思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』 情報量!

2024-11-29 12:19:18 | 日記
『辺境の怪書、歴史の驚書、ハードボイルド読書合戦』
高野秀行×清水克行

『世界の辺境とハードボイルド室町時代』
意気投合しまくったお二人の第二弾。
ただ対談するだけだと二匹目のドジョウにしかならぬ
ってことで、お互いのオススメ本をテーマにした
読書リレーゼミみたいな形式に。

なんでハードル上げていくのか笑
その姿勢が好きだけれども。

全8回の対談を3ヶ月ごとのペースで開催したそうです。
イブン・バットゥータ(全8巻)とか、
3ヶ月で読み込んで来いと言われても無理でしょ。
いやもう、ドMだよねえ笑

以下、読書メモ

『ゾミア 脱国家の世界史』
ゾミアは民族ではなく、エリアの呼称。
歴史的に政府に属さない(もしくは支配が難しい)山塊を指す
地理学用語。
ゾミアは、高野さん曰く「アジアの納豆地域」と重なっているそう。
納豆本、まだ読んでないわ。読まねば。

『世界史のなかの戦国日本』
中国銭は平地より山間部の方が普及が早かったそうです。
直感を裏切る良い事実。
山間部では共通交換ツールである「コメ」がなかったからとか。
銭の普及については網野先生の本にもあったけれど
現代の常識から考えると謎の動きをしていておもしろい。
また、非日常的なものほど、流通範囲が伸びるという話しも。
(ラッコの毛皮みたいな珍品は交易距離が長い)
(貨幣の役割も担うコメは消費されちゃうので短い)
この本、おもしろそうだな。読もう。

『大旅行記』
イブン・バットゥータによる30年の見聞記。
全8巻!!
こんな機会でもなければ通読しなかったと
高野さんも清水先生もポジティブに取り組んでいて
ほんと偉いなと思います笑
イブン・バットゥータの出身はマリーン朝(現モロッコ)。
14世紀のインド・トゥグルク朝にも8年滞在。
トゥグルク朝2代目のスルタン・ムハンマドに仕えた。

あれ?
この人、コテンラジオのインド史で言及されていた
「銅でつくった貨幣を「銀貨」って言おう!」
「地図を格子状に割って農地にしたら税金増える!」
「豊かな土地は税金20倍にしたろ!」
とか言ってた“どうかしてるぜ”王じゃないか。

イブン・バットゥータのインド出国経緯も
「あいつやべえ」みたいな感じだ笑

『将門記』
日本で最初に書かれた軍記物。平家物語よりも太平記よりも。
平将門は939年に関東を平定して「新皇」を名乗った人。
そして日本で始めて獄門晒し首になった人。
いろんな日本初をやらかしておる。

『ギケイキ』
これは町田康による小説。『義経記』の現代版。

『ピダハン』
ピダハンは数の概念がない。時間感覚も持たない。
「直接体験の法則」で自分が経験したことしか話さないので
儀式・口承が成り立たない。
そんなピダハンの集落に行った伝道師件言語学者が
信仰を捨てる話し笑
あと、小ネタで
「懈怠」は今日やることを明日やる
「懶惰」は明日やることを今日やる、
という怠け方だそうです。おもしろ〜。
ブリコラージュ(器用仕事)はレヴィ・ストロースがよく言うやつ。
有り合わせのもので適当に道具をつくること。

『列島創世記』

『日本語スタンダードの歴史』
鎌倉以前は地方ごとの連なりが緩かったので言語風俗に「訛り」がきつい。
室町時代に流通が発達したことで、「スタンダード」ができるという話し。
時代はもうちょい後ですが、
伊達政宗は濁点がみっつだったそうです。
「だ」を書く際に、「た」に点をみっつつけるってこと。
で、朝鮮出兵で日本各国の武将と交わり、
「濁点ってふたつなのがスタンダードかも?!」
と気づいちゃったそうです。
以降、伊達政宗も「だ」が点ふたつになったとか。
なんか勿体無いな。

と言う感じでめちゃくちゃ情報量が多くて
お得な一冊。
これ、続けてくださらないものか。大変そうだけど。

ちなみにですが、この対談って
「ゆる言語学ラジオ」の水野さんの「ゾミア」「ピダハン」語りの
種本だよねどこをどう見ても(そして初出の時期を見ても)。
他人が隠していた(わけではないかもしれないが)ネタ帳を
読んでしまったような気恥ずかしさがあった笑
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『ジャムぱんの日』 良い意味でヘンテコな人だ!

2024-11-28 09:53:11 | 日記
『ジャムぱんの日』
赤染晶子

ちょっとヘンテコで面白い思考するタイプの
妙齢女性が頻出する短編集。
いや、エッセイか?
作者そのものか?

めちゃくちゃおもしろい人じゃないですか、
この作者さん!
なんで今まで知らなかったんだろ?

数ページ程度の掌編と言える小説(小噺)っぽいものから、
幻想エッセイ?嘘か真かわからないとぼけたエッセイまで。

表題作の『ジャムぱんの日』は凄く良い。
一応オフィスなのに、給水室にガスを引いてなくて、
そこで働く妙齢女性が勝手に脳内で「新婚ごっこ」を
延々とやってます。
何言ってんだって概要ですが、マジでこれ。
そしておもしろい。
天才か。

この作家さん、寡聞にして存じ上げなかったのですが
2010年芥川賞受賞とのこと。
確かにお名前の文字面だけ覚えている…。
うーん、こんなにおもしろい人だったとは!
読まねば!
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『温泉天国 ごきげん文藝』 温泉入りたい

2024-11-26 18:45:46 | 日記
『温泉天国 ごきげん文藝』

「ごきげん文藝」は、河出書房による
“おとなの愉しみを伝えるアンソロジー”。
その第一弾が、温泉にまつわる随筆を集めた『温泉天国』。

掲載順は、温泉地を北から南下しているっぽいかな?
どう読んでも良い並びだなと捉えてつまみ食い読みを
しています。

嵐山光三郎、井伏鱒二、太宰治、武田百合子、
つげ義春、荒俣宏
あたりをまず読んだかな。

あ〜あっつい温泉に入りたい〜(草津は熱々で好き)。

このシリーズ、
ほかに「にゃんこ天国」「ほろ酔い天国」などがあるようで、
河出書房は良いフォーマットをつくったな、という感想。

以下、掲載作。

湯のつかり方(池内紀)
カムイワッカ湯の滝(嵐山光三郎)
ぬる川の宿(吉川英治)
湯船のなかの布袋さん(四谷シモン)
花巻温泉(高村光太郎)
記憶(角田光代)
川の温泉(柳美里)
美しき旅について(室生犀星)
草津温泉(横尾忠則)
伊香保のろ天風呂(山下清)
上諏訪・飯田(川本三郎)
村の温泉(平林たい子)
渋温泉の秋(小川未明)
増富温泉場(井伏鱒二)
美少女(太宰治)
浅草観音温泉(武田百合子)
温泉雑記(抄)(岡本綺堂)
硫黄泉(斎藤茂太)
丹沢の鉱泉(つげ義春)
熱海秘湯群漫遊記(種村季弘)
湯ヶ島温泉(川端康成)
温浴(坂口安吾)
温泉(北杜夫)
母と(松本英子)
濃き闇の空間に湧く「再生の湯」(荒俣宏)
春の温泉(岡本かの子)
ふるさと城崎温泉(植村直己)
奥津温泉雪見酒(田村隆一)
別府の地獄めぐり(田辺聖子)
温泉だらけ(村上春樹)
温泉で泳いだ話(池波正太郎)
女の温泉(田山花袋)
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『名画に見る男のファッション』 センスも靴もとんがり放題だ

2024-11-25 13:31:51 | 日記
『名画に見る男のファッション』中野京子

西洋絵画の時代は、
男がこぞってファッションにこだわる時代。
ハイヒールもタイツも毛皮もウィッグも、
全部、男のファッションアイテムなのである。

って、そりゃおもしろいですよ。

パッと見で身分を分らせなきゃいけない時代、
見た目にこだわるのは納得です。

15世紀に大流行した「プーレーヌ」と言う名の
“とんがり靴”なんぞは、
とんがりの長さが身分ごとに定められたのだとか。
強制されると逆にカッコ悪い気もするが、
当時はいかに「長くとんがるか」競争が凄かったようです。
90年代ギャルの厚底ブーツみたいだ。
(徐々に上げ底が高くなっていき、
 最終的にキャンベル缶の乗ってんのか?って高さになり
 そして足首を捻るギャルが続出した)

ちなみにとんがりの長さ、庶民は靴サイズの0.5倍まで。
騎士は1.5倍、貴族は2倍、王族は2.5倍。
長すぎるとんがりの先っちょは膝のあたりにボタン留めされたとか。
それはもうとんがりじゃない。

ルイ14世でお馴染みのかつらも、
身分に合わせてもっこもこのくるんくるんを競ったそうです。
ベルサイユファッションは、威嚇し合う孔雀(オス)っぽいな。
そもそも人毛を使ったボリュームたっぷりのカツラは超高級品。
貧乏貴族は馬や山羊の毛でお値段も一目瞭然だそうで。
うーん、切ない。

そして不思議なことにカツラが流行る時期とヒゲが流行る時期は
被らないものらしい。
上か下か、どっちかをもじゃもじゃすれば気が済むのか。
おもしろいですね。
ヒゲの漢字は複数ありますが
「髭」は鼻下、「髯」は頬、「鬚」は顎周りだそうです。
中野先生、博学である。

名画の中で働く人々』で取り上げられたスイス人傭兵も、
こちらの本に登場しています(同じ絵)。
個人商売で売名もしなきゃならないので、
とにかく派手に着飾ることで有名だったそうです。

そんな傭兵ファッションから上流階級へと流行ったのが
スラッシュ(服の伸縮性を補うために上着に切り込みを入れる)と
コドピース(股あて)。
コドピースは15世紀から17世紀にかけて上流階級に大流行。
確かに絵画の中のヘンリー8世(英)もフェリペ2世(西)も
堂々とお召しになっておられる。

いやあ、おもしろいですね、男性ファッション。
ちょっと喜劇っぽい部分も込みで、おもしろいな。
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『職業としての小説家』 村上さん的「小説家」論

2024-11-21 10:39:52 | 日記
『職業としての小説家』
村上春樹

「小説家という職業」について講演調に書かれている
(が、リアルに講演をしたわけではない)。

自発的に書いた原稿らしいのですが、
縁あって柴田元幸監修雑誌「MONKEY」に順次掲載され、
単行本化に至ったそうです。

村上さんによる村上さんらしい「小説家」論。

めちゃくちゃ推敲する方なのは知ってましたが、
長編小説は最初から最後まで、何度か書き直す。
ディテールの整合性を取るためにも書き直す。
奥さんに読んでもらって指摘されたブロックは
また書き直す。ごっそり。
全体を見て、さらに書き直す。
みたいなスタイルで、
とにかく書き直すことを厭わない。
ほげ〜。すごい。

とにかくストイックだなあと思う。
本人が目指しているのは自分らしく「書く」スタイルで
ストイックになることが目的ではないと思うけれど。
フィジカルを大事にしているのも
別に運動好き、筋トレ好き、とかじゃないというか。

なので、ひと昔前の文壇の
銀座のバーで朝まで呑んで締切破ってから一筆書きで
原稿を仕上げるぜ!みたいなイメージの
百万光年対極な世界です。

それはそれ、これはこれ、
どっちもあるでしょとは思うけれど、
村上さんの考え方や生き方から得られるものは
(個人的には)すごく多い。
実はこっそり感謝している。

文学賞とか、文壇についての、
世間で色々言う人が多いから
自分のスタンスを表明しておきます、的な話(第三回)も
良い文章だった。
もっと怒っていいと思いますけど笑

以下、目次。

第一回 小説家は寛容な人種なのか
第二回 小説家になった頃
第三回 文学賞について
第四回 オリジナリティーについて
第五回 さて、何を書けばいいのか?
第六回 時間を味方につける──長編小説を書くこと
第七回 どこまでも個人的でフィジカルな営み
第八回 学校について
第九回 どんな人物を登場させようか?
第十回 誰のために書くのか?
第十一回 海外へ出て行く。新しいフロンティア
第十二回 物語があるところ・河合隼雄先生の思い出
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