早春 俳人永尾宋斤

祖父で「早春」を大正15年2月に主宰・創刊した永尾宋斤の俳句・俳語・俳画などからひもといています

宋斤の俳句「早春」昭和十八年二 月 第三十五巻二号 近詠 俳句

2023-10-05 | 宋斤の俳句を大正十五年「早春」創刊〜昭和十九年休刊までひもとく
宋斤の俳句「早春」昭和十八年二 月 第三十五巻二号 近詠 俳句

    近詠

寒晴れて川は鳶の日鷗の日

障子外に船泊まりゐる寒燈

船の音をたのしむ客と火桶かな

のぼのびの畳かへして小正月

寒の水コップにゆるゝなく正し

煮こごりの鰈はなれず裏おもて

句の作り控へを爐火に救ひけり

懐爐灰の善悪談ず老ひけらし

大寒に入る旦晴れ男子生る

孫や生れし病みも居られず春を待つ

ソロモン島ふり顧るアリュシャン春を待つ

吹雪旭あり三冬盡くる川の空


硯洗
大硯を洗ひしにつく芝ほこり

洗ひつる帳場硯の磨り凹み

句座硯筆百本を洗ひけり

いたましの旅硯の傷や洗ひけり

    昭和十七年の早春回顧
宣戦のこの日凍雲閃々と

大君の地に花咲きて福寿草

苦忠然も終わりを知らず霞寒む

山に見る烏の黒さ桑の枯れ

大霜の臼の上にもこぼれ炭

頬杖を佛したまひ若葉寒む

戦へるこゝろ兜を飾るなり

紀伊船の盆しに歸る輪のけむり

菊の戸に海千里なる便りかな

松凍てゝわだつうみ神白夜なる

   早春車発句会   於 住吉神社訪問後 隣社生垣神社 宋斤 すこし歩行困難(リューマチ) 

谷ひと家人の出てゐる初國旗

小波や湖上汽船の初國旗

初國旗はためき雪の地をはしる

初國旗ちらちら松の東海道

   無門會十二月例會
霜柱山ささゝたる塀をゆく

鶏ゆけば我ゆけばなる霜柱

遠つ峰を日のはしり來る霜柱

霜柱厨はじまれば煙り這ふ