あまりの暑さなので、アイスクリームが社内で配られた。
普段は手が伸びないけど、
今日はアイスまんじゅうをいただいた。
このアイスを口に含むと鼻のおくがつーんとする思い出が蘇る。
あのとき、わたしはいくつだったのだろう、小学1年生くらいだ
わたし達は船に乗るため波止場にいた
いまよりはもっとやさしい夏の日差しだった思う。
波止場の売店で
知らない子供がアイスクリームを食べていた。
棒がついて白いアイスの中から餡子のようなものがのぞき
ぽたぽた落ちる雫を舐めながら美味しそうに食べていた。
わたしはどうしても同じものが食べたくて、食べたくて......
母に買って、と言ったらお金がないから買えないと言われた。
わたしは「買って、買って」とねだった。
が、だめだった。
ふてくされて岸壁の先端で海を見ていたら
母が「ほら...」とアイスまんじゅうを差し出した。
そのとき、アイス饅頭がいくらしたのかは分からない、しかし
想像する、
うちは貧しかったから母にとっては10円のお金も大事だったと思う。
大切なお金でアイスを買ってくれたのだ。
あの時食べたアイスまんじゅうの美味しさは一生わすれない。
母のやさしさを一生わすれない。