今回の日曜美術館は、19世紀フランスを代表する画家、ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824~1898)です。
シャヴァンヌは、パリ市庁舎やパンテオン、ソルボンヌ大学など、フランス各地に数々の壁画を描き、国民的な 画家として歴史に名を残しています。
シャヴァンヌが画家として活躍していた時代、フランスは、普仏戦争(プロシアとフランスの戦争)によって国家的な危機に見舞われました。
その中で、シャヴァンヌは、未来への希望を託した理想郷を描き、多くのパリ市 民を勇気づけました。
東京渋谷で日本で初めてのシャヴァンヌの展覧会が開催されています。
壁画の元となった油絵の作品など60点、 シャヴァン ヌ の生涯が一望できるようになっているそうです。
「幻想」1868
シャヴァンヌ42歳の作品、森の中で精霊が葡萄のツルでペガサスを捉えようとしている場面です。
シャヴァンヌの作品が多く収蔵されているピカルデイ美術館
シャヴァンヌの作品を展示する部屋
画家として認められるきっかけとなった作品
「戦争」1861、 シャヴァンヌ37歳
殺戮や虐殺になげき悲しむ人びとを描いています。
「平和」1861
戦争と対をなす、豊かな実りを謳歌する人びと、戦争さえなければ穏やかな暮らしを営むことができることを描いています。
1970年母国フランスとプロイセンの戦争が勃発、プロイセンの圧倒的な軍事力の前にフランスは屈辱的な敗北をします。
パリは壊滅的な打撃を受けます。
終戦から3年、国家プロジェクトが進められます。
多くの市民が集うパンテオンに、国の再建と平和を願い、フランスを代表する画家たちが選ばれ、数々の壁画を製作しました。
「聖ジュヌヴィエーヴの死」ジャン・ポール・ロランスの壁画
パリを侵略の危機から救った伝説の女性の亡くなる場面です。
人物も極めて写実的です。
一方、シャヴァンヌの作品は、同じ聖ジュヌヴィエーヴの死を題材にしましたが、ロランスの壁画と全く違うものでした。
生まれてから聖なるものとなるまでを描きました。
「揺りかごの中の聖人を見守る信念、希望、慈悲」1876
「祈る幼子 聖ジュヌヴィエーヴ」1876
「 聖ジュヌヴィエーヴの幼少期」1877
クライマックス、一人の司祭が ジュヌヴィエーヴと出会い、特別な力に気づきます。
この壁画に心を奪われたのが若き青年ピカソです。
スペインからやってきた20歳のピカソは、この壁画の模写を続けます。
惹かれたのは、色使い。淡い色彩で霞がかっているように幻想的です。
当時は人物をどこまでもリアル描くのが主流のなか、表情も細かく描いていません。
その頃のピカソの作品
「海辺の母子像」1902
青の時代と呼ばれる淡い色彩、単純化された人物など シャヴァンヌの壁画に大きな影響を
受けたのがわかります。
今回は画像が多いので次回に続きます。