神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.225 石母田正著作集

2024-07-08 23:56:51 | 先行研究
【コレクション 15】
 きょうは、『石母田正著作集』です。
 この本は、最初、1988年10月7日に刊行されました。その後、2000年9月6日に再刊されました。手元にはこの2回分のパンフレットがありますので、以下にこれを紹介します。

(1)まず、最初の刊行時のものです。
    
    
 この大きさはB5判大、表紙とも8ページです。観音開きになるように、中央で一回、さらに左右から織り込んでいます。
 構成は、上の表表紙と裏表紙(販売案内と装丁見本)、これを開くと、右に岩波書店の「刊行のことば」と「特色」、左に、永原啓二「編纂にあたって」と「編集委員」があります。
 そして、さらにこれを広げると4ページの見開きなります。
 このうちの右から2ページ分の上段に推薦文と下段に「石母田正略年譜」と写真(下に掲載)があります。
 そして、左2ページに「全16巻の内容」が「理論と実証の緊張関係の上に成立した石母田史学の全世を提示!」の「見出し」で掲げられています。
 構成は以上の通りです。なお、内容組方見本はありません。

 次にいくらか内容を紹介しておきましょう。
 1.まず、「刊行のことば」では次のように述べられています。
 「科学的な歴史研究の運動を積極的に推進されただけでなく、様々な分野の知識人たちと手をたずさえ、平和で民主的な社会の確立のために多くの努力を傾注された」
 「天皇制に呪縛され軍国主義に動員された戦時下の日本人の姿を見据えた目で日本の社会と国家の特質を究明するために、世界史的視野のもとで卓抜な問題意識と鋭利な分析方法と優れた表現力をもって切り開いてこられた・・・。」

 2.次に、永原啓二「編纂にあたって」では次のように述べられています。
 「氏の学問がどれほど広い影響をもたらしたかは測り知れないものがあるが、それには少なくとも3つの理由がある。一つは氏の論がつねに鋭く現代に問いかける問題意識を鮮明に示していること、二つは歴史分析の装置と論理が世界史的な視野と科学性を堅持していること、三つは歴史に対する豊かな感受性と文学的表現力を備えていること、である。」

 3.推薦者とタイトル 
   直木孝次郎(相愛大学教授・日本古代史) 不世出の歴史学者
   藤田省三(法政大学教授・日本思想史) 特有の光輝 
   網野義彦(神奈川大学短期大学部教授・日本中世史) すぐれた理論と深い洞察
   山口昌男(東京外国語大学教授・文化人類学) 歴史学と文学との豊かな対話 
 この中で、直木は「氏の学問が着想と実証にすぐれていただけでなく、氏が明確な理論を持ち、実証を通して世界史の法則の解明に貢献した」、藤田は「どの文章を採ってみても石母田氏の書かれたものには多層性があって、一つ一つの層ごとに読者をハッとさせる洞察が提出されている」、網野は「石母田氏の学問の持つ強烈な力の根源は、なによりもその一生を通じて、時代の現実に対し、つねに誠実かつきびしい緊張関係を保ちつづけた氏の生き方そのものにある」、山口は、石母田の著作について述べた後、「生涯の3人の氏の一人として私淑できたことは我が人生の幸せと思う」と述べています。

 4.石母田正略年譜
 
 
 この年譜は、先生の研究と生涯を考えるうえでたいへん興味深いですが、いまそれは措いて、石巻市の出身であること、「歴史学研究」編集長の前に出版関係に勤務されたこと、1973年に闘病生活に入られたことが注目されます。
 このうち、石巻は、前に紹介した(12月30日あたり、No.96あたり)北京構想や御料地設定に関して、神足勝記も巡回していますし、私もずいぶん歩きました。

 つぎに、『歴史学研究』は、後日紹介する予定です。きょうは省略します。

 最後に、1973年に先生の講義を、履修登録せずにモグリで、聴きに行きました。これについてちょっと書いておきます。
 100人くらい入る教室のまん前に座っていると、先生が、カバンを斜に背負って、杖を突いて入ってこられました。年譜によれば、この時はまだ還暦の頃だったことになりますが、病気のせいでしょうか、今でいえば80歳くらいの感じでした。それからすると、上の写真はずいぶん若い感じがします。
 そして、カバンを置くや否や、古代の刑罰には「笞(ち)・杖(じょう)・徒(ず)・流(る)・死(し)」がありました。しかし、このうち流罪と死罪は、庶民には関係ない。主に政敵に対するものです。庶民を殺してしまっては、生産に影響しますから、庶民は、逆らわないように、笞(むち)・杖(ぼう)で叩いて懲らしめて放免すればたりる・・・。」というようなことを説明されましたが、あとはとんと覚えていません。 

 5.写真:写っている人の3人くらいは想像がつきますが、自信がありません。
    
 
 だいぶ長くなりましたから、最初の分はこの辺で切りあげましょう。。

(2)つぎに、再刊時のものです。
    

 この大きさはB5判大、表紙とも4ページです。B4判を二つ折りした体裁です。
 構成は、上の表表紙と裏表紙(販売案内と装丁見本)、これを開くと、いちばん上に「理論と実証の緊張関係の上に成立した石母田史学の全世を提示!」の「見出し」、ついで、上3分の2に、右から、永原慶二「再刊にあたって」、「全巻の内容」、推薦文(上記の直木孝次郎・山口昌男の採録)、つぎに下3分の1に、右から、「石母田正略年譜」、「特色」があります。写真もなく、最初の刊行時のものの簡単なものなって、とくには見るべきところはありません。

(3)きょうは、石母田先生の顔がずいぶんにこやかに見えます。
 私も、ほかの皆さんと同様、ずいぶん勉強させていただきました。
 特に、『日本の古代国家』は何度もハッとさせられ、圧巻でしたが、『中世的世界の形成』を読んだときは、目の前で歴史がググっと動くのを感じました。学恩に感謝です。

   

(4)恩師の宇佐美誠次郎先生は、しばしば「学問は、モードやフィーリングでやってはならない」というように言われましたが、おしゃれどころか、金儲けのためにやっているのを見ます。最近は、原爆の開発者のことが話題になりましたが、学問をすることが人を苦しめることになるのでは、本末転倒です。

(5)きのうの都知事選の結果、だんだんマスコミの対応などもみえ始めてきました。
 選挙も、ムードでやっているうちは国民の幸福につながる結果にはなりにくいですね。立候補する人の見識、選挙民の政治認識の質や高さ、これが決定的に重要です。
 ウソつき・思いつき・キテレツでなく、そういうおちゃらかしでなく、まじめに取り組むことをよしとする目をどう作っていくか、こんどの選挙の重要な教訓と思います。
 NHKはおかしい、それはわかっています。でも全部ではない。どこがおかしいかをきちんと批判して、地道に直していくのが当然。
 奇襲は、戦争を引き起こす、真珠湾攻撃の思想。断じて許せません。

 では。きょうは暑かったけど、さるすべりが赤く燃えてました。
    



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