こぶた部屋の住人

訪問看護師で、妻で、母で、嫁です。
在宅緩和ケアのお話や、日々のあれこれを書き留めます。
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真夜中の電話

2010-11-23 22:56:10 | 訪問看護、緩和ケア
昨日は、月曜日だというのにものすごく忙しくて、なんだかヘトヘトニなってしまって、ブログを更新しようとPCの前に座ったものの、朦朧となってしまいました。

そしてそのままパタンと横になって、ホットカーペットに転がり、毛布をかぶって寝込んでしまいました。
こうなると、誰が何を言おうと身動きできず、身体が言うことを聴きません。

ハタと気が付くと、部屋には誰もいず、時計を見上げると夜中の1時30分。

ガーン。
こんなところで朝まで寝たらまずいです。
あわてて歯を磨き、布団にもぐりこみました。

それから3分。

緊急1番の携帯のバイブがブルブルと振るえて、私の枕に振動を伝えていました。

「緊急電話!!」

それは、昨日から昏睡状態になっていた患者さんの娘さんからのものでした。

「今さっき、父が旅立ちました。先生もこちらへ向かってくださっています。」との事。

こちらでの旅立ちのお支度を希望されていました。

「私もすぐに伺います。」そういって再び身支度を整え、夜中のお別れに伺う事となりました。

もう、何度こうして夜中の街を、車で走ったでしょう。

おりしも、冷たい雨が方をフロントガラスをたたきます。

静まり返った街、真っ暗なステーションのオフィス。
何度来ても、夜中のステーションに一人で来るのは不気味なものです。

うっかり、昨日エンゼルセットを持ってくるのを忘れてしまったので、しょうがないです。

そして、患者さんの家の前に来ると、ケアマネさんが自転車で駆け付けていました。

ここのケアマネさんは、夜中でも必ず来てくれます。
まだ、ケアマネとしては新米のAさんと、それを厳しくも優しくサポートしている瀬谷の母も一緒でした。トレードマークの雨合羽を着ての登場です。

そして、O先生もすでに死亡確認を終えて、書類を書いていました。

ベットが嫌ですぐに返してしまって、下で奥さんが手を繋いで寝ていた方です。
譫妄が強くて、ご家族も大変だったっと思いますが、ほとんど緊急電話をかけてくることもなく、見事にご家族だけでお見送りをされました。

眠っているような、穏やかなお顔のお父さんを、みんなできれいにして、お気に入りの山登りのウェアに身を包んで、伸ばしかけのあごひげも、とてもよく似合っていました。

本当にご苦労様。どうかこれからは、あちらから最愛の奥様を、見守ってあげてください。

先生も、半生を振り返ってお別れの言葉を伝えました。

ケアマネさんともお別れをして、車を乗り換え、自宅に帰ったのは深夜3時過ぎ。

シャワーを浴びて、布団のもぐりこむなり、深い眠りに落ちました。

真夜中のお別れは、いつも不思議な時間に包まれます。

静かな町のどこかで、遠くへ旅立つ人を、静かに見守る家族がいて・・。
お別れの悲しみと、自分の手で見送ったという、なかば安堵の入り混じった気持ちの中で、最後の身支度をするご家族のお手伝いをするのですから。

安堵と言うと語弊があるかもしれませんが、お看取りを覚悟された時から、避けられないゴールへと向かって全身全霊で介護されていたご家族には、やりきったという達成感が芽生えることもよくあります。
ご高齢の場合は、特に天寿まっとう、という言葉を耳にします。

逆に、お若くてまだまだやり残したことがたくさんあって、ご家族にとってもあまりにも理不尽なお別れは、身を引き裂かれるような時間となってしまいます。

たとえどんなお別れであっても、私たちも一生懸命向き合ってきた最後の時間ですから、とても大切な時間であることに変わりまありません。

夜中の訪問は、正直言ってとても辛いです。
でも、誰かがやらなければいけないこと。
それをすべき立場にあることを、私の使命とするならば、そこは頑張らないといけませんよね。
幸い、今日は勤労感謝の日で、朝は10時過ぎまで爆睡できました。
また明日から、忙しい毎日が始まります。