早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句 「早春」昭和三年六月 第五巻六号 近詠・俳句

2020-12-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく


宋斤の俳句 「早春」昭和三年六月 第五巻六号 近詠・俳句

近詠

櫂の花楠の若葉に正成忌

字の名にむかしむかしや花柘榴

鳥啼いて雨中あふるゝ泉かな

草を出でゝ露ふるふ雛夏旦

瓜きざむ音も草庵夕かな

ひろげたる白扇うつる机かな

山暮れて青さは蚊帳の燈りけり

   櫻寧抄
日の空へ毛蟲焼く火をふるにけり

短夜の燈の窓にある松の花

   翔宵編
あてもなく菜種刈れるに来てあつき

刈る菜種さやけて水の透きにけり

早春社五月本句會
餘花の丘海のながめも倦みにけり

麥嵐林中月のあらはれぬ

   早春社中央句會
春の水遠くに流れ星となる

   聚遠亭 兵庫滝野町
閑さの花いまだなる枯大木

花の芽に照り降る雨のしたしけれ

雨はれていよいよ麗ら枯木山

   島田にて
囀りの地にひるがへり小雨降る

嘴崎や梅満開に塀ひくゝ      嘴=くちばし

交々に遅れなどして春山邊

はらはらと雨降り消ゆる竹の秋

鳥の聲人をそゝりて花もはやし

早春社神戸例會
聞きまぎれゐる機屋なり春の雷

高まどに花の曙さしにけり

  打出句會
紙切れにひねりかずかず花の種

  大物庵小座
遲日なる楓の梢いとこまか

牧場へ水汲みぬらす艸芳し

行春の沖浪を去る舟高く