思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』

2024-10-24 16:11:41 | 日記
『目の見えない人は世界をどう見ているのか』
伊藤亜紗

著者は、若い頃は生物学者を目指していて、
その延長線で「美学」(認識を哲学的に探究する)を専攻する先生。

というルーツがまず独特ですよね。
なのでこの本の視点も独特。
いやもうタイトルの通りの内容なんですが、
「見えない人」の世界の捉え方を理解し、
「見える人」「見えない人」の違いを追体験しようと。

「見えない人」の一般論を述べているのではなく、
一人ひとりの「世界の見え方」を考えるきっかけを
与えたいという一冊です。

興味深いファクトてんこ盛りだし、
それについての洞察もおもしろいし、
良い本だと思う。

「見えない人」は足の裏の感覚で道の状態を確認しつつ、
慎重に一歩ずつ歩くタイプもいれば
ガスガス歩くタイプの人もいる。
前提条件に対して個性は様々。
そうだよなあ。
当たり前の論かもしれませんが、
順を追って読んでいると、ハッとすることが色々あるんですよね。

「道」の捉え方、「運動」の仕方、「美術」の楽しみ方、
様々な角度から認識の違いが提示されていて
それがとても興味深い。
美術館でのソーシャル・ビュー
(見える人も見えない人も一緒に、作品について話し合う)
は、すごく参加してみたいです。

パスタソース(形が同じタイプ)は
開けて食べるまで何味かわからない、ってことを
楽しんでいる。というエピソードが好きだ。

ヨシタケシンスケさんの絵本もあるみたいなので
そっちも買おうかな。
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『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』 ローマ通史は何冊読んでもおもしろいよね

2024-10-23 16:48:03 | 日記
『興亡の世界史 地中海世界とローマ帝国』
本村凌二

<興亡の世界史>シリーズの
古代ローマ帝国の通史です。

もうちょっと地中海(アフリカ、エジプト、アナトリアとか)
沿岸との歴史的な関わりが描かれるかなあと思いましたが、
古代ローマ帝国の通史、です。
まあ、あっちこっち行ってたら文庫1冊にならないですよね。
(しつこいが塩野七生先生のローマは全43冊だ)

なんだかんだで読んですぐ忘れるタイプ(ぽんこつ)なので、
モンタネッリ『ローマの歴史』を読んだからなあ、
なんてことをぶちぶち言いながら読んでいましたが
やっぱりおもしろいよねローマ笑

この本はカルタゴを滅ぼした小スキピオが
盛者必衰の哀愁満々なシーンから始まります。
映画っぽいなあ。
それはさておき大スキピオがハンニバルを破った
紀元前200年前後、中国では項羽vs劉邦が戦って漢帝国が誕生した頃。
東西の大国が同時期に生まれていたそうです。
なんか感動があるな。
(そして日本は弥生時代…)

そんなオプニングから一気に遡って、
紀元前753年4月12日がローマの建国記念日(自称)。
双子が川に流されたり狼に育てられたり
(モンゴル・トルコでもおなじみの英雄生誕パターン)して
隣国を略奪したり戦争したりなんだかんだで運営。

そんな紀元前600年頃は、
メソポタミア方面ではアッシリア帝国が崩壊。
アケメネス朝ペルシア(ペルシア人)が覇権を握ります。
幹線道路「王の道」とか、金貨とかつくる。
文明的〜。

一方のローマはイタリア半島南部のエトルリア人の王が
気に入らなくて追放。
「王政絶許で共和政国家へ。
何かとSPQR(Senatus Populusque Romanus)をアピールしたがる
市民性になる。

で、紀元前330年前後にアレクサンドロス大王が大活躍。
文明的に先駆けていたアケメネス朝ペルシアも滅ぼし、
地中海一体をヘレニズム化。

紀元前のローマを本村先生は「共和政ファシズム」と表現しますが、
この後にカエサルが出てアウグストゥスが出て、
気づいたら帝政ローマに。

ネロ帝が出て、ウェスパシアヌスが立て直して(パンとサーカス!)
五賢帝が続いてお風呂をたくさんつくって
揉めに揉めた後にディオクレティアヌスがキャベツつくって
コンスタンティヌスがキリスト教公認して
(あとノミスマ金貨もつくった。かわいそうなビザンツの財源
ゲルマン民族大移動(376年)で大打撃を受けて
東西分裂したらフン族も来るしもう大変。

476年、西ローマ帝国滅亡。はいおつかれさまでした。
東ローマ帝国は1453年にコンスタンティノープル陥落
あなたはがんばった!!!(涙なしには語れないよね)
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『サンドウィッチは銀座で』 飯テロエッセイってこういうことか

2024-10-22 14:45:20 | 日記
『サンドウィッチは銀座で』平松洋子

平松洋子さんってお名前は知っていたけれど
読んだことなかったなあ。

というか、フード系のエッセイストなんですね。
なんでだろ、絵本作家とか短編小説とかを
書かれている人かと思い込んでいました。

とはいえ気にはなっていたので、読んだ。
雑誌『オール讀物』で連載されていた食エッセイの
単行本です。

季節の素材や料理の描写も良いのだけれど、
食に対するパワーがすごい。
食べたくって食べに行く!という純粋な欲求が
清々しく綴られています。
そして、まあ、よく食べる。
お料理をいただく描写もパワフルなんだよなあ。
私より年上なのに、めっちゃ健啖じゃないですか。
羨ましい笑

しょっちゅう食を共にしている編集者は
東海林さだおのエッセイにも登場していたY田青年。
この人もまた良い食べっぷりである。
はふはふと汗だくになりながら本場中華料理に
かぶりついているのも良いし、
ジビエを食べに山荘まで出向くのも良い。

しかも挿画が谷口ジロー!
「かぶりつく」様子を描かせたら右に出るものはいないよね!
(かぶりつき画はよしながふみさんと『ダンジョン飯』も良いよね!)

食への幸せと、良い意味でのガツガツ感。
ああ〜うなぎの串焼き食べたいな!!!
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『検閲帝国ハプスブルク』 トムジェリ的検閲おいかけっこ

2024-10-21 10:50:35 | 日記
『検閲帝国ハプスブルク』菊池良生

神聖でもローマでも帝国でもない!
でおなじみ(?)『神聖ローマ帝国』どんとこいの
菊池先生の本です。
まあ、おもしろいよね。
そりゃね!

検閲といえば書物と宗教の長い長い戦いでもあるわけで。

1440年代にグーテンベルクが活版印刷を発明したことで、
書籍が爆発的拡散力を持ち、宗教革命につながる。

と、初期印刷物が宗教関係&宗教論になりがちな一方で。

16世紀は各国で「国家統一のための統一言語」が生まれる時代。

フランスは、1539年フランソワ1世がすべての公文書を
オイル語(北フランスで使われていた言語)に統一。

イギリスは、ヘンリー8世(クズ男)がイギリス国教会を設立。
カトリック弾圧。

ドイツ・オーストリアは宗教革命でルターがドイツ語聖書を出版。

という感じで、カトリック・ラテン語の権威が失墜し、
奇しくもヨーロッパ各国の国家言語が醸成されたそうです。
めっちゃおもしろいじゃないですか。

で、絶対王政やら啓蒙主義やらの流れで、
検閲は宗教から政治へ。

この本でも、ハプスブルクの検閲最盛期は
ナポレオン没落後の王政復古時代とされています。
具体的には、
1815年ウィーン会議から1848年ウィーン3月革命の間。
「ウィーン体制」「前3月期」とも言う。

ちなみに神聖ローマ帝国は、ウィーン会議前の
ナポレオン絶頂期にぼこぼこにされてます。
神聖ローマ帝国のラストエンペラー・フランツ2世は、
娘をナポレオンの妻として差し出さざるを得なかった人ですね。
神聖ローマ帝国終了!後は、
オーストリア帝国初代皇帝フランツ1世となります。
ややこしいな。

フランツ1世は、検閲を厳しくしすぎたせいで
クレイジー検閲官が跋扈し、
皇帝の大好きな喜劇も取り締まられちゃうから
「急いで観に行った」というエピソードも。
何かの寓話かな?

以下、小ネタメモ。

『グーテンベルク聖書』に代表される1500年以前の活版印刷本は
「インキュナブラ」と呼ばれるマニア垂涎の品。
実家の本棚にあったらラッキー。

1819年カールスバード決議で、20全紙(八つ折り320頁)までの
書籍の検閲義務化。
つまりどうなるかというと、「やたら分厚い本が増えた」。
(320頁を越えればいいのだ)
本文と関係ない50頁分のレシピが書かれた本とかあったらしい。
何かの寓話かな?

ハイネ『旅の絵』第4部の結末も、
出版社に言われて320頁超えのために書き足されたものが
評価されているそうです。
よかったね!

というわけで今作も菊池先生はおもしろかった。
次は『戦うハプスブルク家』あたりを読もうかな。
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『ベッドルームで群論を 』 好物かと思ったら意外と難しかった

2024-10-18 11:52:08 | 日記
『ベッドルームで群論を
――数学的思考の愉しみ方』
ブライアン・ヘイズ
冨永星:訳

数学の専門家ではない著者による
数学を楽しむためのエッセイ。

的な説明がされている一冊。
なにそれ、大好物!
と思って読んだのですが、なかなかレベル高いですよ…。

ぜんぜん、わからなかったぜ…。

収録されたエッセイはほとんどが
アメリカの科学研究団体が発行する雑誌
「アメリカン・サイエンティスト」に掲載されたもの。
本気雑誌に本気掲載されてる本気数学エッセイじゃないか。

表題作で、ベッドのマットレスをひっくり返す
というモチーフの意味がわからないまま
(凹むのを防ぐべきは頭?お尻?長手中心軸(人体全体)?)、
群論に突入して置いてけぼりになったのが原因かなあ。

どのテーマも、あまり、ピンと来なかった。

最後のストラスブールのからくり時計は
仕組みもエピソードもおもしろかったです。

うーん、本を選ぶのも読むのも、難しいなあ。
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