中国では今年の７月頃からLINEが使えなくなっていた。中国政府が規制をかけたのだ。それで日本にいる夫との連絡は中国版のLINEであるWeChatを使った。LINEはVPNを使うと繋がることもあったが、ほとんど繋がらないと思ってよい。そもそもネットに繋がらないこともしばしばで、ストレスとなった。一見自由そうに見える中国であるが、言論の自由はまだまだ許されない。
日本に来た中国人に日本に対する印象を聞くと、大方の人が「街が清潔」「人が親切」と言う。そのとおり、日本人が中国に行って思うことは「街がきたない」「人々は不親切」だ。日本なら困っている様子の人を見かけたら、誰かしら声をかけるだろう。中国で困った様子を見せても、通りすがりの人は無視だ。もし声をかけてくる人がいたとしたら、何か思惑があってのこと、信用してはいけない。
北京で2週間滞在したホテルは地下鉄雍和宫駅と北新橋駅の中間くらいにあり、毎日北新橋駅から地下鉄に乗り通学した。北新橋駅界隈は飲食店が多く特に火鍋の店が多かった。夕方になると人が増えてくる。後で、ここが眠らない街「簋街（グイジエ）」だと知った。ここではないが十数年前初めて見た北京の街は、9時には開いている店などなかった。
北京の天安門にある国家博物館は毎日大勢の人が参観する。入場の際ボディチェックもあり、セキュリティはかなり厳しい。中は広いので一旦入ると分散し、人の多さは気にならなくなる。台湾の故宮博物館とは違い、中国各地から出土した歴史的価値のある展示品が多く、中国の歴史や歩みなどの政治色も強いが、一日中いても見きれない。一方の首都博物館は、主に北京市近郊で集められたものということだが、展示品も多く見ごたえがある。さすが中国四千年の歴史である。どちらも入場料無料というのもうれしい。
滞在した胡同のホテルのそばは、一般の住宅だった。取り壊されようとしている建物も多くほこりっぽいし、道路は狭く雨が降れば水たまりだらけになった。それでもそこの住人達は、そんなことを気にしているふうではなかった。朝私が出掛ける頃には、近所の店で買い求めたマントウをぶらさげて家に帰る人たちとすれ違った。しかし同じ胡同でも大通りを渡った所は、全く違っていた。おしゃれなカフェやバーが軒を連ね、昼間は比較的ひっそりとしているが、夜になると賑わいをみせる。もうひとつの胡同の顔だ。
