次に訪ねたのは、隣町の新富町湯之宮にある「湯の宮座論梅」です。
目の前には白い花を付けた梅林が広がっていました。
どうやら、この梅林全体が座論梅で、一本の樹齢300年以上と推定される白梅が、伸ばした枝を地面に着け、そこから根と新芽を出して、四方に株を増やしてきたようです。
花は白の一重でやや小ぶりです、 実は種が大きくて果肉が薄く、現在の実梅よりも原種的な品種と考えられています。
新富町のホームページには、
「湯之宮地区にある古い梅園です。
もとは1本の木から増えたといわれ、神武天皇が立てた梅の木の杖から芽ぶき、元木になったとの言い伝えがありますが、その始まりは定かではありません。
江戸時代の文献に歌が登場することから、今から300年前には今の梅園として有名だったようです。
現在60以上の株があり、白い一重の花を咲かせます。
国内に梅の国指定天然記念物は5ヶ所しかなく、江戸時代には、鹿児島県薩摩川内市東郷町の藤川天神梅、宮崎市高岡町の月知梅とともに、「三州三梅」と呼ばれました。
「座論梅」のいわれは、「ザロミ」という梅の品種からきたという説や、人々が集って話し合う様子からきたという説、江戸時代の藩境の協議がここであったからという説などがあります。」
と記載されていました。
以前から、座論梅に関する知識は持っていましたが、実際に目にした迫力はかなりのものです。
陳腐な表現ですが、「百聞は一見に如かず」の言葉通りでした。
何だか、還暦を迎え、学んだことを実際に見に行く、人生の修学旅行のような気分になってきました。
実は、座論梅と呼ばれる梅の品種は、私の知る限り四種類あります。
一つはこの場所の「湯の宮座論梅」。
二つめは、東京の池上梅園にある座論梅で、その解説によると、梅の愛好家の野村さんが中国から持ってきた座論梅を株分けし、池上梅園に寄贈したのだそうです。
この座論梅は一つの枝に対になって花が咲き、その姿が中国の賢人(孔子と老子)が向き合って議論を交わしている様に似ていることから座論梅と命名されたそうです。
池上梅園の座論梅
三つめは、一輪の花に3~8個の実がなり、その実が座って議論をしているように見えることから座論梅の名がつき、八房梅(やつぶさうめ)とも呼ばれます。
この梅を私が最初に見たのは、新潟県の梅護寺でした。この梅は、親鸞聖人が梅干しの種を庭に植えたところ、この実から芽が出て花1つに8つの実を結ぶようになったと伝えられ、越後七不思議のひとつとされています。
梅護寺の座論梅
四つめは中津川市駒場の桃山公園の女夫梅(座論梅)です。この梅を私はまだ見たことがありませんが、白い八重の花と実の各々が対になる特徴があるようです。
「湯の宮座論梅」は宮崎県以外では、唯一東京の神代植物公園でも見ることができます。
また、二つめの座論梅は、水戸の偕楽園でも見られるようです。
三つめの八房の座論梅は、以下の数か所で見ることができます。
常勝院 福島県いわき市平中平窪字岩間61 花期 3月下~4月上旬
梅護寺 新潟県阿賀野市小島377 花期 4月中旬
岩窪八房の梅 山梨県甲府市岩窪町信玄公廟所 花期 3月下旬
洞雲寺 山梨県牧丘町北原1116 花期 3月下旬
八房の梅 山梨県都留市大幡4229 花期 3月下旬~4月上旬
聖蓮寺 岐阜県不破郡関ヶ原町今須2367 花期 3月下~4月上旬
月照寺 兵庫県明石市人丸町1-29 花期 2月中旬~3月上旬
柿本神社 兵庫県明石市人丸町1-26 花期 2月中旬~3月上旬
雲乗寺 福岡県宗像市朝町2410 花期 2月下旬~3月上旬
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