食の歴史 by 新谷隆史ー人類史を作った食の革命

脳と食を愛する生物学者の新谷隆史です。本ブログでは人類史の礎となった様々な食の革命について考察していきます。

インダス文明の食生活ー四大文明の食の革命(11)

2020-05-08 16:17:54 | 第二章 古代文明の食の革命
インダス文明の食生活
インダス文明とは、紀元前2600年頃から紀元前1800年頃までインド西北部のインダス川流域で栄えた都市文明である。モヘンジョダロやハラッパ、ドーラヴィーラーが有名な遺跡として知られている。

インダス文明で使用されていた文字は未だに解読されておらず、また、遺跡の多くがパキスタンに属しており調査が進んでいないことから、未解明な部分がたくさん残されている文明だ。

この地域の丘陵地帯では紀元前7000年頃から小麦・大麦の栽培、ヒツジ・ヤギ・ウシの飼育を行っていたことがわかっている。そして紀元前3000年頃からインダス川流域でインダス文明の基礎となる集落が形成され始めたと考えられている。

この地域(インド)に特徴的な食と言えば「カレー」だ。カレーにはターメリックやクミン、ジンジャー(ショウガ)、コリアンダー(パクチー)、コショウなどのスパイスが使用される。

ターメリックはほろ苦い味のする黄色のスパイスで、紀元前2500年頃のファルマーナー遺跡で見つかった人骨の歯石に含まれているのが見つかっている。同様にジンジャーもこの歯石中に確認されていることから、この時代からすでに人々の口に入っていたと推定される。

また、コショウはこの地域が原産地と考えられており、古くから料理に使用されていた。

一方、独特の芳香があるクミンとコリアンダーは地中海沿岸部原産で、交易によってオリエントからインダスにもたらされたと考えられる。逆にコショウはインダスからオリエントに輸出された。メソポタミアの記録によると、紀元前2300年頃からメソポタミアとインダスの間で海上交易が行われていたことが分かっており、この交易によって様々な物資が運ばれていたのだ。

以上より、カレーの原型はインダス文明において作られていたと推測されている。ただし、カレーの辛みの元となるトウガラシは中南米原産のため、これがカレーに使用されるのは新大陸発見まで待たなければならない。


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