子供のころに食べたマトンは硬くてクセがあり、脂もきつかった。
冷めると脂が固まって始末が悪くなるが、それが弁当のおかずの時もあった。
冬の寒い日。
アルミの弁当箱の蓋を開けると表面がびっしりラードでコーティングしたように真っ白になっている。
冷めた肉を引き剥がすように持ち上げて口に運ぶ。ギトギトした脂で口の中がデロデロになる。
噛んでいるうちに硬い肉もどうにかノドを通すことができるようになる。
そして、肉の下に隠れて脂にまみれたご飯を口に入れて噛み砕き、貧乏を味わった。
たまにジンギスカン焼きをつまみながら酒を飲むが、ラム肉は柔らかくて臭みもなくうまい。
脂まみれの硬いマトンをもう一度味わいたいと思っているが、最近は軟弱な肉ばかりで残念に思う。