早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十七年 九月 第三十四巻三号 近詠 俳句

2023-02-06 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十七年 九月 第三十四巻三号 近詠 俳句




近詠

家の燈に船あからさま秋されぬ

草遠く走り戻り來秋の猫

蜉蝣や金龜子暴ばれて去し燈に

新涼や寺か社か小木の闇

城ほとり蓮うつ燈に夜學せる

朝鈴に朝の掃き拭きまづ濟みし

蜩や馬つながれて淋しがる

子どもらにうれしき出水木槿垣

桃あかしコップに漬けて水を染む

稲を知らず工場の煤けすゞめかな

とんぼうの深寝やかさと翅伏せて

舟これよりゆかず干泥に鴫のあと

紀伊船の盆しに歸る輪のけむり

佛壇を隠居あづけに魂まつり

露ぶかに彳ち語りゐる盆の人

葛の葉はところの名にて盆おどり

三更のそら薄雲に盆の月

蟲今宵もやひ筏の草しげり

はたをりや簾透く燈の細ろう地

九州四國暴風解報のなぐれ吹く

諸肌に野風よろしや鰶汁

秋の海の雲に照りけり峠平

   豆 飯
豆飯は河内の乳母がたき上手

豆めしをよそひ押さへて火打箱

豆めしの豆ぬきて喰べ子の楽し

池曇夾竹桃に落花なし

灼日の夾竹桃はかげちらす

見送れば丘にふりかへる友涼し

  二葉會六月例會
百合の香のほのとし泉明るけれ

芝ひろく一石の奇と竹床几

  二葉會七月例會
樹下石上夏日一書を懐に

蛇のあとつめたき土をふむ

  二葉會 須磨吟行
松籟に行燈消されな甘酒屋

土用凪沖遠きほど巨船なる