初夏の心象風景
幼い頃、住んでたところは、目の前に広がる田園。
春は、たんぽぽ、白ツメ草、そしてレンゲ草の絨毯。
そして、田植えの時期は蛙の合唱。
背丈ほど伸びた稲の頃、真っ青な空に入道雲。
蝉しぐれの中、タモと虫カゴを持って走り回っていました。
季節と共に彩られる僕にとって原風景なのです。
5歳のとき、扁桃腺の手術で呉の病院に一週間入院することがありました。
帰ってしまう両親を窓から心細く眺めたのも夏の始まりだったのかな。
手術後、病院の廊下を走り回われるようになった頃が退院でした。
迎えに来た父がとても優しかったのです。
ところがやっちゃいました。
呉線で帰る途中、トンネル内で窓を開けて叱られました。
汽車ではトンネルの中で窓を開けるのはご法度なのです。
客車はあっという間にモクモク煙の中。
そう、僕はいたずら大好きっ子だったのです。
父が他のお客さんに、平身低頭していました。
病院の玄関ではあんなに優しかった父が、
家に帰るまで不機嫌でした。
そして、迎えてくれたのは、一面に広がる田んぼ。
一週間でぐ~んと成長した稲に驚いたのを覚えてます。