
モーツァルト(1756-1791)ほど各国の料理を食した音楽家は少ないといいます。
6歳の頃から、父親とともにミュンヘン、ウィーン、パリ、ロンドン、イタリア諸都市へ旅をし、
短い生涯のなかで、多くの王侯貴族に招待され贅沢な食卓を囲んでいます。
彼の書簡には、「牛フィレ肉のパン詰め」や「桃のスープ」等、魅惑的な料理が登場します。
若くしてアルコール中毒を患っていたともいわれ、たいへんなグルメであったと思われがちですが、
意外なことに、同書簡のなかでは晩餐会の席でも「私は水と果物を口にするだけです」という記述が頻出します。
(でも、アイスクリームは例外で、彼のお気に入りだったようです。)
真相がどうであったのかは分かりかねますが、
モーツァルトが執心したことがよく知られている料理がこちら。
上の写真のようなシュニッツェル(豚肉を薄くたたいて焼いた料理)です。
当時はパン粉をつけずに肉を焼いて、マスタードや炒めたタマネギを添えて供されていました。
「こんなに美味い豚肉料理は食べたことがない!」とされ、使用人に何度も運ばせていたようです。
ウィンナー・シュニッツェルはオーストリアの貴族で軍人であった
ヨーゼフ・ラデツキー将軍(1766-1858)が、1848~49年に北イタリアへ遠征したときに、
ミラノ風カツレツをことの外気に入り、ウィーンへ持ち帰ったことに端を発しているといわれています。
旅行では、1905年創業のウィンナー・シュニッツェルの有名店、
フィグルミュラー(Figlmüller)へ行って来ました。
上の写真で特大感が伝わるでしょうか。
運ばれてきたときには、おーーーー

注文の際、給仕さんから「ケチャップ等はつけるか?」と聞かれたので、
「ノーマルな食べ方は?」と聞いたところ、
「うーん、、ジャムとか。。」とのこと。
付けてみました。端っこに写っています。
食事に甘い味はどうも慣れないのですが、合わなくはないです。

いつも行列しているので、訪れる際には時間に余裕をもって行くと吉です。
************************
Figlmüller
Wollzeille 5, Wien
open: 11:00-22:30
************************
ちなみに、ラデツキー将軍の功績を称え、
1848年にヨハン・シュトラウス1世は『ラデツキー行進曲』を作曲しました。
ウィーンで行われるニューイヤーコンサートの最後を飾る曲がこの『ラデツキー行進曲』で、
観客が手拍子を打ち、オーケストラと一体となって盛り上がります。
さてさて、ウィーングルメの記事は続きます

(参照元:海老沢敏、高橋英郎 編訳『モーツァルト書簡全集』全6巻、白水社、2001年。)