神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.235 大塚金之助

2024-07-18 21:34:11 | 文書・文献
 きょうは13時からNHKBSで映画『敦煌』を見ました。壮大なドラマと思いました。
 しかし、中国映画を観たときに感じる「雄大さ」や「時間の長さ」の違い、これは文化の違いからいってある意味で「退屈さ」にもなりかねないものですが、それが感じられず、よくいえばテンポがよい、逆に言えば少し軽いと思われました

【コレクション 24】
(1)さて、きのう果たせなかった「大塚金之助著作集」のパンフレットの紹介にさっそく入ります。次のものです。
   

 これは、ムリすれば「格調高いパンフレット」ということも可能かもしれませんが、ちょっと殺風景ですね。2ページ目に写真がありますから、それを紹介しましょう。
   

 いい写真ですね。これで行けます。
 大塚金之助先生は、No.233で紹介した『日本資本主義発達史講座』の刊行に携わった4人のうちの一人です。その関係でお名前は当時の学生にも知られていました。しかし、先生は、明治25(1892)年5月生まれで、1977年5月に85歳で亡くなられてしまいましたから、1977年に大学院に入学した私は、お会いする機会がありませんでした。
 もっとも、先生があと2~3年長く存命であったなら、直接お会いする機会があったかもしれません。これは、大塚先生が昭和49年から日本・ドイツ民主共和国友好協会の会長をされていて、大塚先生亡き後、恩師の宇佐美誠次郎先生が会長をされましたので、その関係から、私もお会いできる可能性は十分ありました。

(2)パンフレットは、B5判大、表紙とも12㌻です。構成は次のようになっています。
 1・2㌻ 上掲 表紙 写真
 3㌻ 岩波書店 刊行のことば 
 4㌻ 都築忠七 編集にあたって
 5㌻ 増田四郎 一貫して時流におもねぬきびしさ
    杉原四郎 抵抗としての集書と珠玉の文章
 6㌻ 千田是也 人間の生存の土台をきわめる
    長洲一二 真実と人間解放への情熱
 7㌻ 寸描 佐々弘雄 同時代人たち
       伊藤 整 小説「破綻」から
       久保田正文 歌人・大塚金之助
 7~9㌻ 上3分の2に 全10巻の内容
      下3分の1に 大塚金之助先生略年譜
 10㌻ 組見本
 11㌻ 上3分の2に 大塚先生の写真
     下3分の1に 特色
 12㌻ 装丁見本
     刊行案内 四六判 約500㌻ 価格4600~5000円
          1980年5月から隔月配本。
 
(3)上記の推薦者のどれもここに紹介したいほどのものですが、大塚先生の教えを受けたという増田四郎さんの推薦文の一部を紹介します。
「永遠の青年のような純粋さと情熱をもって、学問と思想の自由をまもり、受難の一時期にも屈せず黙々と喪われゆく貴重な資料・文献の蒐集・渉猟につとめられた大塚先生の生き方は、同じ社会科学の研究に従事する私たちにとって、到底追随を許さぬ大きな驚異である。世に問われた著作は、その分量において必ずしも多いとはいえないが、社会思想史や文献解題についての珠玉の業績をはじめ、多方面に亘っての見のがすことのできぬ文章の随所に、にじみ出ている先生の基本的な姿勢は、一貫して時流におもねぬきびしさと、底知れぬ温かいヒューマニズムであったように思われてならない。」

 大塚先生は、治安維持法によって13年間の獄中生活を強いられました。そういう不当なことに屈しない強い信念に貫かれていたことはほかの推薦者も多かれ少なかれ述べています。そのことも含めて、大塚先生の人柄については、全10巻の解説者も至る所で述べています。ぜひ、そちらを読んでいただきたいと思います。
 私は、当時のドイツ民主共和国のライプツィヒ市にあったカール・マルクス大学(現ライプツィヒ大学)に留学しましたから、その縁で『大塚金之助著作集』の刊行を待って順々に拝読しました。もう40年前のことになりますが、本当に新鮮でした。

(4)それから、大塚先生のものでは、この著作集の第7巻にあたる『ある社会科学者の遍歴』も単独で出ています。これは比較的知られたものですので、読まれた方も多いと思います。


(5)さらに、本著作集第9巻と重なりますが、大塚先生は歌人で、アララギ派に属して島木赤彦の指導を受けた時期もありました。それに関しての歌集を出版されたことがあるようですが、いま手元に次の歌集があります。これは歌集の箱です。すこしでも読めるように、できるだけ大きくしておきます。
   
     新評論 1979年5月刊。四六判。365㌻。
 
 この中から、2つ紹介しましょう。
 まず、 
    あのやさしい
    天皇の名において
    13年、
    ぼくが追放されたとは
    信じられまい。

 ほんとうにそうです。
 もう一つ、
    鉄窓で見おぼえのある
    秩父連邦の
    斜面にひかる雪はなつかしい。

 どこの辺りが見えたのでしょうか。
 
 このほかの業績として、マーシャルの『経済学原理』4巻(改造社、昭和3(1928)年)などもありますが、こちらは興味ある方はどうぞ。
 きょうはここまでにします。 

    

  

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« No.234 中神書林 | トップ | No.236 アンナ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

文書・文献」カテゴリの最新記事