早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

壺はからっぽ 早春第二巻第三号 

2020-05-01 | 宋斤の俳語・句碑・俳画、書
     壺はからっぽ

      こヽに一つの壺があります、それは俳句という壺であります。
      周囲の人々は、この壺の中に何か入っているのかと思っております。
      覗いて見ても解らぬと云ひます。その壺、実はからっぽであります。
      それに、人々は何時までも、この空壺から何かつまみだそうとしてゐます、
      恰も寶玉が充満しても居るかのように。
      俳句の壺は、見て居れば何時までもからっぽであります。
      だから、その中へは是非何か入れなければなりません。
      なにか入れやうと自由であります、なんでも大抵入ります。
      俳句を作るのは、壺の中から壺の中から摘み出すのではなくて、
      壺の中へ自分のものを入れるのであります。
      俳句という壺はからっぽであります。



       

宋斤の俳句 「早春」大正十五年八月第二巻二号 句会

2020-05-01 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
      紫陽花 ー郡山の夕=
           佐久間一抱氏のご好意により 
           宋斤、南畝、一抱、至禾、也陶、峭木の六人 
           郡山四海亭に集い歓談、句作に愉快なる一夕を過ごした。
      
           暮るゝまで間近あじさい見てゐたり
           濠水にしがらく暮れの夏乙鳥

            
      楠公忌  延元元年夏五月二十五日 
           湊川の戦役で七度再生の精忠を叫ばれたと云う大楠氏の最後の日
           「楠茂り」

           露光る楠の下にて楠公忌
            

           梅の實を拾ふて案内僧来たる
           桐の花賣石古りて町がゝり
           日をかくす雲なれ低し行々子
           蘆つきて町へしばらく花茨城
           乙鳥の敷々初夏の帆帆の白し
           睡蓮に去り行く雨の日なりけり
           飛びも得ず夜気にふるへも蛾なりけり
           甘酒をこぼして水に雲つくる
           なき人をしのぶに梅雨の寒さ哉        
           羅や母の袂の小さき珠數
           星更けて青桐音を立てにけり
           繭の腹ぺことへこみてあるものよ
           長濱や潮に浮く繭一つ
           森の闇面に星の涼しけれ
            


一句でもよい 早春 八月 第二巻第二号 

2020-05-01 | 宋斤の俳語・句碑・俳画、書
  >一句でもよい

  『XX氏を知っていますか』
  『まだ遭ったことはありませんがあの人には..........といふ句がありますね』
  『好い句ですな、私はまた.........といふ句が好きでXX氏の独得のものかと思ひます』

  他人の記憶に一句でもよい。覚えていて貰ってゐる作品を持たねば、
  作家としての一人前ではまだまだ遠い。
  投句頻繁や句会交際から、名のみ広く知られて居ても駄目である。
  作品から作家の名でなければ偽である

宋斤の俳句 「早春」大正十五年八月第二巻二号 近詠 宋斤

2020-05-01 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句 「早春」大正十五年八月第二巻二号 近詠


       鮓をおす女に山は夕立かな
       山毎日まづ蝉が啼く朝淋し
       いちゞくの地につく茂り油照り
       食ふものに燈火が透く心太
       日車に照るは川往く帆なりけり
       野をはさみ祭堤燈小更けゝり
       燈籠のすそに腰かけ夕蛍
       草の蝶山のかすみの暑さ哉
       蠓や小松ばかりの廣さにて
       百合の花向き向きなれば谿の風

                         蠓みみず

     
    

宋斤の俳句 「早春」大正十五年七月 第二巻一号 句会 宋斤

2020-05-01 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
池田牡丹座 5月9日 大廣寺 

牡丹忌    牡丹ぼたん忌ここに四百年
       牡丹の眼を遠山にうつしけり
         早春社六月本会
さくらんぼ   さくらんぼ肌身になつの来たりけり
       さくらんぼ莖組みみだれかぼそけれ
          西宮例会
       町の端の景色幟に橋高し
          今津例会
       はれてゆく遠瀬あかるき若葉かな
          北例会
       更け更けて葉柳に燈の窓高し
       葉はみな根分いたみに夕そよぐ
          発行所例会
       芍楽の青き葉蜘蛛の渡しけり