思惟石

懈怠石のパスワード忘れたので改めて開設しました。

【読書メモ】2012年8月③ 『のぼうの城』

2020-02-25 19:03:59 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年8月 ③>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。
瀬尾まいこと横溝正史だけ読んでるわけじゃない!
と言っても他に読んだの一冊だけだった。


『のぼうの城』和田竜
映画にしやすいと思う。
おもしろかった。

(第139回直木賞(2008)ノミネート、
 第6回本屋大賞第2位(2009)。

 映画にしやすそうというか、そもそも、
 映画の脚本賞である「城戸賞」(2003)を受賞した自身の作品を
 セルフノベライズしたものなのだそうです。
 この作者、映画好きそうだな(福井晴敏っぽい)と
 思っていましたが、実際、元々は脚本家志望だったと。
 知らなんだ〜。

 本作がヒットして、無事2012年に映画化。
 良かったですね。

 舞台は豊臣秀吉による小田原攻め。1590年。
 北条方の成田氏領主・成田長親(ながちか)、
 別名「でくのぼう」の「のぼう様」が主人公。
 埼玉の浮城・忍城(おしじょう)での籠城戦のお話しです。

 ちなみに豊臣方は、私がイマイチ好きになれない、石田三成。
 ふーん。がんばれ。

 ちなみにちなみに、
 史実としては「のぼう様」という呼び名は見当たらず
 キャラ付けは完全に創作のようです。
 小田原城開城・北条氏降伏まで持ちこたえたのが
 忍城のみだったというのは、ちゃんとした史実です)
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宮下奈都『羊と鋼の森』しあわせな物語!

2020-02-21 12:05:14 | 日記
話題になりましたね〜。
宮下奈都『羊と鋼の森』です。
世の中のブームとは少々時差がありますが、
ようやく読みました。

第13回本屋大賞(2016)
第4回ブランチブックアワード大賞(2015)
第13回キノベス!(2016)
で第1位。三冠達成!

ほへぇ〜すごいな!!

というわけで読んだらすごい良かった。
グッときた。

調律に魅せられた青年の成長物語が
静かなトーンでつづられます。
するする読めて、しみじみ沁みる。

主人公の外村(とむら)くんの語りで、
淡々と、粛々と、訥々と、調律の仕事との出会いから
就職して数年までの、迷いとか学びとかが描かれます。

山育ちの外村くんは、ピアノの音の向こう側に
「森」が見える予感を持っているけれど、
その風景は人によって違うみたいです。
ふたごは「水」に例えたり。
そういう言葉にするのは難しいことを、
登場人物たちがみんなマジメに考えて、誰かに伝えようと
頑張って比喩にしたり、会話に食らいついたりするのが、
すごく好感。

物語のなかに大事件とか、覚醒レベルの成長とかはない。
ふんわりとした大きなものに真摯に向き合う外村くんの、
5年間くらい(?)の日々。

個人的には、10代で一生ものの仕事に出会えた外村くんは
とても幸せな人だと思います。
彼は今後の人生も、当たり前のように、
調律師を「諦める」という選択肢を持つことなく
前を見ながら粛々と歩んでいくのでしょう。
うらやましい。

ジブリの『風立ちぬ』(原作は未読)を観たときの、
二郎さんはすごく幸せな人でうらやましいと思ったときの
感情に似ている。
こんなふうに生きられたらいいな、と思います。
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【読書メモ】2012年8月② 金田一ブームもきた!

2020-02-19 14:40:58 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年8月 ②>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。

<金田一耕助シリーズ>は学生時代に拾い読みしてましたが、
改めて読んだスケキヨきっかけで、この時期にまとめ読み。

瀬尾まいこと横溝正史という取り合わせの謎感はありますが、
どちらも、難しいこと考えずにのんべんだらりと読書に浸りたい
心境には合うんです。
仕事から逃避したい通勤電車にも良いし、
部屋で寝そべって読むのも最高です!
だからと言って併せ読みを勧めているわけではないが…。


『迷路荘の惨劇』横溝正史
金田一先生はパトロンがたくさんいていいなあ。
計画的殺人より期せずして起こった連続殺人が多いな。

(明治時代の伯爵が建てたいわく付きヘンテコ屋敷が舞台。
 抜け穴あり、返し扉あり、自然の鍾乳洞に繋がる迷路あり。
 ついでに数十年前に犯人が逃亡したままの惨劇あり。
 てんこ盛りななかでの連続殺人事件発生です。
 「これぞ!」って感じで良いですよね〜。
 舞台は昭和25年。
 物語の原型となった短編は1956年(昭和31年)発表ですが
 長編作品として刊行されたのは1975年(昭和50年)です)


『獄門島』横溝正史
(メモなし。
 1947年(昭和22年)から一年半かけて雑誌『宝石』に連載された作品。
 舞台は瀬戸内海の孤島。封建的な風習を重んじる旧家の人々。
 屏風に残された俳句になぞらえた連続殺人。
 「これぞ!」って感じで良いですよね〜。
 金田一シリーズとしては2作目。
 舞台設定は1946年(昭和21年)です)


『悪魔が来りて笛を吹く』横溝正史
偶然のおかげの連続殺人が多いなあ。
金田一の防御率の低さがおもしろい。

(1951年(昭和26年)から2年かけて連載された作品。
 田舎の名家と好対照な、都心に住む斜陽貴族の事件。
 麻布の子爵邸、怪しいフルートの旋律、降霊術っぽい砂占いに
 悪魔の紋章、呪われた血筋…。
 「これぞ!」って感じで良いですよね〜。

 そして、全作品に共通する金田一先生の防衛率の低さ!
 
 若かりしころ、漫画<金田一少年シリーズ>が流行りに流行って
 不動高校は殺人事件発生しすぎ!犯人死亡率高すぎ!
 と思ったものですが、じっちゃんも致死率高め探偵なんだな…
 と、しみじみします)
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【読書メモ】2012年8月① 瀬尾まいこ!!きた!!

2020-02-17 17:30:09 | 【読書メモ】2012年
<読書メモ 2012年8月 ①>
カッコ内は、2020年現在の補足コメントです。
瀬尾まいこさん、好きなんですよねえ。
2010年には読んでいて、好きだなあ〜と感じていたんですが、
ここにきてようやく一気読みに突入しました。
時差…。

どうでもいいけど、本好きの先輩と話していた際に、
評価が定まった過去の作家さんとはちょっと違って
現代作家さんを「好き!」って宣言するのって
すこしだけ慎重にならない?みたいな会話になりました。

世の中の読書人はどんなもんなのでしょうか。
私と先輩、自意識過剰ですかね…。

なにはともあれ。
瀬尾まいこ月間ですよ!


『強運の持ち主』瀬尾まいこ
直感で占う占い師の話し。
駅前のショッピングモールで働いているらしい。
すごく良かった。
瀬尾まいこすごい。

(元OL占い師が主人公の、4つの連作短編集。
 陳腐な褒め言葉で恐縮ですが、
 「読み終わったら元気になりますよ!!!」
 こんな陳腐な褒め言葉で瀬尾まいこを勧めるな!!と自分を殴りたいけど、
 まあ、でも、そういうことなんですよ)


『優しい音楽』瀬尾まいこ
瀬尾まいこブーム。
朴訥としてるフリして気が利いてるセリフや心理描写がいいなと思う。
狙って練っているんだろうけど。

(ちょっとふしぎな感じのする恋の物語、3篇。
 家族を紹介してくれない頑なな恋人の表題作、
 ずるい不倫男の話しなのにずるい魅力がある(男にというか話に)
 『タイムラグ』、
 恋人がリストラおじさんを拾ってきちゃうトンデモスタートの
 『がらくた効果』。
 どれもこれも、ずるいくらいうまい。おもしろい。
 ひねりのない感想ですが、「良い」ですよ!!!)


『戸村飯店青春100連発』瀬尾まいこ
関西弁いいなあ。

(坪田譲治文学賞受賞作。
 超庶民的中華料理屋の男兄弟のお話し。
 若気の至りというか10代の悶絶するようなあれこれとか
 ほんと、苦手なんですよね。
 自分の痛い時代がちらついて、正視できない。
 途中まで、ちょっとハマらないかなあ、とか、
 個人的色眼鏡で読んでいたんですが
 そこは瀬尾まいこですよね!
 おもしろかった!!
 あと関西弁は良いね!!)
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宇月原晴明『黎明に叛くもの』

2020-02-14 21:22:17 | 日記
山本周五郎賞も獲った『安徳天皇漂海記』が
めちゃおもしろい宇月原晴明の初期作品です。

『安徳天皇〜』の鎌倉時代+それ以前の
ちょっと古雅な時代が似合う感じの作者ですが、
デビュー以来の3作は、戦国時代が舞台。

で、『黎明に叛くもの』が小説3作目。
戦国時代ものの3作目でもあります。

物語の中心にいるのは
“爆死武将”で有名な(私の中でですが)松永久秀です。
おいおい、どんな爆死するんだよ。
って、アホみたいな期待とともに読みましたが、
まあ、爆死は「スケキヨの足」レベルの些事ですね。

おもしろいのは、松永久秀と斎藤道三が
ペルシアの暗殺術(と作中では明言しないけど)の
「破山(はさん)」の法を受け継ぎながらも、
天下取りを夢見て山を降りる…
って、なんだかイマドキの少年漫画みたいな設定だな。

と突っ込みつつも、なんか、おもしろい。
ぐいぐい読んじゃう。
マムシの道三と、サソリの久秀弾正。
「蛇蝎の如く嫌われる」の“蛇蝎”コンビです。
それだけでもおもしろい。

この兄弟弟子の、若かりし(青臭い)時代と、
信長が台頭し始める時代が絡み合って物語が進みます。
なにげにページ数が通勤読書人につらい京極レベルなんですが、
(中公文庫版の余白の無さ!密度すごい!!
 なにがなんでも一冊にしてやらあ!っていう気概を感じる
 男前な字詰めです。読みにくい笑)
時制もあっちこっち飛ぶし、
現と幻と夢もあっちこっち飛ぶので
覚悟を決めて一気読みした方が楽しめるし、混乱は少ないと思います。

一冊にまとめたらあ!!と思った初代編集さん(?)は
間違ってないですよ!!

ラノベっぽい版(Cノベルス)では
豪気に全4巻に分冊されたみたいですが、
「つづく!」みたいな優しさは皆無なので、
素直に一気読みすることを個人的には勧めます。

んで。
道三の甥っ子(説)の明智光秀と、
道三の娘婿である信長が
「道三は兄者!大好き!」な久秀を中心に
何かと登場するわけですが。

やっぱり道三はおもしろい人だ。
一方で、相変わらず私は、明智光秀に好意を持てない…。

何考えてるのかわからないし、
なんでその結論になるのかもわからない。
うーむ。
相性かな…?

そうそう、作者の好み、初期作品から変わらないようで
作者の大好きな「神器」が出てきます。
今回は、金の独鈷と銀の独鈷だよ。
土蜘蛛の方がよっぽどやることなすこと神がかってますが、
まあ、由緒正しき(?)『古事記』『日本書紀』系の伝説のやつのようです。

あと、この作品は漢詩や歌が多く引用されてますね。
澁澤っぽいな〜相変わらず〜と思いましたが。
今作は司馬遼太郎『国盗り物語』へのオマージュだそうです。
司馬だと…?
個人的には、あまり、司馬先生とのリンクを感じなかったな…。
だから困ることは何もないけど。

小説としては『ふたり道三』よりは全然楽しめた!
とはいえ抗えない「歴史」というものがあり、
そこへお迎えに行くファンタジーストーリーという
後手な書き方を感じるところもあった。
ファンタジー的な突拍子の無さが、
歴史ファクトありきだからオチが見えてワクワクできないというか。

と、厳しいこと言いつつ、楽しかったです!
ほんと、この作者さん、変な人!(褒めてます)
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