ヒドロキシクロロキンが期待ほどの効果を示さなかった要因の1つには、投与によって実際に認められる体内薬物濃度が、著明な抗ウイルス効果を示すほどのレベルには達しないことが挙げられるという。こうした状況から、臨床用量でヒドロキシクロロキンよりも有効性の高い効果を示す薬剤を探し出す必要があった。

そこで研究チームは今回、SARS-CoV-2 Wk-521株に感染させたVeroE6/TMPRSS2細胞を用い、すでにFDA、欧州医薬品庁(EMA)、医薬品医療機器総合機構(PMDA)で承認されている27種類の抗寄生虫薬および抗原虫薬を対象にスクリーニング試験を実施することにしたという。その中で、抗マラリア薬「メフロキン」に用量依存的な抗SARS-CoV-2活性が認められ、ヒドロキシクロロキンよりも高い活性が示すことがわかったという。

さらに、VeroE6/TMPRSS2細胞での感染実験では、メフロキンの50%阻害濃度(IC50)は1.28μM、90%阻害濃度(IC90)は2.31μM、99%阻害濃度(IC99)は4.39μMであることが確かめられた。それに対してヒドロキシクロロキンのIC50は1.94μM、IC90は7.96μM、IC99は37.2μMであり、同等の抗ウイルス活性を示すために必要な濃度はメフロキンの方が低いことも示唆されたとする。

加えて、その阻害作用を調べたところ、SARS-CoV-2の吸着による細胞内への侵入を阻害することが示唆されたとのことで、SARS-CoV-2のウイルスゲノム複製過程を阻害するネルフィナビルとの併用投与を実施。その結果、異なる作用機序の2剤を併用することで、単なる加算以上の高いシナジー効果を得られることも示されたという。

なお今回の研究で作成された数理モデルからも、累積ウイルス量の明らかな減少と、ウイルス排除にかかる時間の顕著な短縮が達成でき得ることが推定されたとしており、これらの結果から、メフロキンは有望なCOVID-19治療薬候補であることが示されたとしている。そのため今後は、生体内での試験や臨床試験を通じて、さらなる有効性の検討が期待されるという。