やエリート階級の学生を中心に一時的に再燃する。
日清日露戦争の、男たちが生死を共にする”戦う気分”の高揚が影響したのだろう。
学生寮内では思春期の青少年たちが、同年代の女子に向けることが憚られた情熱を、同性の級友達に注いだ。
容姿の良い新入生は男色傾向の上級生に言い寄られ、ときに深夜の襲撃を受けた‥w

この本を読む限り、世間での同性愛の位置づけというのは、現在の風潮が以前から変わらず続いてきたものではない。
そして、これから後も現在の状態が変わらないとは言えない。長い歴史の中で生き続ける文化の一つなのだから。

●これと似た内容の本の記事「
美少年日本史

武士道とエロス (講談社現代新書)
氏家 幹人
講談社
BL新日本史
堀 五朗,九州男児
幻冬舎コミックス