秋は鳥の渡りの季節。
伊良湖岬はサシバほかのタカ類が南へ渡る経路に当たっている。岬の先端部の森一帯が、渡りの拠点になっているらしい。
9月、タカたちは列島の北の各地からこの森に集結し、渡海の機会を待つ。
10月に入ると、晴れた日には、サシバの飛翔が本格化する。前日からの晴天が、進発の条件である。
日が昇り地面が暖まると、上昇気流が発生する。タカたちは気流に乗り、三々五々、旋回を繰り返しながら段々と高度を上げていく。これをタカ柱というらしい。
タカ柱の頂部に達すると、数羽単位の群れを組み、発進の機を窺いながら旋回を続ける。
リーダーの鳥が機をみて思い切り良く、鳥羽の方向に直進する飛翔コースに入り、群れが後に続く。日暮れまでに潮岬に達するだろうか?多い日には、千羽を超えるタカが発進する。
身体が小ぶりな個体は、今年春に生まれた幼鳥だろうか?渡洋の無事を祈らずにはいられない。群れの各鳥が、点になって空に溶け込むまで見守る。いつまで観ていても見飽きない。
この感動は、常の野鳥観察では感じることのできないものだ。シチュエーションがあり、ドラマチックな展開がある。旅立つタカと見送る人との束の間の接点。タカは見送られていることなど知らない。人の想いだけが発った跡に遺る・・・
長旅の末に行き着く処が何処なのか分からない。想像はつくが、詳しく知りたくはない。途中羽を休めたり宿る場所も知らない。再び戻って来ることを信じるよりほかはない。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます