神足勝記を追って

「御料地の地籍を確定した神足勝記」を起点として「戦前の天皇・皇室・宮内省の財政について」のあれこれをとりあげる

No.207 『言論』創刊号

2024-06-20 23:46:07 | 余録
(1)先日の防災訓練の日、『懐古録』(地質調査所)のほかにも、自分でも忘れていたものが、いくらか棚から出てきました。たとえば、次のものせす。

    

 これは、昭和21(1946)年1月20日付けで高山書院から発行されました。大きさはA5判です。
 私はこれを古書市で手に入れたはずですが、その経緯はにわかにはわかりません。
 なお、購入時から汚損防止のための表紙カバー(ハトロン紙?)がぴっちりとついていて、はずすことができないため見づらいですが、ようすは十分わかると思われます。

(2)これを買った理由は、次の目次を見るとわかります。

   

 筆者を見ると、戦後の論壇をリードした人もみえます。山本安英もみえて興味を引かれますが、私がこれを買った理由は、中央の辺りに「皇室財産」とあるのが見えたからです。
 筆者「内野壮児」については、記事の末尾に「筆者・日本共産党宣伝部員」とありました。

(3)記事はA5判3ページ、各ページは3段に組まれて、3・3・2段、計8段分です。
 また、記事の文章は7段落からなっています。以下に各段落の要点〔見出し程度〕を簡単に上げることにしましょう。
 第1段落
 昭和20年11月1日、各新聞が皇室財産の内容について、政府が報告したものについてのマッカーサー司令部の発表を掲載した。1925年の治安維持法で「国体の変革」、「私有財産制度の変革」が取り締まりの対象になって以降、『帝国統計年鑑』でも皇室財産の統計は削られてわわからなくなったが、これによって、大地主、大資本家であったことが判明した。
 第2段落
 発表された評価額は過小である。
 第3段落 
 皇室財産はどうして築きあげられたか。
 第4段落 
 皇室は、実質上の地代を懐中に入れる、寄生的な封建的地主階級の巨頭である。
 第5段落 
 利札切の寄生的資本家である。戦時利得者の一人である。
 第6段落 寄生的
 ようするに、天皇は日本最大の地主であり、寄生的資本閥の一人である。
 第7段落 
 この問題は、天皇の政治責任、天皇制存廃問題と結びついている。国民生活の危機を救う一つの手段として使用することも必要である。

(4)雑駁な要約ですが、とりあえずのものです。とはいえ、よく見ると、その後の意見の原型とも思えます。批判・検討すべきところがありますが、見方としては、汲むべきところもあるのではないかと思います。
 マッカーサー司令部の発表以後に、これより早い「皇室財産」についての記事発表があったかどうか、まだ探り当てられていませんが、あるいは、この記事が戦後の皇室財産問題についての走りとなったのかもしれません。いまのところは・・・、そう見ています。

(5)こういうものも折々に集めてはあるので、いずれ纏めたいとは思っています。

 では。

    


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