こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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顔見るだけでも。

2010-11-07 22:44:55 | 訪問看護、緩和ケア
家にいて、病状に変化が出てくれば、「大丈夫だろうか?」という不安はついて回ります。

病院にいれば・・・。そう思うのは、こんな時だと思います。

このところ状態のおちている患者さん、昨日の緊急訪問の時にだいぶ調子が悪かったために、ご希望で今日も担当の看護師が訪問してくれました。

やっぱり、なんとなく調子が悪くて、不安な様子だとか。

青森に出張中の主治医に連絡すると、今日の夕方には往診してくれるとのこと。

それを伝えただけで、急に元気が出てきたようです。

担当ナースが「先生が来てくれることがわかったら、急に落ち着いてきました。血圧も安定したし、呼吸苦もないです。でも、やっぱり先生には行ってもらいたいんです。大丈夫ですよね?!」と電話をしてきました。

「先生には悪いけど、さっきまで具合悪かったんだし、来てくれることがわかって落ち着いたのだから、やっぱり往診してもらおうね」って言いました。

先生の顔が薬なんですよね。

出張がえりで申し訳ないけど、お願いしちゃいました。

同じように、担当ナースが顔見せるだけで、元気になっちゃう人もたくさんいます。

もっとすごいのは、電話の声だけで元気になる人も。

アルツハイマーのおばあちゃん。
薬のセッティングをしたり、主治医と連絡を取ったり、一緒に歌ったり遊んだりする担当ナースが、一番信頼できる相手のようです。

訪問日の前後になると、担当ナースのKさんを思い出すらしく、ステーションに電話がかかってきます。
なぜか彼女は担当のKを「先生」と呼びます。
これは訂正できないらしく、「K先生いますか?体の震えが止まる薬がないんですけど。」と、ほぼ内容は同じです。

訪問当初、原因不明の振戦が発作的にあり、状況を観察したり、内服の内容を調べていたら、ある内服薬の副作用の疑いが出てきました。
ホームドクターと相談の結果、その内服を中止し、プラセボ(偽薬)を投与するようになったら、すっかり発作はなくなりました。(そのドクターもKさんを信頼してくれているので)

それでも彼女は、時々その発作が起こるのではないかという不安で、不穏になることがあります。

すると彼女は、これだけは忘れないらしく、ステーションに電話をしてくるのです。

でも、ほとんどKさんは訪問中でいません。

事務のどちらかが、「もしもし、Kですよ。もうすぐ行きますからね。大丈夫ですよ。ちゃんと飲み薬の中に入れてありますからね。」と、Kさんになりすましてお話します。

「わかりました!先生。ありがとう!」

そうして彼女は、安心して電話を切ります。

その直後にKさんが訪問しても、電話をしたことはすっかり忘れてしまっていますが、「先生!先生!」と大喜びで迎えてくれるそうです。


よく主治医が病状説明や治療の説明をして、「これは効きますよ。」とか言うだけで、元気になっちゃう患者さんたくさんいますよね。(私もその口ですが・・)

『「ムンテラマイシン」お願いします。』なんて、昔よく主治医に言ったけれど、本当に信頼している医療者からの言葉かけは、とってもよく効くんです。
(ムンテラっていうのは、医師が患者さんに病状説明することを言いますが、それと抗生剤などによくつかわれる○○マイシンという言葉をかけて、「よく効く先生の話」という言葉を作ったナース用語です。)

そのくらの関係性ができると、患者さんも安心して在宅で過ごすことができるのだと思います。

安心して、最後まで過ごせる。

そういう信頼関係が作れることが、在宅の醍醐味だと思っています。