神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.227 ハーバード・ノーマン全集

2024-07-10 23:35:20 | 先行研究
【コレクション 17】
(1)小さいころから、よく本屋に行きました。
 古書店でも普通の書店でも入って背表紙を見て、おもしろそうな本、持っていたくなる本はないかと、それを期待して入ってひとわたり品定めをして、ごくたまには買うというくらいの子供でした。
 その時もいまも、本を読むのはメンドウ。読みたいのでなく、見ていたいというだけ。そこは変わっていないようです。
 群馬県藤岡市立藤岡小学校(のちに第1小学校)の、多分2年生の時、バスの発車までに時間があったので、5丁目にあった古本屋(貸本屋も兼ねていたかもしれません)に興味をもって入ったことがあります。
 店は、昔の上半分ガラスの重い引き戸式の入り口で、中をしばらく覗いてから、ゴロゴロと音を立てながら開けて入りました。中はまだ江戸時代の帳場の雰囲気で、そこにいまの私と同じくらいのジイサンが座って店番をしていました。
 入って、読めもしないのに、ジイサンの前の本をひとわたり見て、ジイサンと目が合うのを避けて、右にしつらえられた棚の方へ目をやりました。そこも小学2年生に読める本などあろうはずはありませんでしたが、だまって棚の上の方の本を見ていると、後ろから言いました。
 「一番上の本、読める? 読めればあげるよ。」
 それで、挑戦しましたが、1冊目から読めませんでした。
 気まずくなり、すぐに出てきてしまいましたが、だいぶ後になって、あのとき読めなかった字は「埋」だ、と確信しました。

(2)きょうは、昨日出てきたハーバード・ノーマンの「全集』です。
 ノーマンは、カナダ大使館員でしたが、ソ連をスパイと疑われて悩み、1956年に47歳という若さで自殺してしまいます。大窪愿二さんは、約20年かけて遺稿を翻訳整理されて刊行にこぎつけました。それが次のパンフレットです。
     

 このパンフレットは、B5判大、表紙とも6ページです。
 1枚の用紙を3等分して、まず左から織り込み、次に右から折り込むと上のようになります。
 
 内容は、次のようになっています。
 1ページ表紙
 2~4ぺージが見開きでは、2~3ページの下3分の1に次の「全4巻の内容」が紹介されています。
   第1巻 日本における近代国家の成立 
   第2巻 日本政治の封建的背景 
   第3巻 安藤昌益 
   第4巻 日本の兵士と農民・歴史随想
 次に、上3分の2を使って、次の5氏の「推薦のことば」が紹介されています。
   桑原武夫 クリオの目で知人
   中野好夫 忘れ得ぬ豊かな思い出
   丸山真男 逝きし者も近し
   遠山茂樹 本来の歴史学とは何か
   ジョン・ダウワー ノーマンよ 蘇えれ
 そして、4ページ目の上4分の3に組方見本、下4分の1に次の略年譜があります。
 
 
 つづいて、5ページ目の上4分の3に「刊行のことば」、下4分の1に次の「編者のことば」があります。
    

 この、前段には編者の思いが語られていて、後段からは、その達成感を読み取ることができます。これは、山に登った時に感じるものと同じです。ぜひ、ゆっくりと読んでみてください。
 なお、岩波書店は「刊行のことば」で、ノーマンについて次のように評価しています。
 「歴史の女神であるクリオは、片手に書物を片手に楽器を持ち、その顔は清く住んでもの思わしげなさまを示しているという。歴史学が文明を進歩させるための学問であるとの確信に立ち、歴史の価値について譲ることのない信条を持ち続けたE・ハーバード・ノーマンは、その生涯の生き方において、「クリオの化身」と呼ぶにふさわしい人であった。」

 最後の6ページ目には、「本全集の特色」・装丁見本・発売予定が記されています。
 発売は1977年4月27日からと記されています。
 
(3)私は、『資本論』のゼミにいたので、ノーマンをいつから、どのくらい読んだか、記憶がはっきりしませんが、『ノーマン全集』が刊行された1977年4月に立教大学の修士課程に入学して、日本経済思想史の逆井孝仁先生の授業に出席できるようになりましたから、すでに岩波新書などでノーマンを読んでいたとは思いますが、『全集』刊行が話題になって、とくに安藤昌益、その前に三浦梅園にも関心をもっていましたから、それまでよりもやや余計に読むようになったものと思われます。
 しかし、御料地・御料林・皇室財政問題に向かうようになってからは、だいぶ遠ざかってしまいましたので、この頃の人がどのくらい研究しているのかは不明ですが、きのう・きょうと、棚から取り出して読み返しました。やはり優れた人でした。
 では。

   
    西の空
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No.226 安藤昌益全集

2024-07-10 00:05:51 | 先行研究
【コレクション 16】
 毎日、夕食後にパンフレットの箱を開けて、きょうはどれにしようかと見ます。前にはそういうことはありませんでしたが、ここのところ、習慣のようになってきました。前日に、明日はこれにしようと決めておいてあるにもかかわらず、やはり見ます。すると、知らず知らずに読みいって、あっという間に1~2時間すぎてしまいます。「耳学問」ということがありますが、これは「パンフレット学問」とでもいったらよいでしょうか。
 みなさんに現物をそのまま全部をお見せできなくて残念ですから、参考のためにいくらかの文章を書くようにしていますが、それでもなかなか現物を手に取ったようなわけにはいかないものですから、とりあえずは、花の写真の時と同様に、見た目を楽しんでいただければそれでよいかと思っています。そして、本屋に行ったとき、お目当ての本だけでなく、どんなものが置かれているか注意てみてください。楽しいものです。大事なのは、自分の目、関心です。

(1)きょうは、『安藤全集』です。
   

 この全集は、書き下し・現代語訳が全16巻・別巻1冊、復刻編・影印版が全5巻、あわせて、全21巻・別巻1からなっています。これが、昭和61(1986)年10月に農山漁村文化協会(農文協)から発行されました。
 パンフレットの大きさはB5判大、表紙とも16ページですから、かなり読みごたえがありますが、全体の構成は次のようになっています。
 1.表表紙(上記) ただし、右上の「昭和62年度 毎日出版文化賞「特別賞」受賞作品」とある箇所は、このパンフレット作成後に受賞が決まったようで、貼付物です。
 2.2~7ページは、農山漁村協会による内容紹介です。この部分の一部は下の『安藤昌益特集』に利用されていますkら、読めそうなところを読んでみてください。
 3.全11巻の構成。
 4.9~13ページは、内容解説。
 5.14~15ページは組方見本。
 6.裏表紙は販売宣伝と装丁見本。

 以上ですが、この全集の画期的なところが、表表紙の中央上に「出版史上初めての全巻復刻・全巻書下し・全巻現代語訳・注解・解説という・・・編集」にあることが書かれています。とはいえ、これを紹介できませんから、代わりに『安藤昌益特集』という小新聞の一部を紹介します。

 
(2)『安藤昌益特集』(パンフレットの2~7ページの一部が掲載されています。) 

  『安藤昌益全集 一』に挿入されていた宣伝紙です。

(3)安藤昌益の名は、すでに少数の人に知られていたということですが、戦後、ハーバード・ノーマン(カナダ人)による研究・紹介で知られるようになりました。わたしもノーマンの次の著作を通して知りました。
 『忘れられた思想家 ―安藤昌益のことー 』(全二冊、大窪愿二〔おおくぼげんじ〕訳、岩波新書、昭和44(1969)年12月)
 この本は、たいがいの図書館にありますから、これは措いて、別の一冊を紹介しましょう。

(4)『安藤昌益』(八戸市立図書館編集、伊吉書院〔八戸市〕刊、昭和49(1974)年6月)
      

 これは、巻頭に司馬遼太郎「昌益雑感」があるほか、「安藤昌益研究略史」や「安藤昌益関係資料目録」のほか、昌益に関する研究や回顧が編集されていて、すでに刊行から半世紀が経過しているものの貴重なものと思われます。
 
    
     チョウセンゴヨウマツ(山梨大学で)

(5)戦いすんで、その分析が始まりました。
 どんな分析結果になろうと、 えばる人はダメです。 ツッケンドンな人はダメです。 ウソを言う人はダメです。 率直でない人はダメです。ひとことで、傲慢な人はダメです。
 ただの個人ならば、「あいつはバカだ」、「ああいうのはキライだ」で済みますが、政治家は違います。ひとたび当選すれば、権力をもちます。その人がわがままを言えば、多くの人がおろおろするハメになります。
 権力は、必ずではありませんが、しばしば腐敗します。腐敗するのは、もともと傲慢だからか、あとから、うまい汁を吸って傲慢になるからです。
 まず、もともと傲慢な人を代表に選ばないこと。不適格者だから。

 では。
    

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