https://netallica.yahoo.co.jp/news/20181212-10559301-giza
脳喰いアメーバの恐怖は身近にあります。
シアトルにいる68歳の女性が、水道水で鼻うがいをしていたことで脳を食べる珍しいアメーバを摂り込んでしまい、亡くなりました。
この件について、感染症国際ジャーナル「International Journal of Infectious Diseases」の新しいケース・スタディーで、このように記述されました。
この感染症は当初、脳腫瘍として誤診されていました。疑いのある腫瘍を取り除く手術中、シアトルのスウェディッシュ・メディカル・センター神経外科医の執刀医チャールズ・コブズ医師は、脳の損傷の程度に驚き、さらなるテストのためサンプルを抽出しました
犯人はアメーバ
コブズ医師は、The Seattle Timesにてこの状況についてこう語っています。
私がこの女性に手術をしたとき、脳のゴルフボール大ほどの部分が血まみれになっていたんです。そこには脳細胞を食べるアメーバがそこら中に巣食っていたのですが、我々は最初それが何なのかわかりませんでした。
そこで組織を切り取って調べたら……アメーバだということが判明したのです
その後の生検レポートには、女性に寄生していたのは「バラミュージア・マンドリラリス(Balamuthia mandrillaris)」というアメーバだったことが示されました。この種の感染症は非常にまれですが、特にこの事件は、「鼻うがいからと思われる、Balamuthia mandrillaris脳感染の最初のケース」である、と珍しい事例として記載されたのでした。
原因は水道水
鼻うがいとは急須のようなネティー・ポットを使い、鼻の穴に水を注ぐことで副鼻腔の圧迫感を軽減するものですが、この女性は煮沸した水または生理食塩水の代わりに、購入した水用フィルターを通して濾過した水道水を使用したとのこと。
米Gizmodoのドヴォルスキー記者も、ネティー・ポットで鼻うがいをするとのことですが、煮沸した水や生理食塩水を使うことは知らなかったのだそうです。おそらくほかの多くの人々にとっても驚きだと思う、と述べています。
アメーバの生態
「バラミュージア・マンドリラリス」は1986年、サンディエゴ動物園で飼育されていたマンドリルに寄生したのが最初の発見でした。世界的に同様の事例は200件しか記録されておらず、そのうち70件が米国で発生しています。しかも致死率は、事実上100%なのです。
このアメーバは、土壌や淡水に生息し、自由に活動する単細胞生物です。ほかに脳ミソを食べるのは「フォーラーネグレリア」がいますが、混同されることはないのだそうです。こちらはたった数日で人間を殺すのに対し、女性は感染後約1年間生存していた、というから進行は非常に遅いんですね。
こうしたアメーバは、伝統的に中米や南米の暖かい気候に住んでいます。しかしながら、気候変動によりワシントンのような米国北部の州にも、生息地を伸ばす可能性を持っているんです。
感染報告
通常、これらのアメーバに感染することは稀です。汚染された水を飲んだくらいでは感染しませんが、たとえば「フォーラーネグレリア」の場合、湖で水泳をして鼻から水が入ったりすると感染します。そして今回は、水道水をフィルターで濾しただけの鼻うがいポットが引き金だったのです。
2月に亡くなった68歳の女性は、はじめ鼻の皮膚に発疹が現れたといいます。医者は顔の赤みが出る一般的な「酒さ」だと診断。治療は約1年間続いたのだそうです。そして女性は脳卒中で倒れ、CT検査を受けて脳腫瘍だとまた誤診されたのでした。
報告書には、以下のようにも綴られています。
積極的な抗アメーバ療法にもかかわらず、患者の状態は悪化し続けました。それから一週間とかからず彼女は眠気に襲われるようになり、昏睡状態になりました。さらなるCT検査が行われ、元の切除腔にさらなる出血が確認され、家族は支援を止めることに決めました
そしてとうとう、患者は最終的に正しい診断を受けてから約1カ月後に死亡したのでした。
この事例は、この種の感染症を正確に診断することがいかに難しいかを示しています。研究者がこの研究で指摘したように、免疫系の脆弱性、環境要因、遺伝学など感染の方法や理由については、まだ多くのことを学ぶ必要があります。科学者たちは、鼻の病気やリング状増強病変の場合、医師がアメーバの検査を行なうことを勧めてます。
しかしながら、鼻うがい自体は止めるべきではないともいっています。容器を適切に洗い、煮沸した食塩水または生理食塩水を使用する限り、大丈夫なのです。