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定本宋斤句集 夏 10
青 葉 汁襲を解きつつ青葉の緑ひろし
葉 櫻 葉櫻の大和下市鮎の酢
茂 一燈を楓しげる葉つつみかね
修学院離宮拝観 中の御茶屋 遁ぐること迅き蟷螂生れけり
林丘寺比叡をうしろに湧く茂り
緑 陰 緑陰を一戸けむらしつゞけけり
緑陰や門のほかなる壁切戸
木下闇 鮎舟と見るが繁がれ木下闇
草いきれ草いきれ鉗子の花のちりながら
散 宵
百合の花 更け更けて百合の匂ふが頼りかな
走り藷 初島や夜明けのひと荷走り藷
西 瓜 夜の海に西瓜食らわんと漕ぎ出でぬ
胡 瓜 雨足りて胡瓜あだ花なほ黄なり
篠の子 篠の子や大野開けたる片畔
筍 筍を噛みつつ今年花を見ず
睡 蓮 睡蓮を去り行く山の日なりけり
夏 蕨 蝉涼し泉湧く邊は夏わらび
修学院離宮拝観
苔の花 苔の花すゞろ袖形御燈籠
濱木綿 濱木綿の日南たしかや陶の蟹