思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

よしもとばなな『スナックちどり』

2018-07-28 10:05:31 | 日記
久しぶりのよしもとばなな作品。

40歳手前の主人公「さっちゃん」は離婚したばかり。
従兄弟の「ちどり」は育ての親である祖父母を亡くしたばかり。
そんな妙齢ふたりがイギリスのペンザンスというど田舎
(最果ての街の、一歩手前。というなんとも中途半端な感じが、いい)
に5日ほど、ふらっと、旅するというお話し。

どちらも傷ついていて弱っていて寂しさを抱えているのに、
会話はさらっとしていて、強いというよりも、しなやかな女性ふたり。

だらだら会話して、散歩して、タイ料理食べて、観光して、
その数日でなんとなーく離婚やら自分やらに向き合っている。
人生の仕切り直しというほどでもないし、
前だけ向いて生きるぜ!って熱量もないし、
それだけの話しと言えば、まあ、それだけなんですが。

さっちゃんとちどりがお互いを大事にしたり、
まじめに向き合ったり、ちょっとダメ出ししたり
そんなやりとりに、お腹の底の方がほんわかあったかくなります。

さすがばなな女史。

ページ数も少なくて、さくっと読めるので、
ちょっと弱っているときや疲れているときに(ユンケル飲むほどでないくらいの)
ゴロゴロしながら読むと良いと思います。

どうでも良いけど、文庫表紙の作者名は「よしもとばなな」で
あとがきは「吉本ばなな」なんですね。
漢字表記に戻したんですね。
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高野文緒『カラマーゾフの妹』おもしろいと思う

2018-07-27 17:13:27 | 日記
『カラマーゾフの兄弟』を読んだのは
もはや10年前。
私のぽんこつ脳みその割には
記憶に残っている物語でもあります。

そして高野文緒『カラマーゾフの妹』です。
江戸川乱歩賞受賞。

確かにドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は
二部構成で構想されていた作品です。
そんでもって、第一部である『兄弟』を書き終えた直後に
作者は59歳で亡くなってしまったのです。

私が楽しませてもらった光文社版を訳した亀山郁夫氏も
続編の内容を予想する著作を出しています。
(『『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する 』(光文社新書))

しかしね、このテーマで書いたってのが、すごい勇気だと思います。

『カラマーゾフの妹』冒頭の「著者より」には、
誰もが躊躇するだろうが前任者の偉大さを気にしなければ
書けるといった内容で、とはいえ、やっぱり、
すごい勇気が要ったんじゃないかな……と
凡人は思ってしまう。
まあ、余計な心配でしかないですけどね。

さてさて、そんな『カラマーゾフの妹』は、
『カラマーゾフの兄弟』の13年後が舞台。

父殺しの犯人としてシベリア送りになった長兄ミーチャは死に、
末っ子アリョーシャは相変わらずスコトプリゴニエフスク(舌を噛む!)
に住んでおり、そこに次兄イワンが事件の再捜査に来るのが物語の発端。

真犯人を探そうと思ったら、
トロヤノフスキーとかいう好青年が新登場し
(オマケで名探偵ホームズ氏らしき人物がちょこっと言及されている)、
新たな殺人事件が勃発したと思ったら、
イワンはアレだし、アリョーシャもアレだし……。

というわけで、結構テンポ良く展開を楽しめます。

あとがき代わりの対談で亀山氏が「ある種のキッチュとして楽しめた」
みたいな評価をしていて(それも好意的に)、
これには私も共感しました。

文豪ドストエフスキーの代表作の正当な続編!というより、
こういう解釈も楽しめるよね、という感じで、
リラックスして読むのが良い楽しみ方だと思いました。

真犯人の心理とか、おもしろかったし、納得もできましたし。
19世紀後半のロシアの空気感や、
科学・宇宙・政治の時代性も楽しめました。

亀山氏の『『カラマーゾフの兄弟』続編を空想する 』も
読んでおかなきゃ。
というか、『カラマーゾフの兄弟』を読み返したい。
しかし長い!
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【読書メモ】2009年6月~7月 ②

2018-07-19 14:24:28 | 【読書メモ】2009年
<読書メモ 2009年6月~7月 ②>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『怖い絵2』中野京子
ピカソがゲルニカを描いているときに、
愛人のカメラマン女性と妻が取っ組み合いのケンカしているシーンは、
何かの映画で観たので知っていた。
その愛人をモデルにしたのが『泣く女』ですと言われると、
絵の深みが違うというか、生々しいというか、おもしろいですよね。
あと、『パリスの審判』の三女神のゆるい裸体の話も
時代性を感じておもしろかった。
『ラス・メニーナス』のモデルのお姫様(マルガリータ)は
可愛そうだ。

(ちなみに『パリスの審判』はギリシャ神話の三女神
 ヘラ・アテネ・アフロディーテが美男子パリスに
「誰が一番キレイか言ってみなさいよっ!!」
 と絡むという、とても恐ろしい話しがモチーフの絵画です。
 どう答えてもバッドエンディングしかないやつ)


『吉原手引草』松井 今朝子
(メモなし。
 こちらは137回直木賞受賞作。
 遊女・葛城の失踪事件を様々な人間の証言で描き出す物語。
 取材者の存在は前面に出ませんが十辺舎一九という設定。
 私のポンコツ脳内で『花宵道中』と記憶が混線していた
 やつでもあります)


『建築バカボンド』岡村泰之
バガボンド(vagabond)とは英語で“放浪者”“漂泊者”
という意味らしい。
なんかバカ一代みたいなイメージのある単語ですけど。

(中学生以上すべての人のためのノンフィクション
 「よりみちパン!セ」シリーズの一冊です。
 イラストが100%ORANGE、装丁が祖父江伸の
 オシャレカジュアル「教養書」シリーズと言った方が
 わかりやすいかも。
 こちらは建築家・岡村泰之による
 イラストや写真多めの「家づくり」にまつわる一冊です。
 読みが同じの音楽家は関係ない)
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エトガル・ケレット『突然ノックの音が』余韻のある短編集

2018-07-18 12:45:03 | 日記
エトガル・ケレット『突然ノックの音が』を読みました。
イスラエルの作家による短編集です。

ひとつの作品はほんの数ページ単位で、
38本が収録されています。

内容としては、ちょっと不思議な話しが多め。
自分が過去についた「嘘」に出会ったり。
恋人の舌にジッパーがあって、
開けたら中から違う人間が出てきたり。

そして、
たまにものすごく現実的な人間模様の物語があったり。

偽装結婚の話しも面白かったです。
兵役を免除してもらうために、
会ったこともない男と結婚をした女性の物語。

創作教室に通う夫婦の話しも好きです。
彼らが書く物語のあらすじがさらっと語られていて、
それがすごく面白そうなのです。

物語の舞台は基本的に現代のイスラエルで、
そこの日常や文化をまったく知らない私ですが
人としての日々の不満や疑問やふるまいは
私とあまり変わらない気がするな、と、
共感を抱きながらスッと読めます。

あ、でも、登場人物の名前が身近にない響きで
(ヨナタン、オリット、オシュリ、ツィキ……)
口の中で転がして味わいたい感じ。

ひとつひとつがとても短く、
不思議な余韻のある物語なので
一日一本ずつ読んだりすると良いかも。

翻訳はヘブライ語翻訳家の母袋夏生(もたいなつう)。
読みやすくて良い文章です。
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【読書メモ】2009年6月~7月 ①

2018-07-09 17:23:16 | 【読書メモ】2009年
<読書メモ 2009年6月~7月 ①>
カッコ内は、2018年現在の補足コメントです。


『ネクロポリス』恩田陸
相変わらず謎が謎のままだったりするけど
「ヒガン」の世界観が楽しかった。
ジミーはみんなに忘れ去られてかわいそうだなあ。


『女王の百年密室』森博嗣
表紙の写真はクリスティーナ・ガルシア=ロデロの作品。
スペインの女性写真家でマグナムフォトにも参加している様子。
表紙が良かったから読んだようなものだけど、
内容も想像以上に面白かった。
作者にありがちな哲学ポエム(意味不明)が
犀川シリーズほどではなかったのも良かった。


『逃亡くそたわけ』絲山 秋子
方言がうまい、とどこかで評されていました。
群馬に住んでるらしいですが、博多弁の表現がホントにうまい。
こってりした方言なのに、ぎりぎりしゃべってる内容がわかる。


『オリエント急行殺人事件』アガサ・クリスティ
ネタバレを昔どこかで読んだのを途中で思い出してしまって、
残念なことに。


『婚礼、葬礼、その他』津村記久子
表現の端々が笑えて、この人好きだなーと思う。
ちょっと軽く読めちゃったのが残念かもですが。


『街の灯』北村薫
(メモなし。「ベッキーさんシリーズ」の第1作。
 昭和7年の東京が舞台。旧士族である花村家の箱入り娘・英子と
 女性ながら専属運転手をつとめる別宮(べっく)みつ子、
 通称ベッキーさんが登場する短編シリーズ。
 日常の謎(殺人も出るけど)系短編シリーズなのに、
 表紙が高野文子じゃないという一点に於いて
 私の興味がイマイチそそられないシリーズでもあります)


『間宮兄弟』江國香織
(メモなし。
 2004年刊行、2006年映画化。
 東京のマンションに兄弟で暮らす30代独身男×2の日常。
 映画は観てないですが、小説はおもしろかったです。
『女性セブン』に連載されていたらしい。なんか意外です。
なんというか、マガハっぽい)


『冷血』トルーマン・カポーティ
実際の事件を扱ったノンフィクション・ノベル
(というジャンルはカポーティが作ったそうです)。
マイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』(村上春樹訳)は
読んでいたけど、こちらは作者(編者?)の影を一切出していなくて、
ノベル的読みやすさがあった。
けど、重い。
心臓と胃の真ん中辺りがズッシリ重くなる。

(補足というか蛇足かもしれませんが、
ノンフィクションというジャンルを切り開いたのが
 カポーティ『冷血』(1965年)。こちらは取材がベース。
 合わせて語られることが多いマイケル・ギルモア『心臓を貫かれて』は
 1976年に起きた殺人事件の、犯人の弟という立場から書かれたノンフィクション。
 邦訳は村上春樹で、日本での出版は1996年)
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