KADOKAWA発の文芸情報サイト「カドブン」で、
自閉症の作家・東田直樹さんのエッセイ(毎週水曜更新)
「東田直樹の絆創膏日記」
第21回 未来のために、できること が掲載されました。
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2018年4月2日(月)
4月2日は、国連が定めた「世界自閉症啓発デー」である。
多くの人に自閉症という障害を知ってもらえること、そして自閉症に対する理解が深まることを僕も願っている。
自閉症の啓発は、だんだん広まっているような気がする。
僕自身は学校を卒業してから、自分が自閉症だからと意識することは少なくなった。学校時代に比べ、のびのびと暮らせていると思う。小さい頃は、自分の将来におびえ、明日が来るのが苦痛で仕方なかった。大人になるのが怖かったのだ。
みんなが当たり前に出来ることが出来ない。自閉症の僕が生きていける場所が、この社会にあるとは信じられなかった。そんなことはないと知ってからは、少し気が楽になったような気がする。
障害のある子どもたちは、周りの大人が考えている以上に、将来に対する不安を抱きながら毎日を過ごしているのではないだろうか。自分が普通の子供と違うことくらい、みんなとっくにわかっているはずだ。
障害のある子どもに「大きくなったら何になりたい?」という質問をして、答えられる子どもは、どれくらいいるのだろう。なぜなら、僕が子どもだった頃、将来、大人になった自分が、何にならなれるのかが、わからなかったからである。
障害者がそれぞれの力を発揮し、社会の中で働いている姿を見せることで、障害児やその家族が、どれだけ勇気づけられるだろうと考えることがある。
障害児の明るい未来を目指すために大事なことは、理想の社会を口にすることだけではない。自分の将来だと思うような大人が、憧れるような生活をしている、その姿を見せることではないだろうか。
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人は悩んだり苦しい時に、自分と同じ境遇の人が他にもいるのだ~
と思うと、非常に安心します。
悩んだり苦しんでいるのは、自分だけではない、と思うからでしょう。
ましてや、頑張っていたり、幸せな生活を送っている姿を見ると、
非常に勇気づけられます。
障害者達が、それぞれの力を発揮し、社会の中で働くこと。
そして、その姿を、後輩達に見せること。
障害児の皆さんや、その親御さんにとって、先輩達のそんな姿を見ることは、
どれ程励まされ、勇気付けられることでしょう。
そんな循環が、本当の明るい未来を作るのだと思います。