わぁ、おそろしい。
そんなにも影響があるの。
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20181227-00189718-diamond-soci
歯周病や虫歯といった歯科疾患が、単に「口の中の問題」と考えられていた時代は遠くなった。歯周病が糖尿病、がん、循環器病、認知症など全身のさまざまな疾患に関わっていることが、国内外の研究者によって明らかになってきたからだ。略
● 歯周病菌の保有者は、 膵臓がんの発症リスクが2.3倍に
――歯周病をはじめとする歯科疾患は、全身疾患に関係しているのでしょうか?
歯周病がさまざまな臓器に影響を与えることは、疫学的には随分前からわかっていました。さらに新たな動きとして、歯周病菌があらゆる臓器に影響を与えることを示すしっかりしたエビデンスが出てきました。歯周病のコントロールの悪さが、なぜ全身疾患のリスクを上げるのか、メカニズムがわかってきたものもたくさんあります。歯科と医科が手を結び、治療を行う機会も増えてきました。
歯周病は主に“2つの方向”でほかの臓器の健康を左右します。2つの方向とは、「血液に入り込んで全身を駆け巡る歯周病菌などの口腔細菌」と「歯を失い咀嚼(そしゃく)が難しくなることでの栄養低下」です。口腔ケアをおろそかにし、歯周病が進行すると、歯周ポケットの組織が破壊され、炎症が起こります。そこから口腔細菌が血液内に入り込むのです。歯周ポケットの滲出液(しんしゅつえき)は血液とほぼ同じ成分であり、血液内でもしばらく生き延びることができるため、血液に乗って全身に運ばれます。
これらの口腔細菌が全身に及ぼす影響と、栄養低下が及ぼす影響は異なります。まずは、口腔細菌の影響からお話ししましょう。
――歯周病菌は、具体的に全身にどのような影響を及ぼすのでしょうか?
まず、膵臓がんの発症リスクが高まると言われています。歯周病菌の代表的な菌で、特に問題があるポルフィロモナス・ギンギバリス菌(以下、ギンギバリス菌)の保菌者は膵臓がんの発症リスクが1.6倍、同じく歯周病菌の一種であるアグリゲイティバクター・アクチノミセテムコミタンス菌の保菌者は膵臓がん発症リスクが2.2倍高くなると発表されています
膵臓がんに限らず、歯周病菌はすべてのがんのリスクを上げるとされています。これ歯周病菌とがんの関係が注目されている理由は、発がんの理論が変わったためです。20世紀まではウイルスはがん発症に関係しているが、細菌は関係していないというのが一般的な考えでした。ウイルスは人や動物の中に入り込まなければ増殖できない微生物で、細菌は自分の力で増殖できる微生物です。
ところがピロリ菌と胃がんの関係の解明で、それが変わりました。ピロリ菌は細菌であり、その細菌が胃がんを発症させることが証明されたのです。これをもう少し詳しく説明すると、ピロリ菌に感染することで慢性炎症が起こり、胃の粘膜でDNAメチル化異常が誘発される。DNAメチル化とは、染色体内の化学反応のひとつで、その異常がDNAメチル化異常です。
このDNAメチル化異常が胃の粘膜に蓄積すると、がんが起こりやすい状態となり、やがて胃がんが発生するのです。そしてこれと同じメカニズムが歯周病菌においても考えられています。歯周病菌が全身の臓器に血液で運ばれ、慢性炎症を引き起こす。それがDNAメチル化異常につながり、がん発症のリスクを上げるのです。
● 動脈硬化の要因にもなっていた! 認知症、糖尿病など関連疾患は多岐に
――生活習慣病との関係はどうでしょうか?
例えば高血圧、脳血管疾患、心疾患などに関係していることがはっきりしています。
これらの疾患で共通しているのが動脈硬化です。なぜ、歯周病菌が動脈硬化を進行させるのか? それは、歯周病菌のギンギバリス菌とギンギバリス菌が分泌する無数の外膜小胞(outer membrane vesicles (OMVs))に細胞侵入する性質があり、それによって動脈に慢性炎症が起こるからです。
動脈の慢性炎症が起こると、血液中のLDLが動脈の内膜に入り込み、酸化して酸化LDLに変化します。これを処理するために白血球の一種も内膜へ入り込み、今度はマクロファージに変わります。マクロファージは酸化LDLを取り込んで泡沫細胞になり、炎症性物質を放出して動脈のあちこちで慢性炎症を誘発します。これらが引き金になって、動脈硬化が促進されるのです。
――認知症にも歯周病菌が関係していることに驚きました。
認知症の中でも多くを占めるアルツハイマー型認知症に関係しているとみられているのが、アミロイドβという脳内で作られるタンパク質です。これが脳内に蓄積し、脳細胞を死滅させることが発症の一因になっているというのです。
このアミロイドβは、ギンギバリス菌が多いほど、蓄積が多いことがマウスを使った感染実験でわかっています。つまり、ギンギバリス菌は脳のアミロイドβの沈着を促し、アルツハイマー型認知症の発症リスクを上げると考えられるのです。
アルツハイマー型認知症で亡くなられた方とそうでない方の脳を調べた研究があります。それによると、アルツハイマー型認知症で亡くなられた方10人のうち、ギンギバリス菌の毒素LPSが脳から検出されたのは4人。一方、アルツハイマー型認知症でなかった方からは、誰一人として検出されませんでした。この結果から、ギンギバリス菌の毒素LPSが脳に侵入し、アルツハイマー型認知症の発症リスクを高めることが推測できます。
また、英国科学誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された九州大学研究グループの発表でも、ギンギバリス菌の毒素LPSがアルツハイマー病を悪化させる病原因子であることを示しています。
――歯周病を放置することがいかに恐ろしいか、痛感させられる内容ばかりです。
これまでに挙げた疾患は一例にすぎません。糖尿病、関節リウマチ、早産、低体重児出産、NASH(非アルコール性脂肪肝炎)、クローン病、潰瘍性大腸炎、大腸がん……など、歯周病との関連が指摘されている疾患は多岐にわたります。動脈硬化と歯周病の関連についてはすでに述べていますが、循環器の外科医の中には、歯周病のコントロールが極めて悪い患者さんに対し、緊急の場合を除き、歯周病治療を行ってからでなければ、心臓病の手術を行わない医師もいるほどです。
● 歯が少ない人ほど、 栄養不足で健康維持は難しくなる
――「(歯周病で)歯を失い咀嚼が難しくなることでの栄養低下」によって、臓器の健康を左右するとも、花田教授は指摘されています。略
免疫系を賦活化させるキノコ類も少ない、魚介類も少ない、かめないから肉類も少ない、健康食として近年注目されているナッツ類は歯がなければ食べられなくて完全にアウト……。栄養バランスの分類を見ると、健康な体を維持するのに不可欠なビタミン・ミネラルが明らかに少ないのです。歯が悪いと野菜類を食べづらくなるのが関係しているのでしょう。
また、歯が悪ければ、加熱調理して軟らかくしたものしか食べられませんので、加熱に弱いビタミンCなどの摂取も少なくなります。ビタミンCは免疫力に関係し、また体の酸化(老化のこと)を抑制するビタミンです。
● 歯磨きだけでは完璧な予防にならない 午後3時ごろに口臭がしたら要注意
――全身のさまざまな疾患の要因にもなり得る歯周病を的確に予防するには、どのようにすればいいのでしょうか?
歯を磨くことは基本中の基本です。ただ歯を磨けばいいのではなく、歯と歯の間を磨くことが大事です。フロスも併用し、歯と歯の間を取るようにしてください。
ただし、歯ブラシとフロスを使い、いかに丁寧にきっちり磨いても、自力で磨けるのは9割まで。残り1割の汚れ(プラーク)は取れません。残った1割のプラークから歯周病や虫歯が発症するのです。定期的に歯科医院に通ってプラークや歯石の除去をするしかないのです。6ヵ月に一度では、歯に付着したプラークが石灰化して歯石になってしまい、歯石を削る際に歯を傷めてしまいます。プラークが歯石になる前に歯科医院に行くのが理想的であり、そのためには3ヵ月に一度の定期チェックを目安にすべきです。
さらに最近は、L8020菌やロイテリ菌といった歯の健康を維持するのに役立つ乳酸菌も見つかっています。これらを活用するのも手でしょう。
――すでに歯周病が進んでいるかどうかは、どうすればわかりますか?
歯茎から血が出る、歯が浮く感じがする、食べ物をかむと痛みを感じる、歯がグラグラする……。これらはかなり歯周病が進んでいると考えられます。すぐに歯科医院へ行くべきです。
それほどではありませんが、口腔内の健康が損なわれていることを疑った方がいいのは、息が臭い場合。簡単にチェックするには、午後3時くらいに、口に手を当てて、ハーッと息を吐いてみてください。昼食後2時間ほどで口が臭うようなら、口腔内はあまり良い状態ではないといえます。