宋斤の俳句「早春」昭和十五年一月 第二十九巻一号 近詠 俳句
近詠
斬神旭の橿原年あした
大むかし三旦明くる闇彼方
あめつちのひたと静まり初明り
松透きて今年のいろの海にあり
初東風に光るをひろふ古瓦
翔ちして雀染まりぬ初茜
正月の塵をつまんで仕丁かな
小さき部屋にて乙女かたまりお正月
初句會坐って皆を見渡せば
初刷りや校正刷なほも散らばるに 校正刷ゲラズリ
正月や山を戀ひつゝ蜜柑むく
初旅の人たかたかと舷欄に
初飛行空に日南を出しつゝ
老ひざれてなつかし媼が年詞かな
初詣でみちにかぬちをきゝにけり
楪やしなやかまろく紅の莖
初鴉たひらかな空海のうへ
弓始西の黒雲キツト視て
初日南皇兵抱く銃にあり
福壺艸まだき明りに黄なりけり
新年句合評
門さきの年となりたる柳かな
栗
露の旭に栗の豊作仰ぎけり
栗拾ひ歩けば音のする山ぞ
栗拾ふ水浅きにも摘まみけり
鮓
鮓の飯ひざに拂ふて夜涼かな
鮓くつてよきほどに湖上船來る
早春社納会
樹々透いて鴨池の照りくるゝかな
冬雲の糸ほどの月蔵しけり
冬雲の汽車がまはれば山になし
近詠
斬神旭の橿原年あした
大むかし三旦明くる闇彼方
あめつちのひたと静まり初明り
松透きて今年のいろの海にあり
初東風に光るをひろふ古瓦
翔ちして雀染まりぬ初茜
正月の塵をつまんで仕丁かな
小さき部屋にて乙女かたまりお正月
初句會坐って皆を見渡せば
初刷りや校正刷なほも散らばるに 校正刷ゲラズリ
正月や山を戀ひつゝ蜜柑むく
初旅の人たかたかと舷欄に
初飛行空に日南を出しつゝ
老ひざれてなつかし媼が年詞かな
初詣でみちにかぬちをきゝにけり
楪やしなやかまろく紅の莖
初鴉たひらかな空海のうへ
弓始西の黒雲キツト視て
初日南皇兵抱く銃にあり
福壺艸まだき明りに黄なりけり
新年句合評
門さきの年となりたる柳かな
栗
露の旭に栗の豊作仰ぎけり
栗拾ひ歩けば音のする山ぞ
栗拾ふ水浅きにも摘まみけり
鮓
鮓の飯ひざに拂ふて夜涼かな
鮓くつてよきほどに湖上船來る
早春社納会
樹々透いて鴨池の照りくるゝかな
冬雲の糸ほどの月蔵しけり
冬雲の汽車がまはれば山になし