あるくみるきく_瀬戸内シーカヤック日記

瀬戸内を中心とした、『旅するシーカヤック』の記録

『芸予ブルー』_テーマカラー of 印象派_”瀬戸内シーカヤック日記”

瀬戸内シーカヤック日記: 豊浜水産祭り新企画『家船でクルージング』を体験_家船はやはり家だったのだ!

2018年05月19日 | 旅するシーカヤック
2018年5月19日(土) いよいよその日がやってきた!
今日は、豊浜水産祭りが開催される日なのである。

以前このイベントを見つけた時は驚いた。
『おお、こんなチャンスがあるんだ』と、すぐに妻に頼んで往復はがきで参加申し込みをした。

そう、今回の水産祭りでは、豊浜大橋開通10周年を記念して、なんと豊島の貴重な海洋文化の一つである、『家船』での体験クルージングができるのである。
とはいえ、クルージングは3回のみであり、各回4名で計12名のみが体験できるのだそうだ。

1通で2名まで申し込みできるということなので、実質6組のみという狭き関門なのである。

***

そして待つこと数週間。
3通のはがきが返信されてきた。

一通づつ確認してみる。
『落選』、『落選』、そして『当選』!

『いやあ、なんとか当たって良かったなあ』

ここの家船文化は非常に奥深いものがあり、まだ架橋される前にフェリーで渡り、偶然出会った地元のおばあさんからお話を伺った事があった。
その時のブログは、『家船の島、豊島』

***

そしていよいよ今日がその日。
一週間前の天気予報は雨だったのだが、その後予報は変わり、晴れマークに。
『うん、やっぱり俺は引きが良いなあ』

イグニッションコイルとケーブルを交換し、イリジウムプラグに入れ替え、点火系をリフレッシュして絶好調のロードスターに乗り、

幌を下ろして家を出る。
今日は気温も低く、快適なオープンドライブ。

開始少し前に、水産祭りの会場に到着。

すでに、魚を買おうと意気込んでいる大勢の人が待っていた。
珍しかったのは、これ。

鯉のぼりならぬ、『太刀魚のぼり』
豊島らしくてイイじゃないか。

***

9時になると、開始が宣言され、多くのお客さんが生簀の魚を買い求める。

鯛にハマチに、

オコゼ。
このオコゼは、呉オコゼとして、ブランド化が進められているらしい。

もちろん、豊島といえば、太刀魚も。

立派で綺麗な、『瀬戸内の名刀』

***

俺たちは、体験クルージングのハズレはがきを持って、サザエのつぼ焼きコーナーへ。

このハズレはがき一枚で、つぼ焼きが2個いただけるのである。
焼きたて熱々のサザエ。
この身が大きくて、なんとも美味いのである。
汁まで啜って、大満足。

9時半からは、オコゼの味噌汁が無料で配られる。

俺たちも早速並んで、いただいた。

身がたっぷりと入っており、皮はプルプルで、出汁が深い。
『ごちそうさまでした』

***


家船クルージングまで、しばらく時間があるので、しばし散策。

胡神社にお参りし、

島ならではの狭い路地を歩き、

かつて一度だけ入った事がある、今は使われていない豊島温泉を見学し、

家の裏に、昔の櫂があるのを発見した。

***

そしていよいよ、体験乗船の時間。
これが、今日お世話になる家船である。

船長さんに挨拶し、乗船させていだだいた。

初めての家船体験。

***

この家船は、船首ではなく、船尾側に部屋が設えられている。

家船のキッチン、

トイレ、

そして、畳敷きの部屋も見学させていただけた。

梯子を降りると、そこには部屋が。

もちろん、金比羅様も祀られている。

畳に寝転がっても良いとのことだったので、しばし家船の部屋の雰囲気を味あわせて頂いた。
貴重な体験。

***

漁港を出ると、豊島をクロックワイズで一周する。

クルージングしながら、船長さんに、様々なお話を伺うことができた。


最近でこそ、この近くの海で日帰り漁ばかりであるが、かつては、西は対馬、東は千葉の方まで漁に出かけたことがあるとのこと。
『対馬に行ったいうても、そがあにいっぱい釣れるいうこともなかった。 それより、荒れたら波が凄うて大変よ』
地域によっても漁港の対応が異なり、西の方がよくしてくださることが多いそうだ。
関東の方の漁港では、港にすら入れてもらえない所もあったとのこと。

『ここの船は、ほんまにいろんな漁港でみますよね。 呉の情島でも、山口でも』
『ほうじゃのお。 ここから上(東)の方にはあまり行っとらんが、下(西)の方には多いよのう』

また、夜はお風呂に入るのが楽しみだということで、気兼ねなくゆっくりとお風呂に浸かることができる銭湯がある港が良いのだが、どんどん銭湯がある町が減っているので、困るとのこと。
『漁師町じゃあ、風呂に入りに来い』と声をかけていただくこともあり、風呂に入らせていただくそうだが、『やっぱり気がねなよのう』

***

『この船は、2,500万くらいしたよ。 エンジンも一回載せ替えた』
『やっぱりエンジンは痛むんですか』
『遠くまで行って漁をするじゃろう。 そこでエンジンが止まってしもうたら、いろんな人に迷惑をかけるけえ、そうならんように変えたんよ。 まあ、こりゃあ人それぞれの考えじゃけえ』

『最近は、海がほんまに綺麗になっとる。 ずっと先におる太刀魚が見えるくらいじゃ』
『やっぱりそうですよね。 瀬戸内も透明度が上がるのはええけど、海苔も採れんようになっとるいうて聞きますもん』
『魚も海の栄養が減っとるからかしれんが、やっぱり少のうなっとるよ』

『豊島の船は、ほんまは靴で上がっちゃあいけんのよ』
『すみません。 脱ぎましょうか?』
『いやあ、まあ今日はええよ。 そういうことにしとるけえ。 でもわしらは、町を歩くときと、船に乗るときの履物は変えとる。 ここのサンダルは、船の中用よ』

『そうなんですね。 やっぱりここは、家なんですね。 だから、土足では上がることができない場所』
『例えばエンジンの修理に来てもらうじゃろ。 そん時も、油で汚れた作業服で来たら、脱いでもろうてから船に乗せて、修理させよったもんよ』

『おお、これやるけえ飲めや』

『ありがとうございます。 いただきます』
うん、やっぱり漁師さんにはリポビタンDがよく似合う!

***

低速でゆっくりと、豊島一周のクルージングをしながら、様々なお話を伺うことができた。
途中では、太刀魚漁のデモンストレーションも拝見させて頂いた。

仕掛けを回収するのは、こんな機械が活躍するのである。

船には、GPSがメインの今では、おそらくほとんど使わないと思われるコンパスも乗せられていた。


***

漁港に戻り、船を降りるときには、『あんたらは夫婦かの?』
『はい、そうです』
『じゃあ、これをやろう。 持って帰れ』

『ありがとうございます』
というわけで、新鮮なヤズを頂いた。

家船に乗せていただくという経験をさせていただいた上に、様々な貴重なお話を伺い、その上、立派な魚まで。
まさに、感謝感激である。

***

『ちょっとドライブして帰ろうか』
ということで、岡村島まで足を伸ばし、お気に入りの展望台へ。

ロードスターでこの丘の上まで来るのは初めてかもしれないなあ。


***

今日は、昨日の夜の雨で空気が澄み、遠くまでくっきりと見える。

絶景の、芸予諸島。


せっかくなので、御手洗もしばし散策。

昔の不思議な道具を発見!

『電卓そろばん』 これって一体、どういう意味があるのだろうか?
算盤での計算結果を電卓で検算? それとも、電卓での計算結果を算盤で検算?
なんとも不可思議な、時代を感じさせる道具である。

***

10年以上前から、一度乗ってみたいと思っていた家船に、幸運なことに乗る機会をいただけた日。
優しい船長さんに、様々な貴重なお話を伺えて、久しぶりとなる『あるくみるきく』を実践できた充実した休日であった。

生涯不良の旅するサラリーマン・シーカヤッカー。
さて、来週はどこ行こう?

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする