宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和二年(二)
花過ぎてみなかみ月の涼しけれ
野や水や卯の花腐し霽れにけり
浜砂をあるいて潜る茅の輪かな
朴わか葉日もれながれて古畳
まひまひの雨の一粒知りにけり
夏の蝶ゆきずりびとに失せにけり
瀧の宮明け易き燈の継がれけり
水の底米がこぼれて朝の虫
砧盤虫のあがりてひげ長し
風鐸に落つるは霧の雫かな
蜻蛉に冬が来るなる山雨かな
草枯れの広きはてなる鳥あがる
かれくさの岬に立ちて水の天
枯草のなかにも萌ゆる浦の日に
「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています