早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」大正十六年一月 第三巻一号 十夜吟 一夜〜六夜

2020-05-18 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
十夜吟 

第一夜  大正十五年十月十五日 鰻谷 光清寺
     露十句
土倦みて露を流しぬ庭径

第二夜  十月十六日 難波衛生組合事務所
     一題三句十分間吟 五題十五句を息つく間もなく作る
     菌 山雀 初霜 草紅葉 小春
火に埋む菌や小夜の香にみつる
天王寺塔の小春の暮れて行く
垣の上小春の蝶の𡑭へにけり

第三夜  十月十七日 北野 太融寺
     虫寒し 雁渡し 椿の實 下冷え 師景 五題十句
爽に愛染堂の燈の遠く
雁渡し茶店にあたる日の淋し

第四夜  福島 攝取院
     一人に一題 二十一題それぞれ十句
紅葉燈にあらはれて山小深けれ
機村や紅葉これから人通る
紅葉濃き夜のあけかゝる雲長し

第五夜  安治川 小野方
     舟 十句秋冬
工女等の皆小風呂敷渡舟寒く
秋の夜の水に渡舟の櫓うねうね
霧の燈をもちあがり渡舟仕舞ひ哉
人秋や夜の渡舟に襟合わす
町さびれ来て渡舟場の柳散る

第六夜  十月二十日 十三 也陶居
     後の月 色彩
蟷螂の鎌も草中枯色に
菊白し僧の浅沓石の上