思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『モスクが語るイスラム史: 建築と政治権力』 モスク建築ツアー行きたい

2024-08-27 18:02:58 | 日記
『モスクが語るイスラム史: 建築と政治権力』
羽田正
中公新書

イスラムの歴史を、モスク建築を軸にして語る一冊。
このアプローチおもしろいですね!

モスクの原点はムハンマドの住居。
住居、というか、四角い土地。ほぼ広場。
屋根と壁があるのはムハンマドの奥さん(数人いる)の
居室だけっぽいんだけど、これは家なの?建築物なの?
なかなか哲学的な気分になるスタートである。

ウマイヤ朝後期には「古典型モスク」という
建築様式ができあがったようです。
・やっぱり四角い
・中庭付き柱廊建築。要するに四角いドーナツ。
 メッカ方向だけ分厚い
・メッカ方向の壁(キブラ)に「ミフラーブ」という
 アーチ型のくぼみがある。壁龕じゃん。
・集会モスクには階段状の説教段「ミンバル」がある。
 トマソンじゃん。
・8世紀以降ですが、中庭に面した巨壁「イーワーン」ができる。
 看板建築じゃん。
というわけで、モスク建築、意外と親しみ深い。

その後、歴史とともに政権は移ろうわけだけど、」
支配者がアラブ人からトルコ人に移った際、
偶像崇拝への厳しさが緩んで
モスクがデコラティブになったそうです。
なるほどなあ。

10世紀はシーア派の時代、
ブワイフ朝、ファーティマ朝がぶいぶいしていて、
11世紀はスンナ派、
セルジューク朝(テュルク系、超強い騎馬民族)や
アイユーブ朝(超強いサラディンの国)へと続く。
そして「マドラサ」というスンナ派の学校建築がブームになる。

この流行の理由がおもしろい。
モスクはお墓を併設しない建築なのですが
マドラサは墓廟があってOK、
だから有力者たちが自分の墓付きマドラサを
自費でつくりまくったそうなんです。
おお、これは歴史本だと出なそうな記述。
おもしろいぞ。

13世紀はモンゴル無双時代。
イスラムに改宗したモンゴル遊牧民系国家も生まれ、
モスクはどんどん装飾的になる。
14世紀には彩釉タイルの「カーシャ」が流行、
モザイク画のレベルがすごいことに
(イラン・イスファハーン「王のモスク」に行きたい)。

いやあ、おもしろいなあ。
学生時代にイスタンブールは一回行ったのですが、
改めてまた行きたいな。
スレイマンモスクをちゃんと見たい。
スペインコルドバにある大モスクも見たい。
エジプトのイブン・トゥールーンのモスクも見たい。
私の老後、忙しいな!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『成瀬は天下を取りにいく』 久しぶりに良い物語を読んだ

2024-08-23 17:49:16 | 日記
『成瀬は天下を取りにいく』
宮島未奈

2024年の本屋大賞受賞作で、
あちこちの賞を獲りまくりましたね。

一作目『ありがとう西武大津店』は
作者のほぼデビュー作で、
最初に獲った賞が「女による女のためのR18文学賞」です。

が、小中学生にも読んでほしい!と思える
健やかな内容と、読みやすい文章。

正直、前評判が高すぎて、
もう読まなくていいやと思っていたんです。
が、読むとやっぱりおもしろい。
こりゃ賞獲るわ〜、と。
くやしいけどおもしろかった笑

成瀬あかりというちょっと変わった少女を取り巻く
短編集。
友人の島崎がすごく良い。
成瀬と島崎がメインのお話しが頭ひとつ抜けていますね。
とはいえ良いバランスの多視点になっている。

最近、物語を読むのがしんどくなっていたのだけれど、
久しぶりに良い小説を読んだ!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『物語中国の歴史』 コスパ最強中国通史

2024-08-07 11:14:53 | 日記
『物語中国の歴史』
寺田隆信

中公新書の<物語歴史>シリーズの一冊。
(と銘打っているわけではないが、
 『物語 ○○の歴史』というタイトルで括っている)

これね、たった300ページのなかに
中国の始まり(殷王朝以前の伝説時代含む)から
清の滅亡まで約4000年が詰め込まれているんですよ!
超絶お得!!!

中国史って長すぎて、流れがぜんぜん掴めていなかったので
大変に助かります。
諸子百家」も「三国志」も「水滸伝」も
時代背景よくわかってないまま読んでいたというか。

著者の寺田隆信先生は『大唐帝国』の宮崎市定先生に
師事していたとのこと。
言われてみれば読みやすい文章とか、
情報整理された章立てとか、通ずるものがあるな!
あと碩学・内藤湖南先生の著述から学ばれているそうです。
私も読みたい。

以下、メモ

・中国の伝説としての歴史は五帝(黄帝とその子孫)から始まる
 黄帝、医学の歴史でも始祖っぽく登場してたけど、働き者だな…。

・中国の「鉄」は「鋳鉄(ちゅうてつ)」から始まる。(春秋時代)
 西アジアの鉄器は「鍛鉄(たんてつ)」からだから、
 まったく別ルートの技術らしい。
 さすが中国4000年。

・秦の天下統一はわずか15年。短いな。
 でも秦(chin)がchinaや支那の語源らしい。すごいな。

・随も40年弱。短いな!
 歴史の授業で遣隋使とか小野妹子(607年)とかめちゃ覚えたけど、
 意外と短命王朝だったんだな…。

・元が出てくるまでの華北異民族の勃興が好きだ。
【西夏】チベット系タングート族の国。
    西夏文字といえば『敦煌』もしくはクイズノックのネタとして有名。
【渤海(ぼっかい)】高句麗の遺民の国。
【遼(りょう)】937年成立。契丹族。騎馬民族。強い。渤海を滅ぼす。
【金(きん)】1115年成立。女真族。阿骨打(あくだ)によって統一される。
       超強い。遼と北宋を滅ぼす。
【元(げん)】モンゴル族。最強。1206年チンギス汗が統一。
       フビライ汗が南宋を滅ぼす。

・マルコ・ポーロが来たのは「元」王朝(1274〜)。
 元がめちゃ強くて版図拡大したのでシルク・ロードに加えて
 海路も栄える。
 →絹に比べて重い陶磁器の輸出が増える。
 たしかに。ラクダで大量に運ぶのしんどい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする