桑炭会 島根県伝統の炭焼き 

松江市八雲町で伝統的な八名窯を継承し炭焼き、販売をしています。
メインテーマは自然環境保全。

黒炭の診断11

2020年08月11日 09時03分35秒 | 活動報告

(1) 炭窯各部の調和がとれていること

  炭窯は長い間の経験に基づいて窯の大きさに応じ加熱装置、排煙装置、炭化室そ

  の他各部の寸法が定められている。優良窯といってもただ形だけを真似て作っ

   たのでは、その性能は望めない。各部の寸法の調和の取れていて立地条件や炭材

   の種類に適合した構造のもので余り手数のかからないものでなければならない。

(2) よい窯土を充分使うこと

  窯土が悪いと天井を落としたりまた大きな割れ目ができて失熱し、炭質が悪く

  なるので、砂の混じった耐火性のものを選び充分使うことが必要である。特に天

   井には古窯の焼土を混ぜるがよい。窯土を改良するには焼土を混ぜるか或いは

   石灰、セメントを3窯につき4~5袋位混ぜる。

(3) 防湿装置を完全にすること

  窯底における炭化は最後に行われその上、窯底や窯壁には地下水や雨水が浸透

   し易い未炭化を生じ、或いは炭化に長時間かかって灰化を起こし易い。そこで完

   然に防湿装置を作って湿気の浸透を遮断し、窯底の冷えを防ぎ熱の循環をよく

   することが大切である。

(4) 筑窯を丁寧に行うこと

 粗雑に作ると天井や窯壁に割目ができて失熱したり、窯形や各部の歪または片側

  からの浸水、岩石の存在、土質の不均一等の影響によって方焼け、未炭化、灰化

  等の障害がおきる。そこで窯形が変形したり均整を欠かないように丁寧に筑窯し、

  充分に叩き締めて仕上げることが大切である。

(5) 排煙口掛石下端は窯底煽情りやや低くすること

 排煙口掛石の下端が窯底線上より高いと、炭材下部における熱ガスの循環が悪く

  未炭化ができがちで、これを無くそうとして精錬を続けると灰化を起こすことに

  なる。したがって排煙口掛石下端の位置は、窯底線上と一直線化2~3寸下げ、炭

  材下部における熱ガスの循環をよくすることが必要である。

(6) 窯壁は余り高くしないこと

  窯壁が高すぎると上下の温度差が著しく未炭化ができがちで、炭質も悪く無理を

  すると灰化の原因になる。したがって窯壁はなるべく低くし2尺5寸~3尺くら

  いが望ましい。

(7) 炭材の気乾を適度にすること

 炭材は伐採直後のものよりも1ヵ月くらい経過したものが樹皮の付着もよく品

  質も収炭率もよい。従って炭材は少なくとも2~3窯分を準備しておくことが必

  要である。

(8) 炭材の調整詰込みを入念に行うこと

 炭材は曲がりや節などに注意して丁寧に木取を行い、なるべく小割りとして炭質

  の向上と資源の節約に心がけることが必要である。また炭材は末口を下にし熱ガ

  スの循環を良くし良質のものを窯奥へ不良のものを窯口部とし垂直に均整に詰

  込み、割材は心材部を窯奥に向ける。なお、枝木は炭化の熱源となり立炭材の保

 護ともなるから丁寧に詰込むことが必要である。

(9) 窯内乾燥を充分に行うこと

 炭材の窯内乾燥を充分行わないで点火すると、炭化に弱り補熱を行わなければな

 らなくなって木炭が軽軟となり収炭率を悪くする。窯内乾燥は煙道口を僅かに開

 ける程度とし、窯口は通風口を設けて閉じ、熱を外部へ漏らさずに徐々に焚火し、

 急激に熱しないように排煙温度60℃くらいで2~3昼夜行えば、点火に失敗する

 こともなく順調な炭化を続け緊った木炭が得られる。

(10) 点火操作を誤らないこと

 排煙温度が70℃位になると、特に焚火に注意し弱めないように一様に送熱するこ

 とが大切である。もし焚火を弱めると、空気はそのまま窯内に入って枝木を燃 

 焼させて炭質を悪くしまた、灰化の原因になる。

(11)  炭材化の調節を誤らないこと

 炭窯において通風口は加減して窯内でできる可燃ガスを燃やす程度の通風を行

 って炭化を進行させるが、炭化の径路が炭材の上方から下方へ進み、しかも同一

 ヶ所に通風されるので過度の通風をすれば、可燃ガスのみでは熱が不足して、で

 きた木炭を燃焼させることになって炭質を悪くし、ついには灰化させることにな

 る。従って可燃ガスを燃焼させるには必要な空気を送る通風排煙の調節をするこ

 とが大切である。

(12) 精錬時期を誤らず充分行うこと

 木炭の品質は精錬のかけ方、度合いによって著しく左右されるもので、窯内に 

 おける精錬の状況は、縦中心線の前部が最も高く、それより逐次窯奥及び左右窯

 壁際に進むに従って低くなり、また炭材の上部が高く次第に下方に向かって低く

 なる傾向が認められる。精錬はむやみに窯内温度を上げるばかりでは、その目的

 は達しられなく、これは窯口付近の中心部は精錬度はあっても通風口に近いため

 炭化中、常に強い火熱にされ炭質は軽軟になって硬度は低くなり、割目は多く

 なることを見ても分かる。従って急炭化を行わず徐々になるべく低い温度で炭化

 させ、次第に上昇させて高温にしてこそ精錬の意義があるものである。要する

 に製炭法の改善を図るには、薪炭林の改良を行うこと。よい炭窯を作ること。合

 理的な操作を行うことが必要で、この三要素の何れかが欠けても、その目的を達

 することは出来ない。特に炭素は連続製炭して窯の保留熱を利用すれば、収炭率

 を著しく増やすと共に炭質を向上させるものであるから、窯を休ませず作業す

 るように製炭の経営を改善することが必要で、もし窯を休ませて作業するようで

 はいかなる改良窯といえども充分にその性能を発揮することはできないもので

 ある。

この資料は会員のご尊父が所有したおられたものを提供してもらった。参考になる

所を転記し小冊子にして会員に配布する。


墓参りも様変わり

2020年08月10日 18時22分49秒 | その他

作日、実家の墓掃除に出かけた。八雲町の土地柄言えば外様の身分だか

墓も町内ではない。この辺りの墓掃除、墓参りはよく見ており様子

はわかる。ところが実家の墓と言えば少子高齢化、核家族の煽りを喰い

『墓の過疎化』『墓の限界集落』なる言葉も生まれそうになってきた。

昔は盆前の日曜日など親子連れ、一家連れで墓掃除に出かけハカバは賑

やかだった。ところが昨今は彼岸であろうが盆であろうが賑やかとはほど遠

く、年寄りが痛い身体を庇いながらコットンコットン、歩くのは叶わんとタクシー

で山門横付け、それも超疎らのこと。

墓場は墓終いにより歯抜け状態。これに加えてコロナ騒動により帰省云々で

足は更に遠のくことになる。

ならばと墓参りの代行業者が出現、自治体も負けじと『ふるさと納税』の返礼

品に墓掃除を用意している。一番驚くのはご主人様たちであろう。そろそろ

身内がやって来て身辺をきれいにしてくれるだろうと心待ちにしていたら見も

らぬ人たちが来て勝手に拝んで帰っていくのだから。

お上のお達しによれば、これからは何でも『新しい生活様式』をキーワードにし

て変えていくのだとか。

誰もが何れかの時期にあちらの世界に行くことになる。通信の世界は新しい時

代を拓く5Gで米中のつばぜり合いが激しい。6G・7Gと進んでいった時、革新

な技術が開発されこの世とハカバの世界の通信ができるようになっているか

もしれない。年寄りは乗り遅れるなとまたまたお上から御触れがでるかも。


黒炭の診断10

2020年08月10日 08時00分20秒 | 活動報告

結     び

 製炭において最も苦心することは、未炭化、収炭率、樹皮付着、縦横割れ、緊(し

ま)り等の問題である。これ等のことを解決していくには先ず木炭がどうしてでき

るのか、その訳を知っておくことが必要である。

 第一に炭窯内部の温度は、天井部と窯底部とでは大変な違いがある。炭窯の内部

で炭材は第1図のような経過をとって木炭になる。即ち排煙温度が約80℃になる

と、窯の内部は枝木部が約450℃になって枝木が炭化し、立炭材は頭部が約300℃に

なって上部が僅かに炭化し始めかけ、自発炭化に移る。しかし立炭材は下方にいく

に従って温度が低く、下部は約50℃しかなくて排煙温度よりも低いものである。そ

して排煙温度が250℃くらいになると下部に約2~3%のみ炭化物を残して炭化が終

わりに近づき、約300℃になってほぼ炭化を終わり、収炭率は約20%余りとなるがま

だ揮発物の多いものである。この時期ごろから精錬を行うと、排煙温度は350~

400℃となり、立炭材の上部付近は700~800℃に昇って木炭の純度が高まり、収炭

率は18%程度となって硬度も上がり家庭用として適当なものになるが、立炭材の下

部の温度は極めて低く、炭化の後期排煙温度が上昇するころようやく昇り始めてこ

れを追抜き500℃内外で消火となる。

 このように炭窯においては、窯底部の温度は天井部に比べて極めて低く、しかも

下方の部分は高温に保たれている時間も極めて短いので、できた木炭の頭部は精錬

も充分で硬度もあるが、下部は精錬の不充分な軟らかい木炭になりがちである。こ

のことをよく知れば、窯底の湿気を除き、熱を平均に循環させて上下の温度差を少

なくすればよいということが分かるはずで、これがよい炭を作るもとである。

 第二に急炭化すれば収炭率を少なくする。炭化の速さは通風排煙の調節操作によ

って違ってくるもので、初めから高い温度を与えて最後まで続けると、炭化が速や

かに行われて発熱反応による分解は激しくなり、生成した生産物は高温部に触れて

第二次分解を起こし、木ガスの発生が多くなって木炭、木酢液、酢酸、木精、木タ

ール等の収得量を少なくする。これに反して徐々に炭化を行ったときには、木ガス

の量を減じ木炭その他の生産物は多くなってくる。このように急炭化したときと

徐々に炭化したときとを比べると、生産物に著しい差ができる。特に収炭率におい

ては約7%も差ができ、収量にすると約20%以上も損になることが分かる。そして炭

質も緊りがなく割れ目が入って悪くなるので、炭化はできるだけ徐々に行うこと

が必要である。(第2図)

 第三に炭化温度が高くなるに従って炭質を向上される。一般に炭化温度が昇るに

連れて、木炭に含まれている酸素及び水素の量が少なくなって炭素の量が多くなっ

てくる。特に400℃~500℃になると著しく酸素、水素の含有量を減少し収炭率が少

なくなる。これは温度が500℃内外になると未炭化分がなくなって、いわゆる木炭

らしくなりその後、酸素、水素を徐々に揮散して僅かに収量を減じつつ炭素に富む

ものとなって品質が向上されるが800℃以上になるとその差は極めて少なくなる。

(第3図)

 これ等のことをよく理解すれば、どうして炭窯をつくり操作をしたらよいかとい

うことが分かり、次の製炭法改良の十二則が如何に必要なことであるかが分かろう。


黒炭の診断9

2020年08月09日 08時00分00秒 | 活動報告

 3.木炭に横割れがあって折れる場合

      (1) 窯壁が高すぎるとき

   (2) 窯口および煙道口に風が強く当たるとき

     (3) 炭化の初期に急炭化したとき

     (4) 加熱が不足で炭化が弱り補熱したとき

     (5) 炭化中、煙道口の調節を過ったとき

  (6) 精錬時期の初期に急激な操作をしたとき

 4.表面の色択が悪く木炭が折れている場合

    (1) 精錬操作を過ったとき

    (2) 樹種によっては、折れ易くまた色沢不良のものもある

  5.色沢はよいがしまりがなく軽い場合

    (1) 炭材の気乾が過ぎたとき

    (2) 急炭化したとき

 6.木炭全体が赤褐色で軽軟な場合

    (1) 防湿装置の不完全なとき

    (2) 気乾の過ぎた炭材で精錬不足のとき

    (3) 点火が難しく点火すれば急炭化するとき

 7.木炭の表面にトカゲ色の付いている場合

    (1) 煙通の引きの弱いとき

    (2) 炭化中、煙道口の調節が小さく炭化が長引いたとき

    (3) 早期精錬でガスの燃焼が急激だったとき

 8.木炭の表面の色沢はよいが皮肌が褐色を帯びている場合

    (1) 精錬不足のとき

    (2) 煙道の引きの強い窯にでき易い

    (3) 急炭化したとき

    (4) 防湿装置の不完全なとき

 9.折れ口が貝殻状でなく音響が悪い場合

    (1) 高温急炭化したとき

    (2) 窯壁や天井の割れ目から熱が逃げるとき

    (3) 防湿装置の不完全なとき

    (4) 精錬不足のとき

10.金属音または磁器音を発しない場合

    (1) 急炭化したとき

    (2) 精錬不足のとき

11.木炭の頭部が割れまた横折れしている場合

    (1) 窯内乾燥が急激なとき

    (2) 点火してから間もなく炭化が弱り補熱したとき

    (3) 着火後の操作を過ったとき

12.木炭の頭部に亀甲型の傷がついている場合

    (1) 窯内乾燥不足のものに急激に点火したとき枝木から炭材へ移る際に

    温度が下がり再び補熱したとき

   (2) 炭化の初期に煙道または通風口の操作を早まり炭化を中止したとき

    (3) 煙道の引きが強いとき


黒炭の診断8

2020年08月08日 08時00分00秒 | 活動報告

19.木炭下部が全体に不完全な場合

    (1) 防湿装置の不完全なとき

    (2) 精錬不足であったとき

    (3) 窯底の勾配が極端に急なとき

    (4) 窯壁の高いとき

    (5) 排煙口の位置が高過ぎるとき

    (6) 精錬操作を誤ったとき

    参考

     一旦築いた炭窯は防湿装置を充分に改造できないから窯の周囲を窯底

     より深く溝を掘り廻すこと。窯底が荒れている場合は粘土を入れ替えて

     修理すること

20.窯口部の木炭上部が灰化して下部に未炭化のある場合

    (1) 天井が奥高で窯底勾配が極度に急なとき

    (2) 点火のとき口焚が不足で炭化時間が長引いたとき

    (3) 点火後、煙道口の制限が過ぎ炭化が弱まって長引いたとき

    (4) 窯が冷却しているとき

    (5) 防湿装置の不完全なとき

21.出炭のとき、火が残っている場合

    (1) 窯の密閉不完全なとき

  (2) 天井や窯壁または窯口等に空隙があるとき

    (3) 防湿装置の不完全なとき

    (4) 礫の多い所に筑窯したとき

    (5) 腐朽した炭材を詰め込んだとき

〔3〕木炭を見ての診断

 1.樹皮が付着していない場合

    (1) 炭材の気乾及び窯内乾燥が不充分なとき

    (2) 急炭化したとき

    参考

     炭材の気乾は樹種、樹齢、季節によって異なるが伐採したままで10日間

     くらい気乾するか、又は玉切りして2窯分くらい溜めて乾燥すること

     窯内乾燥は徐々に温度が上昇するように操作して2~3昼夜くらいで充

     分乾燥を行い低温緩炭化に操作すること

 2.縦割れが大きく樹皮面まで出ている場合

    (1) 窯内乾燥を急激に行ったとき

    (2) 急炭化したとき

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