早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

定本宋斤句集  夏 9

2018-08-02 | 永尾宋斤の句集:宋斤 思い出の記・定本宋斤句集





定本宋斤句集  夏 9

蟷 螂  遁ぐること迅き蟷螂生れけり
まくなぎ まくなぎを清水にはらひ旅つかれ
まひまひ まひまひの雨の一粒知りにけり
孑 子  殲滅す孑子の水庭が吸ふ
目 高  尾をまげて水裡風ある目高かな
金 魚  馴れ様は怖ぢ沈むにも古金魚
      らんちゅうの子が豆ほどな力泳す
守 宮  ももの音しづかに遠し燈の守宮
蛇の衣  蛇の衣十重にも疊み筺の中
    芳里君より河鹿を貰ふ
河 鹿   河鹿鳴くやとある旦の雨知って
      河鹿笛夜更けの獨り弄ぶ
鮎     水底や澄めるがあわれ網の鮎
      鮎焼くや山色懐ふ伊賀の國
鱚     汐のいろ鱚の日ぐれとなりにけり
鱧     鱧の皮二聨三聨疊けり
餘 花   笠ぬぎて遍路ゆくなり餘花の下
新 樹   夜はさすが背の新樹の冷え冷えす
若 葉   夜の庭に草履設けて若葉かな
      若葉寒む朝に鯛の煮凝れる