思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『泣き虫弱虫諸葛孔明 第参部』ほぼほぼ周瑜!

2018-09-25 15:56:39 | 日記
酒見賢一による孔明論『泣き虫弱虫諸葛孔明』を
文春文庫版で、引き続き読んでいます。

前回の長坂坡(ちょうはんは)に続いて
第参部は、絶賛遠征中である曹操軍に対峙(逃走)しつつ
劉備軍団と呉の同盟成立から赤壁の戦い、
荊州南部ゲットまでが描かれています。

というよりも、周瑜がカッコよく登場し、
周瑜が孔明にコケにされ、ついでに周瑜が孔明に寿命も削られ、
周瑜がカッコよく没しました、と言った方がいいかも。
というくらい周瑜の巻です。

とはいえ私は三国志初心者なので、周瑜を知りませんでした。
第弐巻あたりでちょろっと出た際にも
男臭い三国志において通称「美周郎」だなんて
珍しいなあくらいだったのですが。

まえがきで作者が言及していますが
周瑜(公瑾)は三国志ワールド大好きサンゴクシシャン(すごいネーミング)
内でトップクラスの人気者らしいのです。
特にBL界隈で大人気だそうですが。
それよりも、その説の引用が『神聖モテモテ王国』ってとこに
私はツッコミを入れたい。
ブリーフ一丁のファーザーが気になりすぎて
論の主旨がまったく頭に入ってこないよ。
あと、相変わらずトンカツ食ってんな。

それはさておき、孔明が単身孫呉に行きマブダチ魯粛と
宿敵周瑜とアレコレやってるパートが多いので、
劉備の出番は少な目です。

魔性の男っていうか、真性クズの劉備がいる方が
やっぱり爆笑度合が違いますよね。
周瑜が何かと孔明にキレさせられて矢傷を開くのも
好きですが。

なにはともあれ、参部もおもしろかった!

残りあと二巻かあ、と思うと、
読むのが勿体なく感じてしまうのですが
(貧乏性なもので)
脳内に人名・地名・ざっくり歴史・ざっくり人間関係が入っているうちに
完読しなくちゃ!とも思っています。
ぽんこつだから!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【読書メモ】2009年9月 

2018-09-20 13:07:09 | 【読書メモ】2009年
<読書メモ 2009年9月 >
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。

『となり町戦争』三崎亜記
理由もわからずとなり町と戦争が起こるという設定がおもしろい。
架空戦争モノとしては『図書館戦争』(有川浩)の
設定(何と何が戦うのか)の緻密さとは真逆の抽象的な表現が良かった。
『図書館戦争』の方が好きだけど。


『慟哭』貫井徳郎
構造がわかりやすすぎて、オチが見え見えですが、いいんでしょうか。

(連続幼女誘拐事件と、若手キャリア課長の苦悩と、
 家庭問題と、新興宗教と、叙述です)


『ゼロの王国』鹿島田 真希
吉田青年の恋の物語?
トータルでおもしろかったけど、平均的に読むのが苦痛。

(宛名書きで生計を立てている無垢なんだかダメ人間なんだかわからん
 いろいろ危うい吉田青年が主人公の物語です。
 淡々と、深いようなそうでもないようなことが描かれていて
 結構おもしろいのですが、何しろ、ページ数が多いのです。
 途中から「そろそろどんでん返しないかな~」とか思いながら読んでました。
 ちなみにどんでん返しは無いです)


『カツラ美容室別室』山崎ナオコーラ
なんか一人称の「オレ」が似合わない主人公だなあ。という印象。
あと、会話のセリフも合ってない。あんな丁寧に会話しない。
会話に対して本文が雑。

(メモの内容が厳しいな……。
 まあ、でも、そういう感想を抱いたのでしょうがない)


『ミーナの行進』小川洋子
新聞に連載されていたお話しなので、怪しさとか毒は少な目。
『蒲公英草紙』を思い出す。

(第42回谷崎潤一郎賞受賞作。
 2009年5月のメモといってこいになってる。
 再読かなあ……。記憶に自信がなさすぎる)


『影武者徳川家康』隆慶一郎
(メモなし。
 隆慶一郎は、心底性に合わないのですが、
 週刊少年ジャンプで原哲夫の漫画版を読んでいたので
 その原作ってことで読了できました。
 お梶の方の塩の話しとか、よく覚えてます。
 そこそこ、おもしろく読みました)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

中島京子『妻が椎茸だったころ』すごくおもしろい

2018-09-19 14:06:46 | 日記
第42回泉鏡花文学賞(2014)受賞作品。

安定の中島京子クオリティ!
すごくおもしろいです。
ちょっと怪しくて偏っていてヘンテコな愛情あふれる
5つの短編が収録されています。

タイトルは以下。

『リズ・イェセンスカのゆるされざる新鮮な出会い』
『ラフレシアナ』
『妻が椎茸だったころ』
『蔵篠猿宿パラサイト』
『ハクビシンを飼う』。

どれもこれもタイトルからしておもしろいですが、
勿論、中身もおもしろいです。
この作者の頭の中を覗いてみたい。

ストーリーのどんでん返しという意味では
『リズ・イェセンスカ』『ラフレシアナ』が良かったですが、
全体的なトンマナやディテールは『椎茸』『ハクビシン』が良い。
敢えてひとつ好きなものを選ぶなら『ラフレシアナ』かなあ。

総じてぜんぶ良作なので、あれこれ言わなくてもいいんですが。

ちなみにこの小説は「日本タイトルだけ大賞」(2013)の
受賞作でもあるそうです。
〈内容の優劣を問わず、タイトルのみのコピー、美しさ、面白さが
際立つ書籍を表彰〉する賞なので、まあ、
他の受賞作は読まなくて良いと思うけど、補足まで。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』おもしろい!

2018-09-12 23:07:46 | 日記
宮内悠介『ヨハネスブルグの天使たち』読了しました。

デビュー作の『盤上の夜』に続いて
直木賞候補になった作品です。

ちなみにこの作者、デビューはSF系の短編賞ですが、
直木賞、芥川賞、ついでに山本周五郎賞や三島由紀夫賞など
多岐に渡る文学賞の候補にあがっているそうです。
それだけでも、多彩というか、万人に届く作風というか、
なんらかを感じます。

で、『ヨハネスブルグの天使たち』です。

これは連作短編集で、
すべての物語が、とある近未来の設定で描かれています。
地球上の各地で相変わらず起きている紛争を
様々な国と主人公の角度から切り取って、深く(しかし読みやすい)描きます。

すべての物語には共通して日本製の人型ロボットDX9が
登場するのも本書の特徴。
富裕層向けの娯楽ロボットとして開発され、
販路の問題で「楽器」として売り出す予定だったDX9。
というわけで、見た目はかわいい女の子ですが、
機能は、「歌うこと」だけ。

のはずが、紛争地域では単純殺戮兵器として
ソフトを入れ替えられたり。

第2に人生として人格をアンインストールされたり。
(それは本当に自分なのか?何かの解決なのか?)

短編ごとの、深く、グレーな、人類への問題提起に
毎回ひと役買っています。

ちなみに、書評とか広告とかで、
「少女ロボットが毎日降ってくる」みたいなことが書かれていて
「トンデモ系かよ!!!」と思って、ちょっと忌避していたのですが
読んだら全然トンデモくなかった。
地に足ついてた。
(はい、次からネタバレゾーンです)


がっつりネタバレですが、
工業製品の「対衝撃テスト」で毎日落下しているという設定でした。
と言われると、「あ、そう」ってなりますが、
風景として毎日夕暮れに女の子型ロボットが多数落下するって
ビジュアル的にも強いですよね。
すごいな!と思いました。
巻末の日本(団地!)が舞台の短編にも落下モチーフが出ます。
そちらは表題作に比べるとイマイチですが、
日本・近未来・団地というキーワードを掛け合わせると
納得のいく設定とも思えました。

まあ、それは一部でしかなくて。

この小説は、それぞれの短編で、
紛争や喪失や民族や宗教を用いて「社会」と「個」の関係性を
多角的に、そして何よりも大事ですが、
”わかりやすく””感じやすく”描いている短編集だと思いました。

ヨハネスブルグってどんな国?と問われて何も連想できなかった人
(私ですけどね)は、是非とも読んでおくと良いと思います。


あと、定型文のような薦め方でアレですが、
伊藤計劃が好きな人にこの作品はオススメできると思います。
うっかり『あとは野となれ大和撫子』を薦めると
ちょっと揉める気はします。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

佐藤亜紀『吸血鬼』安定の佐藤ワールド!

2018-09-07 15:22:54 | 日記
佐藤亜紀『吸血鬼』を読了しました。
一冊の小説を読んだといも言えますが、
「佐藤亜紀を読んだ」とも言える安定のクオリティ感!

今回の舞台は19世紀初頭のポーランド。
一言で説明できない混とんとしている場所と時代でありますが、
もちろん丁寧な説明はありません。
安定の突き放し感!
(でも読むのにさほど困らないし、佐藤亜紀読者はくじけない)

歴史に疎いながらに調べてみると、
ポーランド王国は18世紀に周辺大国(ロシア、プロイセン、オーストリア)
に蹂躙分割され国としてはすでに消滅しているようです。
小説の舞台は、不穏な独立の気運だけが燻っている
オーストリア管理下にあるガリチア地方の農村ジェキ。

その村に赴任した新任役人ヘルマン・ゲスラーとその妻、
村の支配者であり詩人でもあるクワルスキと妻ウツィア、
彼らに関連する助手や首切り人や医者や村人たちとともに
狭い村の中での不穏な数か月が描かれます。

物語の中心にあるのは、
貧しい村での不審死とそれにまつわる迷信ですが
わかりやすい「吸血鬼」は登場しません。
それが終始不穏な空気感を醸し出していて、
なんとなくざわざわする怖さがあります。

ジェキ村は本当に貧しくて、
大人になれるこどもが少ないと言われているような環境。
もちろん教育という概念もない。
村人が不審死を遂げると、家の壁に穴をあけて
棺を足の方向から出して埋葬する。
こうすることで死者は家へ戻る道がわからなくなるとか。

さらに首を切れば悪さをすることもない
(一方で死体を傷つけることは忌んでいるので
よそ者にお金を払ってやらせる)とか、
家の入口にすりおろしたニンニクを塗って魔除けとするとか、
なんとなく吸血鬼っぽいモチーフの迷信が散りばめられていますが
真面目に実行している村人は難しいことは理解してないし
理屈や説明などは期待もしていません。

領主であるクワルスキは迷信を理解しているけど、
だからこそ馬鹿にして無視します。
新任の役人ゲスラーは、理解したうえで村の空気を尊重して
採用したりしなかったり、柔軟に対応します。
そこにも、なんだか、不穏な空気が。

とにもかくにも、相変わらず美しく簡潔で読みやすい文章です。

一方で、村人の口語はものすごく訛っています。
日本の方言でここら辺?みたいな連想はできないのですが、
こういうキツイ訛りってあるあるという共感がある
絶妙な表現。
しかも頭の中では意外と読みやすい。
なんでだろう。

『残念な日々』も中途半端な関西弁にしないで
(そもそも関西の人は、あれ読んで怒らないのだろうか)
この『吸血鬼』を熟読してから翻訳したら
もっと良い感じの邦訳になったのではなかろうか。
余計なお世話ですが。

ところで、作中でもいじられていますが、
ヘルマン・ゲスラーという名前は
『ウィリアム・テル』に出てくる悪代官の名前であり、
息子の頭の上のリンゴを射掛けさせた人物だそうです。

『吸血鬼』でゲスラーとちょっと良い感じの距離感になった
クワルスキ夫人ウツィアは、詩の中で林檎に例えられており
ゲスラーにも初会で「林檎の君」と呼ばれます。
なんだか意味深な出会いからの、意味深なエンディングである。

佐藤亜紀作品内のベストではないと思いますが、
他作品も好きなら読んで損はない一冊です。

というか作者の文章や物語クオリティに
ゆるぎない安定感(というか圧倒感というか)があるので
背景や構成が不明だろうが理解できなかろうが、
安心して気持ちよく読み進められるのです。
ありがたいのである。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする