砂漠の音楽

本と音楽について淡々と思いをぶつけるブログ。

ザ・なつやすみバンド「ファンタジア」

2017-05-08 14:47:28 | 日本の音楽



GW中は忙しくてブログを書く暇がなかったが、ふたたび仕事に戻ってきたのでさいわいにも記事を書く時間が確保できている。投稿日時が何故か平日の昼間であることは内緒だ。
そんなわけで今日紹介するのは、昨年の7月20日に発売された、ザ・なつやすみバンドの3枚目『Phantasia』。発売日にゲットした私は本作のあまりの良さに生まれてはじめて某Amaz〇nでレビューを書いたが、今回改めて聴いてみてもやはり良いと思えたので今日はこのアルバムを取りあげようと思う。

たぶんまだそこまでメジャーなバンドでもないので(失礼)、彼らの簡単なプロフィールを紹介しよう。2008年、中川理沙(Vo/Key)を中心に、大学の音楽サークルのメンバーで結成されたらしい。確か最初はギターがいた。その後メンバーの入れ替わりがあり、2010年にはceroでもサポートを務めるMC.sirafu(スティールパン/トランペット)が加入し、2012年に最初のフルアルバム『TNB!』を自主制作でリリース。これが口コミで結構売れたようで、2ndアルバムの『パラード』を出す前にメジャーデビューすることとなった。そして2016年7月20日、3枚目となる『Phantasia』をリリース。女性2人、男性2人の4人組のバンドである。ライブの時はフルートやトロンボーン、パーカッションが入ったりもする。

バンドとしての大きな特徴は、MC.sirafuによるスティールパンとトランペットが入っていることだろう。スティールパンでは和やかでトロピカルな雰囲気が、トランペットではかわいらしくもどこか切ない雰囲気が演出されていて、バンド名が表す通り「夏休み感」がそこかしこに溢れている。ヴォーカルの中川氏の歌声は透き通るような伸びがあり、そんななかにも繊細な感情の動きがうかがえるとても綺麗なトーンだ。語り始めると前回同様長くなってしまうのでこのあたりにしておくが、個人的には最近のなかでもかなり好きなバンドだ。

ではこの3枚目『Phantasia』はどうなのか。まだ3枚しかアルバムを出してないからずいぶん気が早いけれど、私は今のところの最高傑作だと思う。バンドの特徴として上にあげた「MC.sirafuの八面六臂の活躍」と「中川さんの素敵な歌声」は相変わらずだが、それに加わってベースとドラムが前作に比べて格段に良くなっている。例えば#2「Odyssey」のサビのわくわくするような跳ねるリズムや#3「Full swing!」のBメロのちょっとしたタム回し、今までになかったクールでどこかメランコリックな雰囲気の#9「summer cut」も全体的にベースとドラムの絡みが心地よい。ベタな表現になってしまうが、今までに比べて「グルーヴ感」が大幅に増しているのだ。
インタールード的楽曲がいくつか挿入されているのもあってか、曲と曲のつながりが自然だし、そのため前作よりもアルバム全体がうまくまとまっている。アレンジもいい。本作のハイライト#7「Grand Master Memories」の、サビで後ろに鳴っているカッティング気味のギターはめちゃくちゃ夏だし、#12のストリングスは切なくてきれいだし、「Odyssey」や「Daunts」の随所にみられるユーモラスなコーラスワークも相変わらずだ。今書いていて思ったけれど、バンドメンバー全員で音楽をやろうとしているのが、このバンドの魅力のひとつなのかもしれない。

こういったあたりに「バンド全体としての成長」が感じられる。先日NHKの番組でも取り上げられていたし、たぶんこれからもっと売れていくんだろうし、もっと売れていって欲しいと思う。伸びしろがすごいバンドなので、次回作にも大いに期待していいんじゃないだろうか。いつか大きな会場でライブを観たい。

まだ5月なので少し気が早いかもしれないが、遅かれ早かれ夏はやってくる。この1枚を聞きながら、今年の夏のことだけではなく、今まで過ごしてきた夏にも思いを馳せてみてはどうだろうか。このアルバムのタイトル『Phantasia』の意味である「空想」や「想像力」を働かせると、今まで見つからなかったもの、見えなかったものが見つけられるかも?なんてことを思う。



※余談だが、私はMC.sirafu氏のことをずっとMC.safariだと勘違いしていた。だってヒゲとか帽子とか、サファリ感強いし…

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