十夜吟
第一夜 大正十五年十月十五日 鰻谷 光清寺
露十句
土倦みて露を流しぬ庭径
第二夜 十月十六日 難波衛生組合事務所
一題三句十分間吟 五題十五句を息つく間もなく作る
菌 山雀 初霜 草紅葉 小春
火に埋む菌や小夜の香にみつる
天王寺塔の小春の暮れて行く
垣の上小春の蝶の𡑭へにけり
第三夜 十月十七日 北野 太融寺
虫寒し 雁渡し 椿の實 下冷え 師景 五題十句
爽に愛染堂の燈の遠く
雁渡し茶店にあたる日の淋し
第四夜 福島 攝取院
一人に一題 二十一題それぞれ十句
紅葉燈にあらはれて山小深けれ
機村や紅葉これから人通る
紅葉濃き夜のあけかゝる雲長し
第五夜 安治川 小野方
舟 十句秋冬
工女等の皆小風呂敷渡舟寒く
秋の夜の水に渡舟の櫓うねうね
霧の燈をもちあがり渡舟仕舞ひ哉
人秋や夜の渡舟に襟合わす
町さびれ来て渡舟場の柳散る
第六夜 十月二十日 十三 也陶居
後の月 色彩
蟷螂の鎌も草中枯色に
菊白し僧の浅沓石の上
第一夜 大正十五年十月十五日 鰻谷 光清寺
露十句
土倦みて露を流しぬ庭径
第二夜 十月十六日 難波衛生組合事務所
一題三句十分間吟 五題十五句を息つく間もなく作る
菌 山雀 初霜 草紅葉 小春
火に埋む菌や小夜の香にみつる
天王寺塔の小春の暮れて行く
垣の上小春の蝶の𡑭へにけり
第三夜 十月十七日 北野 太融寺
虫寒し 雁渡し 椿の實 下冷え 師景 五題十句
爽に愛染堂の燈の遠く
雁渡し茶店にあたる日の淋し
第四夜 福島 攝取院
一人に一題 二十一題それぞれ十句
紅葉燈にあらはれて山小深けれ
機村や紅葉これから人通る
紅葉濃き夜のあけかゝる雲長し
第五夜 安治川 小野方
舟 十句秋冬
工女等の皆小風呂敷渡舟寒く
秋の夜の水に渡舟の櫓うねうね
霧の燈をもちあがり渡舟仕舞ひ哉
人秋や夜の渡舟に襟合わす
町さびれ来て渡舟場の柳散る
第六夜 十月二十日 十三 也陶居
後の月 色彩
蟷螂の鎌も草中枯色に
菊白し僧の浅沓石の上