あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: あるくみるきく_お米について考える@下関(1)

2009年10月11日 | 旅するロードスター/アテンザ
2009年10月10日(土) この週末は、シーカヤック仲間であるエルコヨーテ氏からのうれしいお誘いで、お米についての勉強と新米の購入を兼ねて下関へ。
ここ数年、シーカヤック仲間が居る事や、気持ちの良い温泉があることなどから、年に何度も下関方面に通うようになった。 つい先日も、妻の誕生日のお祝いとして俵山温泉に一泊二日のドライブ旅行に行ったばかりである。

いくら高速1000円とはいえ、いつもと同じように、味気のない高速道路をただひたすら走って効率的に移動するだけでは面白くない。 集合時間は夕方6時。 せっかくだから、以前から気になっていたルートでゆったりまったり、ドライブ旅行を楽しむ事にしよう!
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広島ICから高速に乗り、浜田自動車道を走って浜田へ。 今日は浜田から、益田、萩、長門経由で、豊田町に行くルート。

この辺りは、下関の綾羅木海岸から島根半島の日御碕まで尺取り虫方式で漕いだ『古代人ツアー』の、思い出深く懐かしい場所。
尺取り虫方式での瀬戸内横断を終え、目標を見失っていた時機に、当時私のブログを読んでくれていた友人の誘いでスタートした古代人ツアー。 美しくも、時折荒れて厳しい顔を見せる日本海を、その折々に偶然立ち寄り一夜のお世話になった漁港で様々な出合いに恵まれ、昔と今のお話を伺いながら漕ぎ進んだこの旅は、『あるくみるきく_旅するシーカヤック』の原点となる貴重な経験を積ませていただいた。

本当にありがたいことである。 そして、改めて車で走ってみると結構距離がある。 我ながら、こんな遠くまで何度も通い、そしてこの長い距離を漕いだものだ。
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今日は、夕方までたっぷりと時間がある。 できるだけ海沿いの狭い道に立ち寄り、寄り道し、普段は通り過ぎる海岸線を探検。

狭い道を抜けると、そこには穏やかな湾があり、良い感じの漁港が。 そこは、須佐漁港。 車を停め、カメラを手に漁港を散策。
 
歩いていると、一人のおじいさんが居られた。 この方にはお話が聞けそうだ。

『あるくみるきく』の旅を続けていると、いろいろなお話が聞けそうな匂いがする人と、話し掛けても一言二言で終わってしまいそうな人が、なんとなく分かってくるものである。 宮本常一氏が、『話は、聞ける人からしか聞く事はできない』と書いておられたが、旅に出るとまさにそれを実感する。

『こんにちは。 あの、この船の前にある台みたいなのは何ですか?』 『おー、これか? これは、満潮の時に船に乗り込むための台や』

『えー、そうなんですか! 全部の船の前に置いてあるし、道具入れにしては構造が違うし、魚を入れる容器でもないし、不思議やなあって思うとったんです』 『潮が引いとる時はええが、満潮になったら舳先の位置が高うなるじゃろう。 そうなったら、特に年寄りには乗り込むんが大変なんよ。 じゃけえ、これを台にする』 『いやあ、私は漁港が好きでいろいろ回りよるんですが、こんな台を見たんは初めてです。 こりゃあ、面白いですねえ』

『このカゴに入っとる石は何ですか?』 『これか? これは敷網の重石に使うんよ』 『ほうですか! そりゃあちゃんと縛らんと糸が外れますねえ』 『そうよ。 じゃけえ、ええ形の石を選んどるんじゃ。 ええ石がある浜があって、そこに探しに行って、ええ形のを拾うてくるんじゃ』

『なるほど。 確かによう見たら、真ん中辺りに凹みがあるような石ばかりですね』 『その浜には、ええ石がえっとあるんよ』
 
『あんたは気づいとらんかもしれんが、あの竹を見てみんさい。 他の港じゃあ、錨を下ろしたりするが、ここじゃあ船の艢をあの竹に舫う』 『なるほど、確かにほかじゃあ見んですね』
『昔は松の木を使いよったが、今じゃあ大きい松がなくなって竹になった。 竹は傷むけえ、2年ごとに交換じゃ』

『向こうに、舳先にテントを張った船がありましたが』 『あれは、漁に出とる時、あのテントの下で網を修理したりするんよ』 『私の地元の豊島には、前にテントを張ったり屋根を付けて住めるようにしとる『家船』いうのがあるんですが、あれとは違うんですね』
 
『おお、広島の家船か! 知っとるよ。 昔はこの辺りにも来て、船で寝泊まりしながら漁をしよったなあ』 『え、そうなんですか! ここら辺りにも来とったんですね』
『広島の船言うたら、家船以外にも『茶碗』を売りに来る船もおったで。 毎年同じ時期に茶碗を船に積んでここに売りに来よったわい。 当時は木造船じゃったなあ』 『知りませんでした。 そんな船があったんですねえ』

『わしはもう80歳になるんじゃが、おそらくわしらがそんなのを覚えとる最後じゃろうなあ』 『80歳ですか! とてもそんなには見えません。 若いですよねえ』 『おお、みんなそう言うんじゃ。 若う見えるいうてなあ』
『いやあ、ほんまにありがとうございました。 ええ話を聞かせてもろうて』 『なあに、ええよ。 まあ、ゆっくり見学して行きんさい』 『はい!』

いやあ、今日もこの漁港を訪ねて良かった。 親切な方に偶然出会うことができ、今まで知らなかったお話を伺うことができた。 感謝!
『あるくみるきく_旅するシーカヤック』 旅を重ねるごとに、そして偶然の出合いを重ねるごとに、貴重な情報が集まり私の中に蓄積されていく。 うん、今回も良い旅になりそうだ。
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その後も、海岸沿いの寄り道を楽しみながら日本海沿いのドライブをゆっくりと堪能。

有名な観光地ではなく、生活に密着した地味で小さな漁港の一つ一つが、私にとっては最高の場所。 人との出合い。 これぞ、私にとって何にも代え難い旅の醍醐味。
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夕方、温泉で一日の疲れを癒し、エルコヨーテの工房へ。
 
今日は、地元の方も一緒になっての交流会! 楽しみだ。

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