室伏広治さんの「超える力」の中で、シドニーでの優勝記録は決して届かない記録ではなかったが、環境に惑わされ、勝つことを必要以上に意識し、他の選手の動向に気を取られ、結果を出せなかったことから得た結論。
「勝利至上主義や金メダルしか考えていないモチベーションはなんと脆いものだろうかと思った。
これからもハンマー投げを続けて行くには、勝ちさえすればいいという偏狭な考えではいけない。
ハンマーを投げる事がたのしいという、私自身の原点に戻る事が必要だった。
以降、私は勝利至上主義の考え方をやめた。
勝負や順位といった結果ではなく、理想の投てきを求める事とした。
80mをコンスタントに正確に投げるにはどうしたら良いか。
気持ちを切り替えると、負けたら悔しいとか、表彰台どころか入賞すらできなかったから残念だったという感情は消えていった。
どのような投げ方をするか、練習をどのように工夫するか、いろいろなアイディアも思い浮かぶようになり、落ち込んでいた気持ちが嘘のように前向きになっていった。」
しかしここまで考えられるようになったのは、まさにその場で命を削るような取り組みをしたからだと思う。
そういう経験をしたからこそ、言葉に重みがあるのだろう。