こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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心臓の音

2010-11-10 23:42:09 | 訪問看護、緩和ケア
今日は、昼過ぎに退院した患者さんのところに、うちの専任ケアマネと伺いました。

中学生と小学生のお子さんのいる家に、最後の時間を過ごすために、帰ってきた患者さんです。
パパは、もうあと少ししか、生きることはできません。
子供たちもそれをちゃんと知っています。
でも、パパの前では、いつものように明るくて、いろんなことをお手伝いしてくれる、しっかりものの娘さんです。

途中からは、在宅医が往診にきて、一緒にいろんな話をしました。

たくさんの思い。たくさんの無念。
苦しみと、悲しみと、慈しみと、それらの凝縮した時間。
仕事の事、仲間の事、生まれた町の事、子供の事、妻の事、母の事、そして病気の事。
涙で、声にならないけれど、先生はじっと言葉を待って、みんなでじっと耳を傾けていました。

診察が始まると、ママの隣でずっと見ている小学生の娘さんに、先生が突然声をかけました。

「パパの心臓の音、聴いてみる?」
「うん!」

その子は、すぐに先生の横にやってきました。

パパは、娘がその鼓動に耳を傾けるのをじっと見つめていました。

「聞こえる?心臓の音。」
「うん、聞こえる。」


次に、ママが聴きました。
夫の心臓の音。

その次に、おばあちゃんが聴きました。
息子の心臓の音。


残念ながら、お姉ちゃんは不在でしたが、きっと先生はお姉ちゃんにも聴かせてくれるのだろうと思います。

言葉にならない、言葉にできない思いの詰まった時間。

叫びたいほどの思い。胸が痛くて・・でも、なんて優しい時間なのだろうと・・。

同行したうちの専任ケアマネは、ただただ泣いていました。
10月からうちに来て、今まで経験したことのない現実に、彼女もまた葛藤しているようでした。

ステーションに帰ると、「何とかならないのかな?何とか助けられないのかな?」涙でうるませながらつぶやいていました。

死は、もう避けることはできません。
本当にすぐそこまで来ています。
その無念も、苦しみも、わが身に置き換えて考えただけでも身が切られるような思いになります。
だからこそ、何とか少しでも支えになれるように、私たちはそこにいたいと思います。


 
今朝訪問した患者さんのマンションから見えた景色です。

富士山が、今日はかすんで見えます。

昨日の夕方、緊急訪問した時には、真っ赤な空にくっきりと黒くそびえていました。
雲の間からさす夕日に見とれてしまいました。
なので、今日はカメラを持参しました。

今日、ほんの少しだけれど、その患者さんもこの富士山を見ることができました。
マイケルが、部屋を抜け出して、お散歩中でした。
 

明日も富士山、見れるといいですね。