早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和五年

2018-01-24 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集


宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和五年

梅遅く渡舟の水のにごり哉
野の寒さたんぽゝ咲いて雲遠し
汐干宿に泊まってしまひ海黒き
夏の夜は川上遠く明けにけり
葛餅を食って原稿せはしけれ
鉱山のむかしに廃れ夏日かな
ことし竹山に蝙蝠飛びにけり蝙蝠こうもり
月見艸無風いよいよ更けにけり
蛍来て町空飛ぶや祭月
蚊帳くぐる娘が翌日の祭髪
噴水の虹のむかふの娘たち
棲むところ故郷として盆の月
蜻蛉のさやと翅音や顔を行く
家でする丸刈り頭秋の水
庭すみや実におくれたる草の咲く

「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています

宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和四年(二)

2018-01-24 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集


宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和四年(二)

邸内ひっそりと藤のつぼみかな
しら百合を㡡のそとなる夜更けかな
空梅雨にちりしくものや女貞花
ふるさとにまこと帰りぬ㡡
早乙女やこもこも立ちてまぶしがる
花氷女は作りほぐろかな

     祇園会外三句
月鉾の月を見上げて京は照る
帰り着き鉾くずされんずる急囃子
鉾町やとある凹みに甘酒屋

     比叡山延暦寺
大満堂の晝の提灯風涼し
乙訓の藪の小すそに蚊火の家 
送行を薄茅萓のへだてけり 

秋の聲舟はものいふ燈の合図
庭下駄の日あたるを履くや野分あと
橡餅や霧につゝまれほろ苦し 橡 とち
提灯が岸に見ていく崩れ築
初冬や窓辺ひと往く傘あかり
ふるさとはなににも嬉れし橋の霜

「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています


宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和四年(一)  

2018-01-24 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集


宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和四年(一)    

   新春賀詠
初雞のあとに露子る竹の闇
澄むほどに鳥わたるなり吉書揚げ
水鳥を朝に見なれて松の内
街を出て星にぎやかや春近く
蓬々の一徑梅に遠きかな
如月の浜小やしろの鈴を振る
たかたかと干衣を揚げて東風を見る
くちびるに冷めたき葉なる椿もち
春の夜の一方海のひかり哉
行く雁やうつろとゐたる𠘨おしまづき
十三参り花のうしろの藪さむき
蝶の息草にかげなしかげのあり
アマリリス狐のやうな犬飼ひて
口開いて雨を食ひける烏の子
おばしまや扇をかざす花の日に

「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています

宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和三年(二)

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宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和三年(二)

  黄梅院にて
談するに竹に風して寺涼し
玉ほどく芭蕉や風の星近く
汐のいろ鱚の日ぐれとなりにけり
秋の蝶大翅を花にたてにけり
旅の肩つよくぞあたる秋日かな
みのむしを夕ぐれびとのゆびさしむ

  大垣藩祖戸田鉄を祀る常磐神社の祭礼に詣づ
月の輪の大馬印秋うらゝ
  山崎宗鑑出生の地江州志那を訪ふ
夕月や志那さゝ波の古みなと
  源氏早萩の巻の枕詞を藉りて
しなてるや湖のしら壁秋さるゝ
草紅葉段ともつかず石のある
池水に柳ちるなり燈のかぎり
冬近きものの芙蓉の實枯かな

   大典奉祝 三句
あめつちにすめらみくにの秋たれり
御日はれてわがくにのはな菊のはな
祝ぎまつり伏す我等にも草錦
芭蕉蕪村みな冬の忌の庭落葉
臥てわれの鼻にあつまる冬燈かな
石に乗る波のしらけや日短き

「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています

宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和三年(一)

2018-01-24 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集


宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和三年(一)

  年頭嘉儀三句
元朝や天のいろどり地のしらべ
初空やわすれわすれて雪の降る
井萃水梅山茶花のかたはらに
  寒中小景
枯桐に鳥来て去って日南かな
無花果の寒さはくねり水のかげ
霧の燈の寒ゆるみたる河の面
大寒や壷中の金魚水染めて
ちらばらに枯木は若し春嵐
町ひろく春のある日のかすれ雨
ちらばらに枯木は若し春嵐
花の中深きに仰ぐ空のいろ
鳥は地に水にかけりて花旦
水の辺に巌たち櫻月夜かな
うしろ手に藤のひとふさ沙彌たてり
鹿の子ゆく林の隅の水照りを
椎の花楠の若葉に正成忌
鳥鳴いて雨中あふるヽ泉かな
草を出でヽ露ふるふ鶏夏旦
ひろげたる白扇うつる机の上
山暮れて青さは蚊帳の燈りけり
夏川の谺をわたる蝶々かな
大徳寺塔中へ行く梅雨の傘
山暮れて青さは蚊帳の燈りけり


「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています