宋斤「思い出の記」俳句の部 昭和五年
梅遅く渡舟の水のにごり哉
野の寒さたんぽゝ咲いて雲遠し
汐干宿に泊まってしまひ海黒き
夏の夜は川上遠く明けにけり
葛餅を食って原稿せはしけれ
鉱山のむかしに廃れ夏日かな
ことし竹山に蝙蝠飛びにけり蝙蝠こうもり
月見艸無風いよいよ更けにけり
蛍来て町空飛ぶや祭月
蚊帳くぐる娘が翌日の祭髪
噴水の虹のむかふの娘たち
棲むところ故郷として盆の月
蜻蛉のさやと翅音や顔を行く
家でする丸刈り頭秋の水
庭すみや実におくれたる草の咲く
「宋斤思い出の記」は、祖父宋斤の七回忌(昭和25年5月)に,父 要がガリ版刷りの手書きで 宋斤の俳句の部として記念発行したものです。大正十五年より 年ごとにご紹介しています