早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十五年一月 第二十九巻一号 近詠 俳句

2022-05-12 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十五年一月 第二十九巻一号 近詠 俳句

   近詠
斬神旭の橿原年あした

大むかし三旦明くる闇彼方

あめつちのひたと静まり初明り

松透きて今年のいろの海にあり

初東風に光るをひろふ古瓦

翔ちして雀染まりぬ初茜

正月の塵をつまんで仕丁かな

小さき部屋にて乙女かたまりお正月

初句會坐って皆を見渡せば

初刷りや校正刷なほも散らばるに   校正刷ゲラズリ

正月や山を戀ひつゝ蜜柑むく

初旅の人たかたかと舷欄に

初飛行空に日南を出しつゝ

老ひざれてなつかし媼が年詞かな

初詣でみちにかぬちをきゝにけり

楪やしなやかまろく紅の莖

初鴉たひらかな空海のうへ

弓始西の黒雲キツト視て

初日南皇兵抱く銃にあり

福壺艸まだき明りに黄なりけり

新年句合評
門さきの年となりたる柳かな

  栗
露の旭に栗の豊作仰ぎけり

栗拾ひ歩けば音のする山ぞ

栗拾ふ水浅きにも摘まみけり

  鮓
鮓の飯ひざに拂ふて夜涼かな

鮓くつてよきほどに湖上船來る

  早春社納会
樹々透いて鴨池の照りくるゝかな

冬雲の糸ほどの月蔵しけり

冬雲の汽車がまはれば山になし