道々の枝折

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NHK大河ドラマ

2021年01月05日 | 人文考察
ここ10年ほど、NHK大河ドラマの視聴率が低迷しているらしい。10%代は、たしかに低迷と言う語が相応しい。それは奇異な現象ではない。ドラマに視聴者を惹き込む力がないからだ。

それは偏にキャスティングが破綻しているからである。素人同然の演技力の乏しい役者が多数起用され、茶の間の視聴者は、彼らの下手な芝居を観させられている。下手(素人)な主役に上手(玄人)の脇役を絡ませても、佳い芝居にはならない。

新年早々、批判的なことは申し立てたくないが、NHKのドラマ制作の方針が変わったのはいつの頃からだったろう。佳いドラマをつくることよりも、視聴率で民放に引けを取らないドラマづくりを目指すようになった。演技力よりも視聴期待値の高いタレントに役を割り当てる。

ドラマづくりにおいて、制作スタッフは常に専門集団であるが、キャスト(出演者)はアマチュアが起用されることが多い。演技を舐めているのか視聴者を舐めているのか、プロデューサー・ディレクターは視聴率のために俳優の適性の有無を問わずアマチュアを使う。未熟でも演出でカバーできると考えているのだろうか?もしそうだとしたら、思い上がりも甚だしい。

彼らはアイドルであったり歌手や芸人であったり、演技以外の分野で大衆の人気の高い出演者たちである。脇役には勝れた俳優を揃えていても、演技の才の無い別の領域で人気のある人を起用すると、見るに耐えない演出になる。ベテラン俳優と絡むシーンの相手役が、素人同然というのでは、そうなることは避けられない。視聴率を獲得するための、このような姑息なキャスティングは、視聴者を馬鹿にするものである。

受信料で成り立つ公共放送が、スポンサーで成り立つ民放と同じ価値観と目線でドラマを作ってよいわけがない。玄人と素人を取り混ぜたキャスティングで、佳いドラマが作れるわけはない。

プロフェッショナルの筈の制作スタッフでも、大本を誤るときがある。演出家は大抵プロだが、脚本に未熟な新人を起用することがたまに発生する。司令塔に当たるプロデューサーの恣意的な裁量が陰にある。この10年ほど、NHK大河ドラマの制作は、ドラマを劣化させる宿痾に取りつかれているように思える。スタッフもキャストも、ドラマは専門集団で作りあげるものでなければ、観る者を惹きつけない。



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