思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『村上T』 Tシャツにこんなにも語ることがあったとは…!

2023-11-30 17:14:46 | 日記
『村上T 僕の愛したTシャツたち』
村上春樹

雑誌『ポパイ』で連載されていた、
Tシャツにまつわるエッセイです。

まえがきにも書かれていたけれど、
『カーサブルータス』の音楽特集インタビューで
「Tシャツのコレクションみたいなこともやってるんですよ」
「村上さん、それでひとつ連載をやりませんか?」
というのが発端だそうです。

マガハの編集者、優秀すぎでしょ。
Tシャツで連載というミラクルオーダー、
しかも村上さんが断らなそうな自然な差し込みで。
神業か!!

というか、この本を手に取った時から
「Tシャツでそんなに書くことあるんかな?物語系エッセイかな?」
と思ってましたが、ちがいます。

本当にTシャツにまつわる話だけです。
すごい!

ウィスキーモチーフのTシャツ、
ジャズ(レコード)モチーフのTシャツ、
村上作品ノベルティTシャツ、
マラソン完走記念Tシャツ、
動物かわいいTシャツ…。

Tシャツでこんなに語ることあるのかあ、という感動と、
何かわからないけど私も何かを集めたいものだ、
という羨ましさ。

程よく気が抜けて、良い一冊。
そして写真も良い。
ウィスキーでも飲みながら読みたいですね。
(私はハイボール派)

あと、フジモトマサルさんが故人だったことを
遅ればせながら知りました。
ショック…。
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『カラー版 名画を見る眼Ⅱ──印象派からピカソまで』

2023-11-29 12:19:19 | 日記
『カラー版 名画を見る眼Ⅱ──印象派からピカソまで』
高階秀爾

カラー画たっぷり、とってもお買い得な新書
『カラー版 名画を見る眼』の第2巻。
印象派からピカソまで。

前半は、1890年前後のパリの作品が多い印象。
芸術の一極集中の時代でもあったのかな。

印象派の色彩分割についてなどは、安定のわかりやすさで
大変勉強になります!(先生ありがとう)
印象派が人物をどう捉えるかの分岐で、
モネ(光と風景に人物は溶けていく)と、
ルノワールが対比的に登場しているのも良かった。
ルノワール絵画の、印象派・アングル(描線が硬い)時代を経て
生命力溢れる「触りたくなる」人物への昇華。
どちらが優れてるとかではないですが、おもしろいですね。

ゴッホやスーラも印象派の影響を受けた時期があり、
その後に自分の画法を極めたみたいです。
なんというか、「逆に印象派ってすごくないか!?」と思う。
学生の頃は「印象派ってぼやけてるな」と思ってましたが、
難易度高めのジグソーパズルにハマった時期に
日の出の2000ピースパズルを買った良い思い出。
予想通り、めちゃ難しかった。

収録作は以下。

モネ「パラソルをさす女」
ルノワール「ピアノの前の少女たち」
セザンヌ「温室のなかのセザンヌ夫人」
ヴァン・ゴッホ「アルルの寝室」
ゴーギャン「イア・オラナ・マリア」
スーラ「グランド・ジャット島の夏の日曜日の午後」
ロートレック「ムーラン・ルージュのポスター」
ルソー「眠るジプシー女」
ムンク「叫び」
マティス「大きな赤い室内」
ピカソ「アヴィニョンの娘たち」
シャガール「私と村」
カンディンスキー「印象・第4番」
モンドリアン「ブロードウェイ・ブギウギ」
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『英国王室史話』 英国史を駆け抜けろ!

2023-11-28 17:45:36 | 日記
『英国王室史話』
森護

作者は紋章学が専門。
研究者ではなく、NHK社員だったそうです。
会社員やりながら好きな研究できるって最強ではなかろうか。

初版が1986年なのでちょっと古い表現もあるけれど、
各王室、それぞれの王様で章立てをして整理されています。
歴史を追いかけやすくて、ありがたい。

そもそもイングランドは単一民族王朝ではないどころか、
常に他民族の王朝だったり。
イングランド、スコットランド、アイルランドは
全然別の国で「連合王国」であることとか、
改めて勉強になりました。

なんとな〜くな島国の印象で、
日本と似ていると思いがちだったけれど、
ぜんぜん違った…!

各項でご専門の紋章学うんちくが入るのも良いですね!
そこそこ脱線してジギスムント(リチャード2世王妃アンの異母弟、
神聖ローマ皇帝カール4世の息子)に触れた際のうんちくは
「神聖ローマ皇帝の紋章を双頭のわしにした人」。
ジギスムントうんちく、それでいいのか!?

なにはともあれ、サクソン王時代から、エリザベス女王のご即位まで
英国史を概観できる、めちゃくちゃありがたい一冊です。

ガーっと読んだので、
個人的にも英国史を駆け抜けた感がある。
ランナーズハイみたいな達成感である笑
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『日本の町』 情報量多すぎ対談その2

2023-11-27 10:07:52 | 日記
『日本の町』
丸谷才一/山崎正和

つづき!

西宮の話。
酒といえば奈良だった時代に、
伏見の酒屋が「重衡」という名前で商標をとった。
平重衡は奈良の大仏に火をつけた人。
という山崎さんの話に、丸谷さん、「なるほど!笑」と。
「笑」が効いている。
好きそうなエピソードだもんな笑
以下は丸谷さんの説。
電鉄では阪神と阪急が2種類の文化をつくり上げている。
阪神は地べたを走り、阪急は高架を走る。
阪神は古風で土着的・大衆文化をつくる・甲子園球場、
阪急は近代的でよそから来た・ハイカラと泥臭さの宝塚。
私は西宮や大阪方面に行ったことないからピンと来ないけど、
何かの火種になりそうなテンション笑

弘前の話。
「寡黙な東北人」は間違いという丸谷説。
九州の男の方が寡黙、
「ムッと黙って、すぐ腹を切るか、人をバッサリ切るか」
(これはなんとなく分かる笑)
宮沢賢治とか井上ひさしの言葉遊びの連続だったり、
斉藤茂吉の軽快というか軽率さというか、
少なくとも鈍重ではない。とか。
方言の「け」「く」も情報量が多い言葉だし、
いろりを囲んでひと冬中喋っているんだ、と。
確かになあ、と思いました。
そもそも丸谷さんが東北出身で、よく喋るからなあ。

松江の話。
北前線が日本海の主要航路だったという話しから。
船の文化は、港になる町をつくるけれど
その文化のつながりはつくらない。
日本の船に航海日誌を書く習慣がなく口伝だったのも
原因のひとつでは。
へえ〜。
あと、丸谷さん曰く。
お茶の水にあった岸記念体育館(前川設計事務所)は
弘前の興雲閣に通じているのでは、説。
うーん、それは違うと思うな…。
藤森照信『日本の近代建築(下)』参照ですが。


それはさておき、
山崎正和氏は藤森照信先生と交友があったみたいです。
この本の中でも「藤森さん曰く」みたいなコメントが多々出てくる。
「東京には江戸時代の建物が、神社仏閣を除くと
一つも残っていない」とか。
この二人の対談も読みたいなあ。

しかしまあ、博覧強記なお二人の縦横無尽な対談である。
情報量が多いなあ笑
30年以上前なので、現在とは異なる部分も多いと思うけれど、
町のルーツから出身有名人から風物から建築&都市計画から、
タメになるお話しがよくもまあ尽きないですね。
良い本だ。

ちなみに表紙の絵は安野光雅。
贅沢〜!
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『日本の町』 情報量多すぎ対談その1

2023-11-24 11:50:05 | 日記
『日本の町』
丸谷才一/山崎正和

日本の町に関する歴史や風土やこれからを
勝手に語っている対談集。
1987年初版。

初出は文藝春秋の雑誌『くりま』と書いてあるのですが、
どういう雑誌なんだろう…?
なにはともあれ、対談の前に各地を二人で取材(旅行か?)
しているみたいです。
楽しそうだな!

小樽では、煉瓦街の寂れっぷりの描写や
今後のために「運河をどうすべきか論」など。
昨今の観光地化を知っている令和の身からすると
慧眼だなあと思う内容です。

おふたりとも知識がものすごいので、脱線もすごいです。
金沢のエピソードでは、金沢藩主の末裔・前田利為が
東條英機と仲悪くて「陣没」(戦死なら相続税がかからない)扱い
にされたとかいう。
偉人意地悪エピソードがポンっと出るあたり、
さすがの丸谷才一で良き(真偽は不明らしいけど)。
そして金沢の町の話ではない笑

四国の宇和島は、仙台の伊達政宗の長男・伊達秀宗が
宇和島十万石を与えられてつくられた町。
知らなかった〜。
仙台的な文化風俗も多くある。
桑折(こおり)という苗字は仙台由来。七夕まつりも盛大。
山家清兵衛(やんべせいべえ)をまつっている和霊神社は
殺された家老を祀るという珍しい神社。
菅原道真もレアケースだけど、貴族だものなあ。

長崎の「雨」のイメージは戦後、昭和20年頃からだそうです。
長崎の人は昔は雨が少なかったというが、
江戸時代に出島に来た外国人の手紙や手記には
雨がちな気候のことが書かれているので、イメージの問題。
開国して、近代化が終わって、情緒漂う古都のイメージ
(もはや最先端ではない街)になった、という分析。
ちなみにプッチーニの蝶々夫人は長崎が舞台で
「ある晴れた日に」とカラッと歌っているそうです。
長崎は日本最初も多い。
日本初のテニスコート、洋食店、英字新聞、
汽車が走った場所(グラバーが大浦海岸につくった)、缶詰工場。
うんちく披露しずらい規模の日本初が多いな笑

というかこの本、情報量多すぎ!
続く!
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