思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

ポール・オースター『幽霊たち』……

2017-09-28 12:31:32 | 日記
ポール・オースターのニューヨーク三部作と言われているのが、
『ガラスの街』、『幽霊たち』、『鍵のかかった部屋』。

『幽霊たち』は、その第二作目ですね。
柴田元幸の訳で読みました。

解説での訳者曰く「エレガントな前衛」らしいですが、
前衛すぎて、ちょっとわからない。
つかれる……。

80年代のアメリカ文学の代表的な作品だそうです。
探偵のブルーが、依頼を受けてブラックという人物を見張る、
という設定なんですが。
誰を見張っているのか、何を見張っているのか、なぜ見張っているのか、
何も謎が無いようで謎しかないけど答えもないというか、
まあ、不思議な物語です。

それなりにおもしろく読んだんですけどね。
なんか、前衛って性に合わない…。

「アヴァンギャルド」とか「ポストモダン」という単語に
苦手意識があるんですよね。なんでだろう。
それぞれ厳密な定義が違う!とかあると思いますが
ざっくりとしたイメージで、そこらへん。

でも「不条理」という単語にはそれほど拒否感ない。

私が「不条理」から連想するのが「ゴトーを待ちながら」で、
この作品に好意を抱いているからだと思いますが。
(串田和美と緒方拳の舞台を見たことがあるのがちょっとした自慢なのです)
あとカフカも「不条理」の連想ボックスに入ってる。

『幽霊たち』は、挿話がけっこうおもしろくて、
ブルーの父の記憶や、
ロバート・ミッチャム主演映画「過去からの脱出」、
ナサニエル・ホーソーンの「ウェイクフィールド」などの
エピソードが良かったです。

まあ、でも、つかれる。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』

2017-09-27 16:31:29 | 日記
第26回鮎川哲也賞受賞作の
市川憂人『ジェリーフィッシュは凍らない』
読みました。

これね、帯にね、
「21世紀の『そして誰もいなくなった』登場!」
ってあるんですよ。
新人作家の本を売るためには良い煽りかもしれませんが、
ある種のネタバレじゃないですか……。
そりゃ、気にはなるけど……。

舞台は1983年のU国(アメリカ)。
携帯電話やらネットやらを排除するための時代設定ですね。
現代ではなかなかクローズドサークルが成立しませんものね。
ホント、ミステリを書くのが大変な時代である。

ジェリーフィッシュと呼ばれる気嚢(きのう)式浮遊艇
(=飛行船のこと)という発明品が軸にあって、
その薀蓄とかトリックとかストーリー展開とか、
面白くて一気に読みました。

ひとつだけ難癖つけると、
刑事コンビの人物造形があざというというか、
会話もちょっと軽いというかラノベっぽいというか。
賞ものだから、こういう「キャラ」って感じの
美男美女を入れといた方が得策なんですかね。

とはいえ面白かったです。
疾走感があるので、気晴らし読書や通勤読書におすすめです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハインライン『夏への扉』

2017-09-15 14:22:42 | 日記
SF小説の名作古典として有名な
ロバート・A. ハインライン『夏への扉』を読みました。
小尾芙佐(おびふさ)による新訳版です。
(旧訳は未読ですが、新訳版おすすめです!読みやすい!)

おもしろかった!
読後感もとても良いし、猫も賢いし、
未来はやっぱり良いものだと思いたいと思えるし、
「名作」の評価に恥じない良作です。
人に薦めたい。

SF小説として今さらな設定、みたいな書評が
ネットに落ちているようですが
「タイムトラベル」や「コールドスリープ」という概念が
飽和している現代に於いて、
SF小説という評価軸に乗せる意味は無いと思います。
小説として「名作古典」でいいんじゃなかろうか。

あと、猫好きにおすすめ的な表現もよく見かけますが、
猫好きでなければ楽しめないというわけではない。

と言いつつ、「賢い猫」と生活を共にした経験のある人には
グサグサ刺さると思います。
ピートの哲学や断固とした行動やぬくもりは
代替不可能な存在感があってですね。

私が人生の20年以上を共に過ごした
超絶賢く美しい白猫を思い出してしまって大変でした(涙腺が)。
ちなみにペットロスの反動で5匹もの愚猫を飼うはめになった
実家の母も「今やってるのは、飼育って感じ」と。
つまるところ、私も母も、猫好きではないんですよね。
あの子が、好きだったんです。

個人的な猫の話しで脱線しましたが、
『夏への扉』は猫萌え小説ではありませんし
そんなに猫が出てくるわけでもありません。

そんでもって小説として名作です。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする